森の秘密
屋敷に入って一番初めに目についたのは、左右から伸びる階段。
そして、その階段には、いくつもの陰が。
「へぇ、ここには敵が出るんだ」
「ふぅ、これだけか?」
一息ついてあたりを見回す。
「あぁ、これだけみたいだな」
「そうか」
カリクはしゃがみこんだ。
「これに・・」
先ほど見つけた黒い魔法陣に線を一本足す。
「じゃ、モンスターの相手をよろしく」
カリクは呪文を唱え始める。
メアルいわく、フェアリー・マザーから流れる力がなければ精霊は入れるらしいが、術者を潰さない限りは誰もが入れるようにはならないらしい。
そのため、俺達はフェアリー・マザーの力の流れを止めるのと、術者をふんじばる二手に別れたのだ。
「了解」
もう一度辺りをみまわす。特に何かが居るわけでもなし。フェアリー・マザーが何かを生み出そうとしているわけでもなし。安全だ。
ほっとして、座り込む。ずっと体術を使って、剣を使っての繰り返しだったからかなり疲れている。
数分後。異変は起きた。
ゾクッ
森に入ったときにした、悪寒がまたよみがえる。
ぁ・・・
驚いてあたりを見回す。何も居ない。もちろん誰も居ない。
カリクが目でどうした?と聞いてくる。
「いや、なんでも、ない・・」
ごまかす。気のせいか・・・?
あはは。おにぃちゃん。あそぼぅ?
ゾクゾクッ
「あぁ、もう!何なんだよこれ!」
足元にまとわりつく黒い何かを振り払う。
襲い掛かってきた影は以外にもあっさり切られた。だが、
足にまとわりついたり、引っ付きあって再生したりと、非常にうっとおしい。
「こいつら何とかできないのかよ」
「無理だよ。そいつらは俺の最高傑作だし」
生意気そうな、だが何か焦っているような声が頭上から聞こえた。
頭をあげ声をした方を見やる。
「お前は?」
「俺は・・・。黒の魔術師。それよりも!」
今にもユウに襲い掛かりそうだった影を下がらせ、ユウに詰め寄る。
「俺の魔法陣を解いているのはお前の仲間か!?」
おにぃちゃぁん。ねぇーあそぼう?
ずっと、耳から離れない声。返事をしていいのかしてはいけないのか。
とても不自然で無邪気のような声。
まず、相手を確かめるところから始めないと。何か分からなければどうすることもできない。声は後ろからしてる。絶対に後ろに居るはずなんだ。
だが、振り返ろうとすると。
あぁーだめだよ~?振り返ったらダメー。もしも振り返って・・・
声は一度途切れた。今度は女の人の声で、
お仲間が死んでも知りませんわよ?
「!!」
カリクの首には黒いもやが取りついていた。
ちゅういしても無駄だよ?私はおにぃちゃんにしか見えてないもん。
でも、私の声はきこえてるんだー。あんしんあんしん。
なにが、安心安心だ。こえは、無邪気に聞こえて、妹を思い出させた。
「カリク。呪文を止めてくれ」
呪文が進むごとに声ははっきりしていく。このままでは危ない。
だけども、神様は俺の味方ではないらしい。
カリクは眉をひそめただけだった。
あははー。無視されちゃったぁ。あははー
クソむかつく。思いっきり殴りかかってやりたいが、カリクを危険に晒すことになる。
この状況だけで、相手を判断するなら。
まず、人質を取る行為。これは自分が弱いため、負ける可能性があるから。
そして、声だけしか出していない。これは体が無いからと考えることが出来る。
ねぇー。鬼ごっこしよう?封印が解けたらだけどー。
まぁ、ごっこはいらないかもだけどねー。
封印がとけたら、やはり声だけしか出していないのは体は封印されているということだろう。
ごっこじゃない鬼ごっこ。つかまったら死ねと?
うんうん。力も戻ってきたし。もう大丈夫かなぁ?
俺はその言葉を無視し、カリクに近づき小声で言う。
「呪文終わったらダッシュでここから逃げるぞ」
カリクは疑問符を出しながらもうなずいてくれた。
そして、あと少しで呪文が終わろうとしたその時。
「カリクー!呪文止めろ!!」
ユウが叫びながらこちらへ向かってくる。それよりも先にある人物が来ていた。
「その呪文を止めろ」
だが、一足遅かった。
「すまん。終わった」
「「!!」」
ユウは、カリクの手を引いて。その人物は俺の手を引いて逃げた。
「な、なんだよ」
「五月蝿い!走れ!舌噛むぞ!」
カリクだけが事情を飲めていないようだ。おれはすでにその人物を俺がひっぱって走っていた。
「なにが起きてるのかよくわからねぇけど、ここから逃げた方がいいんだな?」
「あぁ」
俺の横を突風が吹きぬけた。
「早くしろよー!」
「わかったよ!」
俺も全力疾走。カリクの姿をかろうじて見える速度。俺だけならもう少し早く走れるんだが・・。
「すまないな。マルク」
「気にすんな。だが、事情は話してもらうぞ」
俺は引っ張っている人物を睨みつける。黒いローブで表情は見えないが、あいつなのは間違いない。
俺達は全力疾走で森を抜けた。が、
おにごっこぉ。
ゾクッ
「まずい!」
黒いローブの人物は俺の手を振り払い呪文を唱えた。
追いかけてきていた、黒いもやを閉じ込める。
あちゃー。つかまっちゃったー。
黒いもやは消えた。
「本体は何処だ?」
急いで周りを見渡す。
『ふふ、ここよ。ここ』
森の中から声がする。森の方を見やると・・・。
『気づいてもらえてうれしいわ』
『マルクさん!逃げて!』
ソフィーに言われる前に伏せた。
すると、頭の上を風が通り抜けた。
『あら、反射神経がいいのねー』
その人物は笑った。とてもかわいらしく。ちっとも可愛くみえないが。
『自己紹介が必要かしら?』
「必要ない」
黒いローブの人物が即答する。
「それに、お前に名など無い」
『あなたには聞いていませんわよ?』
改めて、相手を見る。
見た目二十代の女性だ。黒髪で人ならモテるだろう。
『さて、まぁ自己紹介も必要ないといわれましたし。みなさんここで死んでいただきますわ』
前言撤回。ぜったいモテない。




