森の戦い
「っとぉ!」
『意外とすばしっこいですのねぇ』
右の転がりあいての攻撃をかわす。
さっきから、俺ばかりが狙われている気がするのだが。
『ですが、これで終わりでしてよ?』
「!」
まずい・・、囲まれた。
囲んでいるのは黒い桜の花びら。ただの花びらならどうでもいいのだが・・・。
「クソッ!」
無駄だと知りつつ攻撃を加えてみる。見事に流された。
『はぁ!』
「うわっ」
足元をすくわれ、桜の花びらに閉じ込められた。
「ユウ!」
『余所見している暇は無くてよ』
「カリク!」
カリクは持ち前の足の速さで逃げ切った。
マルクも同じく捕まっている。
「カリク!受け取れ!」
わずかな隙間からあるものを投げる。
「うわっ!あぶねぇな!」
危ないというのも剣を投げたのだから危なくて当然だろう。
「ハク!ルイ!」
『気がすすまねぇが・・』
『しゃーない!』
ルイとハクは二人でルビーに入った。
「これがなにになるんだ!?」
「精霊が・・」
『精霊が宝石に入るとそれが強まるんだ。もちろんその精霊の宝石のほうがいいがな』
ルイが説明してくれる。
「そうなのか」
カリクは剣を取り、敵と相対する。
『件を変えたところでなにか変わるとは思いませんけど?』
「おれも、そう思うぜ」
睨み付ける。絶対に目を離してはいけない相手。
『あなたは、あの二人よりも強いみたいですわね。その強さなら、女神についていくこともできたんじゃなくて?』
「いいや」
何故コイツがそれを知っているのかはわからない。だが、考えている暇など無い。
『ふふ、あなたはお強い。私が負ける可能性もありますわねぇ』
チラリとマルクたちを見る。まさか、
『あの方達の命が惜しければ仲間になっていただけませんこと?』
当たり前か。殺さずに人質のようにするなんて。
俺は、即答した。
「ならない」
『ではこの人たちを殺させてもらいますわね』
「どうぞ」
「「おいおい!!」」
スタンッ
「こんなもんにずっと捕まってるつもりも無いけどさ」
「同感」
マルクとユウは地面に降り立つ。ハクをルビーからだし、剣を投げ返す。
「使わなかった」
「見てれば分かる」
ユウは剣を構える。俺もハクを剣にし構える。
『前みたいに投げるなよ』
「わかったって」
ハクは剣にするたび注意してくる。
『うそよ、私の桜檻が破られるなんて・・・』
「現実見ろよ。おばさん」
『だれがおばさんですか!!もう、手加減はしませんわ。私の庭で己の過ちを悔いなさい!』
しゅっ
「だれが?」
べつに、今まで何もしてこなかったわけじゃない。
ライディンの門番に負けてから、ユウとマルクと鍛錬してから女神の神殿に向かったんだ。また、仲間を危険にさらさないために。まぁ、あのときはミナがキレてたからすぐに終わったけど。
『な、に?』
「おまえが、じごくで自分の過ち悔いてたら?」
そういい、ソフィーの下へ。
「術者も、ここにいるし精霊封じもはずしたから俺らの仕事終わりだよな?」
『えぇ、とりあえず精霊の住み場までいって報告しましょう』
ということで、精霊の住み場。
『と言う訳で、精霊封じは解いてありますし、モンスターもあらかた片付いてますよ』
『ありがとうございます。カリクさん、マルクさん、ユウさん』
メアルがお辞儀する。
『私の病が治るまで、ここでお休みになられてください』
『どっちみち、メアルの病が治るまでおれたち動かけねぇしな』
俺達はその言葉にうなずいた。
そして、黒いローブの人間に向き直る。
「さて、事情を話してもらおうか。ハザル」
「え?ハザルって・・」
「俺は、ハザルじゃない。兄のヤサルだ」
「兄?あいつに兄貴なんて・・・。いや、いたか。歳の離れた兄貴が昔に出ていったって言ってたっけ?」
「あぁ、おれは家をでた。だから、兄と名のるのもばかばかしいんだがな」
「なら・・・」
さらに追求しようとすると、ヤサルが立ち上がった。
「もう、話すことは無い。これ以上は話せない。おれが死んでしまうのでな」
