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魔法世界のなりたち

――遥か昔、全世界を巻き込む大規模な戦争が起こり、人類は滅亡の寸前まで追い込まれた。 そんな中、ごく一部の人間が不思議な力…即ち、魔法能力を得た。その人々は戦争を終結させ、荒れた地に緑を、霞んだ空に蒼さを、濁った海に青さを、そして力無き者に魔法を与えた――

これが全ての人間に魔法を使う能力が備わっている理由として伝えられている伝説である。まあ俺はまるで信じていないが。まず、どれだけ強大な魔法使いであろうとも大気汚染やら水質汚濁をどうこうできる訳がない。ましてや他人に魔法を与えるなど馬鹿馬鹿しすぎて笑いが出るほどだ。仮にそのような魔法があったとしても誰一人として使うことは無いだろう。人間はそういう生き物なのだから。その話の真偽はともかく、現在、魔法を使えない―いや、魔法を使う素質を持たずに生まれてくる人間はこの世界にはいない。全ての人間は魔力を持って生まれてくる。そして、その時から既に行使できる魔法の種類が決まっているのだ。それらを大まかに分けると、傷や病を治す治癒魔法、物を作ったり建物を建てたりする造形魔法、動物と心を通わせたり、植物を成長させたりする自然魔法、その名の通り相手を攻撃し倒す事を目的とした攻撃魔法の四つだ。各魔法にはそれぞれ細かい分類があり、それも生まれてきたときに決定している。これはつまり生まれた時から就く職がほぼ決まっている事を示す。なぜなら大体の人間は自らの魔法を活かす職に就くためだ。もちろん他の仕事も出来るが、各分野にはそれぞれのプロフェッショナル、つまり魔法使いがいるから正直必要とされないし、無理矢理働けたとしても賃金はかなり安い。しかし、どんな条件下でもイレギュラーな者というのは存在するわけだ。この場合、魔法を使いたくない、「普通」の人間として生きたいという者が。そういう者たちのために、過去の偉人が考え出したのが「教育制度」である。魔法能力の著しい向上が見られるのは十歳から十五歳の間だそうだ。これを利用して十歳までは読み書きや計算を教え、その期間の内に魔法使いになるか、「普通」の人間になるかを選ばせる。その幼さで、自らの人生を左右する重大な選択を迫られるわけだ。この時に「普通」の人生を選んだ者は、全世界の人口・約3000万人の6%にあたる180万人なのだが、その内のほぼ全てが攻撃魔法の素質を持った人々なのだ。因みに、その素質を持って生まれてくる人間の割合は全人口の10%の300万人なので、その半分以上が魔法使いの道をはずれているのだ。その理由は至って単純、戦うのが怖いからだ。当たり前だが攻撃魔法使いは最も危険な職に就く。主だったものでは衛兵隊、警備兵等だが、これらの仕事には死がまとわりつく。凶暴なはぐれ攻撃魔法使いや、今時珍しい「武器」と呼ばれる物を扱う者、また獰猛な猛獣…などなど世にも恐ろしい奴らと対峙しなければならない。これらは極端な例ではあるが、実際に攻撃魔法使いが命を落とすという話は珍しいものでは無い。しかし、現在こんなにも攻撃魔法使いが減少しているのは他に大きな原因がある。それは随分昔から続いている、とある戦争の戦況の変化だ。その戦争が始まったのは110年ほど前、この世に唯一存在する国、リタリエ帝国が全世界に向けて戦争をふっかけた。人口約200万人の小さな国が戯言をぬかしている、と当時の人々は思ったことだろう。もちろん、戦闘を任されるのは攻撃魔法使いだ。彼らは人口の約10%しかいないのだから、リタリエ帝国の戦闘要員は約20万人しかいないことになる。普通に考えても帝国側に勝ち目は無かった―はずだった。しかし、何事も蓋を開けてみないとわからない。当時の人々も、まさかリタリエ帝国が人間の魔法を望むものに変える技術を持っているなど、想像もしなかっただろう。その恐ろしい技術と軍隊として育てられた彼らの魔法能力の高さ、団結力が重なり、帝国側の勢いは凄まじいものだったという。一回目の交戦で幾人もの死者―もちろんこちら側のだが―が出た。その後にも、何度か戦火を交えたが世界側の必死の抵抗により、現在まで硬直状態を保ってきた。しかし、それは恐らく近々終焉を迎える―世界側の敗北という終焉を。次の交戦が最後の交戦、最終戦争となるだろう。しかし、それは何があっても止めなくてはならない。もうこれ以上、この戦争で人を死なせる訳にはいかないのだ―たとは俺の全てにかえてでも。この、くだらない戦争を――

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