用意2
視点はカリク→ミナ→マルクの順で変わっていきます。
「ふー、間に合った」
汗を拭いながら息をつくミナちゃん。
「先生が少し遅れてるだけだろ。間に合ったなんていうかよ」
ミナちゃんの言葉を否定するマルク。いやいや、間に合ったって言うねんてそれが。
「ミナちゃんは、いっつもギリやなぁ」
「カリクはいっつも余裕よね」
「余裕もって行動せんと、あとあとこまるで」
「そうなんだけど」
ミナちゃんは何か言い訳を始めたけど、まぁスルーしてていいやろ。
「遅くなった」
「先生最近遅れすぎちゃいます?」
「なぜ、お前がいる」
「いややわぁ、先生。この三人組は知ってますでしょ?」
ミナとマルクの腕を取る。
「ミナちゃんおるとこに俺あり、マルクのおるとこに俺ありですよー」
『そんな覚えは無い』
二人に、同時に否定されると、困るんやけど。
「まぁいいだろう。服を渡すだけだしな」
「どんなのですか?」
ミナちゃんが食いつく。
「これだ。着替えてくると良い」
「はーい」
ミナちゃん、早すぎでっせ。もう姿が見えん。
「俺も着替えてきます」
「あ、待ってくれよ。同じ部屋やろ?」
マルクは歩幅がでかいからなぁ。
103 マルク・カリク
「どうだ?」
着替え終ったマルクが聞いてくる。
「おお、ええやん。帽子は?」
「帽子?あぁ先輩はつけてたな。俺たちは無いらしい」
「ふーん」
帽子あった、ほうがいいのに。俺の時にはあればええなぁ。
「それより、行くぞ」
「ふぇ?どこに?」
「ミナのとこ」
「ミナちゃんの部屋?」
「あぁ」
109 ミナ
コンコン
「はい?」
ミナちゃんが出てくる。お、黄色にあうなぁ。
「あ、マルクにあってるじゃん」
「ミナ、これ」
「なに?あ、ありがと。これだけ見つからなくてさ」
ポーチ?必要なん?
「見つからなかった、って前から俺に作ってくれって言ってただろ?」
「そうだっけ?」
「なんで、自分で作らないんだよ」
「私不器用だから」
不器用か?どちらかと言うと器用すぎる気がするんやけど。箸で、豆腐潰さずに掴んだり、透明なテープの端探し出したりetc。
「その髪の毛うっとうしくない?」
「うん、ちょっと旅に出たら邪魔になるかなって思ってる」
「サテラさんに切ってもろたら?」
「その手があった!」
ミナちゃんだから、早いって。もう姿が見えん。
思い立ったがなんとやらゆうたかて、早すぎや。
「さて、俺らはどうする?」
「おれは、旅の用意階に行くけど?」
「んじゃ、ついてくわ」
「勝手にしろ」
えーっと、ここを曲がって。
「サテラさん!」
「あら?どうしたの?」
「髪切ってほしいんだけど」
「髪は切らないほうがいいわよ」
「なんで?」
「髪の毛は女の子の命。(だった)あまりきらない方がいいわ」
「じゃあ、どうすればいい?」
「くくればいいんじゃない?」
「じゃあ、くくって」
「はいはい」
サテラさんは、黒のゴムときれいな色の腕輪を持ってきた。
「くくってあげるから、すわりなさい」
「はーい」
いすを持ってきて座る。くしで髪を上げられる。ゴムでくくると、
「はい、できあがり。これぐらい簡単ならあなたにも出来るでしょう?」
「うん」
「これもつけていきなさい」
「こんな、きれいなやつ」
「いいから」
腕輪をはめられる。ちょうどいい。
「ありがとうございます」
お礼はちゃんと言わないとね。
「私もどりますね」
「いってらっしゃい。明日の出立の儀は行くから」
「はい」
翌日。朝四時半
「カリク、起きろ」
「はい?どしたん。こんなはように」
「ミナの見送りしないのか?」
「へ?出立式はまだまだやで?」
「ミナは出立式嫌いだろ」
「だからって、でえへんの?」
「でないだろうな」
カリクが着替え終わるのを待つ。
「できたで」
「いくぞ」
騎士学校の校門に向かう。ミナはまだみたいだ。
俺たちは一息つく・・・間もなかった。
スタスタスタ
見知らぬ変な格好の奴が学校に近づいてくる。
チャキ
一応持ってきた、剣を抜く。見るからに怪しい。白い髪の毛とか。
(カリク、剣持ってきたか?)
(あぁ、一応)
カリクの声が低く、真面目に変わった。カリクがこうなった時は危険だ。
どんどん近づいてくる。こんな時間に来る奴がまともなわけないか。
「やあ、君達ここの生徒さん?」
隠れてまだ見えないはずなのに、声をかけてくる。
「そうだが」
声を低くして答える。なんか、見たことがある気がするんだが。
「ここに、『ミナ』っていう子いるよね?」
ミナ!?
「いない」
「うそは、つかないでほしいな」
「ミナに何のようだ」
「少し、こちらのお手伝いをして欲しくてね。正面から頼んだら、絶対断られるだろうから」
会話しているのに、歩くスピードが落ちない。さらに距離が縮まった。
カリクといっしょに隠れていた場所から、出る。
そいつが俺達の前まできて、言った。
「ま、ぼくは君達には用はない。用があるのはミナちゃんだけだ。はいらせてもらうよ」
そいつが舌なめずりする。なんだよこいつ!気色わる!ミナ以外は興味ないってか!?
「・・・・・・・いかせねぇよ」
「はい?」
俺は剣をそいつの首に寸止めする。
「ここから先は、行かせねぇよ!」