そして、扉に向かう。誰も止めなかった。扉で出る直前に振り返った。
「あ、ハザルは元気なのか?」
重々しい沈黙が広がった。家を出たわりには家族を心配しているようだ。
「すまないが、事実を言わせて貰う」
「嘘は言われたくねぇぜ」
「ハザルは・・・・俺の友人が殺した」
驚いて目を見開いた後「そうか・・」と小さく呟いて出て行こうとした。
「ハザルを殺した友人を恨まないでくれ。あいつも、ハザルと仲が良かったから・・・。仕方が無いと片付けてはいけないんだろうけど、仕方が無かったんだ。すまない」
出て行こうとした背中にカリクが言った。聞こえてはいたのだろうが、返事も反応も無かった。
次の日。
『お待たせしました』
メアルが、顔を出してきた。その顔は健康そのものでどこか神々しかった。
「じゃあ、いくか」
『あ、待って下さい』
メアルはマルクに近づく。そして、エメラルドを渡した。
『これが、私の宝石です。一応剣にもなれるので、有効にお使いください』
「にも、ってことは他にもなれるものがあるのか?」
『えぇ、ですが役に立たないものばかりですから』
はにかむメアル。
「じゃ、いくか」
「あぁ」
「おう」
三人と、精霊四人でまた旅に出た。
『あのー。勘違いしてるかも知れませんので言っておきますが・・・』
そう切り出してきたのはメアルだ。ソフィーから今までのことを一通り聞いたらしい。
『私達の力だけでは魔王の封印はできませんよ?』
「「「わかってるよ」」」
「だから、女神の神殿にむかってるんだろ?」
唯一本当に分かっていたユウが受け答える。
それに乗るカリクとマルク。
『わかってるならいいのですが・・』
ちらりとマルクとカリクを見る。ギクリと動く肩。ルイとハクが笑う。
「おら、着いたぞ」
目の前にはいつの間にか女神の神殿が聳え立っていた。
「早いな」
「大分遅く着いてるみたいだぞ」
朝に出発したはずなのにもう夕方だ。
『そりゃあ、途中で修行!とかいって三人でバトってたからですよね?』
「返す言葉もございません」
笑いながら答える。
「でも、ここなら中に入って次の行き先聞いてから休もうぜ」
「そうだな」
女神の神殿に入っていった。
いつもどおり静かな神殿。今日は賑やかなお客様が来そうですね。おもてなしの準備でもしておきましょうか。
夕刻になり、七人の見慣れたお客様がやってきた。
「こんばんわ」
挨拶してきたのは勇者様。
「こんばんは」
挨拶を返す。まだ、こんにちはでもいい時間だ。でもこんばんわといった所、この神殿の意味が分っているとはいえますね。
『こんばんは。お久しぶりですマダム・ルーカス』
「えぇ、お久しぶりね。メアル」
メアルの病を治してきた。という事は次の行き先が知りたいのね。
「次の行き先が知りたいのですね?」
「いつも言う前に言い当てられてしまいますね」
「ふふ、私は一応あなたの行くべき道を全て知っている者ですから」
そう、いうなればゲームのストーリーを全て知っているようなもの。
しっているからこそ、そのゲームをプレイしている別の人間に教える。そんな人。それが私。
「次の行き先をお伝えする前にここでゆっくりなさっていったらいかがですか?
一応、したくは整えてありますよ?」
「え?ここに泊まるってことですか?」
「えぇ、地面に寝転がるような形なのですが・・・。外よりは安全です」
「どうする?」
「安全なほうがいいだろ」
「なら、お願いします」
「えぇ、ではまっていてください。ゴザを持ってきます。こんなものですが無いよりはマシでしょう」
私は一旦下がる。奥のほうに、しまっていたはずだ。
ゴザをもってもとの場所に戻る。
「これを敷いて寝てください」
一人一枚渡す。
「あの、もう聞いてもいいですか?次の行き先を」
「次の行き先は・・・」
私は淡々と口にする。女神様に言われたとおりに。
「次の行き先はスカイタウンです」
私に人の心などない。




