最後の試練
「そこに、穴あるからな気をつけや」
マルクを背負っているにもかかわらず先頭に立っているのはカリク。
「おっと」
ユウは穴に足を滑らしかけた。何とか重心を右にし落ちないようにする。
「穴がおおいわね」
さっきこけたり穴に落ちたりしていたミナはゆうゆうと穴を避ける。
「古い建物やからな」
「はぁ、また落ちそうで怖いなぁあ!」
「おっと」
カリクが立ち止まる。
「ちょっと、いきなり止まらないでよー」
「いや、ちゃうねん。マルクがなんかにひっかかっとって・・」
「「?」」
ユウとミナはマルクの周りを見る。マルクが動くたびに分かりにくいが見えない壁のようなものが虹色に暗く光る。
「あー、精霊制限きた」
「じゃあ、もうすぐそこってことか」
「でも、マルク置いていくのはちょっとね」
「かといって誰かが残るわけのもいかねぇだろ」
「なんで?」
「こんなに厳重に制限してんだから精霊居る奴らは全員必要だろ」
「ごもっともな意見やな」
ミナたちが悩んでいると、ソフィーがサファイアから出てきた。
『私にはこれぐらいしかできないですけど・・』
そういって、ソフィーが指をくるくるまわすとマルクは光り輝く縄に縛られた。
「ソフィー!?」
『勘違いしないでください。これは、守護の縄。これにまかれている人はまかれている人が敵とみなしたものは触れないようにするためのものです』
『縛ったのは、ここから動かれると困るから。やな』
いつの間にかハクが出てきていた。
「なら、いくか」
ユウは進む。カリクがその後ろを歩く。ミナは紙に何か書いてマルクのてに握らせるとその後を追った。
「扉だ」
扉には何か書いてあったが私はそんなに気にしていなかった。
「最後、ね」
「ボスみたいなんがおるんかな?レッドラビリンスみたいなさ」
カリクの声がこころなし弾む。何楽しそうにしてんの。
「なんで、そんな楽しそうな声を出すのよ」
私が呆れて言う。
「え?そう?」
本人には自覚が無いようだ。
「はぁ」
「バカだな」
「ユウ。聞こえてるで」
扉を開ける。今までのように広間だ。
「さて、何が居る?」
私は目を凝らす。
カササッ
何かが動いた音。
「?」
「なんだ?」
カササッ
また。
「何も見えねぇ」
夜目が利くというカリクも何も見えていないようだ。
「音だけが頼りなの?」
カササッ
ガササッ
タタタッ
音がいくつも重なり始める。時には
あはは、
かーごーめ、かごめー
アハハッ
などと、気味の悪い声まで聞こえてくる。
「おとも、頼りにならない」
「くっ」
ユウがやられる。
「ユウ!?」
ユウに駆け寄ろうとした。のに、
「ユウ?どこ?」
周りには誰もいない。カリクも、ソフィーも、ユウも。
音がしなくなった。真の闇と言えるこの空間で静かなのは何よりも怖い。
気味の悪いこえでも、この空間ならしているほうがマシだ。
目を凝らす。さっきよりもさらに暗闇は濃くなり、本当に何も見えない。
(ふぅ、落ち着け。見えないからなんだ。音がしないからなんだ。音がしないなら何も動いていない良い証拠じゃない。落ち着け)
周りの状況を確認するために手を伸ばす。空を切るばかり。何も無い。
「ソフィー?」
名前をよぶが返事は聞こえない。サファイアにいてもよべば返事をしたソフィーにしては珍しい。
いや、返事ができない状況にあるか、私が聞こえない状況にいるか。
(いちかばちか!)
「くっ」
腕を切られる。血が噴出す。
「ユウ。大丈夫か?」
近くにカリクが走りよる。
「あぁ、なんとか。別に酷い傷じゃない」
『あ!ミナさん!!』
ソフィーが叫ぶ。
「どうした!?」
『ミナさんが・・・』
「!!」
ミナは黒いぶよぶよしたものに覆われていた。
「ミナ!!」
俺が走りより触れようとすると、
「いてっ」
静電気のように(実際はそれほど優しくはない)なって、触れなかった。
{心配せんでよい}
「だれだ!?」
{わしはわしじゃ。名前など当の昔にわすれてしもうた}
チャキ
俺とカリクは同時に剣を構える。
{おぬしらは、女神のお供と勇者じゃろう?一人足らんが・・}
「そうだけど?」
「それが何か関係あるのか?」
なんだ、コイツ。
{ならば、よい。女神を守る準備も整ったわけじゃし}
暗闇の向こうで何かでかいものが動いた気がした。
いや、気がしたわけじゃなかった。動いていた。でかいものが。俺らに襲い掛かろうとしている。
つまり、敵。
{お前さんらを試させて貰う!}
「はぁ」
もう、体力が尽きそう。私の推理は絶対あってる。でも、どうすれば・・・
「てやぁ!!」
スカッ
「うおっとぉ!」
一回転!いや、そんな事してる場合じゃないんだって。
{あんまり暴れないでくれるかしら?}
「だれ!?」
あたりを見回すが誰も居ない。
{私は私。名前など当の昔に捨てたわ}
「つまり、名無しってことね」
{そんな事はどうでもいいのよ。とりあえず暴れないでくれるかしら。押さえ込むのが大変なの}
「押さえ込む?」
{外ではあなたのお供が試されているはず。そのとばっちりにあわせないためよ}
「試すってどういうこと!?」
{そのままの意味。これより後の神聖な儀式に参加する資格があるかどうか}
「清めの儀なら、カリクは一個前のときに清めの場に一緒に来てるわよ」
{ちがうわ。そのもう一つ向こう。あなたの最終目標}
「え、まさか。ここで、カリクたちが負ければカリクたちはそれについてこないの?」
{ついていけないの。審判は私だからね}
「なら、なおさら出る!!」
さっき、押さえ込むのが大変だって、言ってたからもっと暴れれば・・・
{やめなさい!!!}
「やめない!!!」
{どうした、その程度か!}
「くっ」
「クソッ」
カリクもユウも肩で息をしている。剣は震えている。
{こちらからいくぞ!}
「!」
避けるばかりで反撃をしない。右によけ、左に避け。後ろに飛ぶ。
{避けてばかりでは勝てないぞ!}
「なぁ、さっきからおもってたんだけどさぁ」
ユウが口を開く。
「お前に勝つ必要が俺達の何処にあるわけ?」
{女神についてゆきたいのならば、わしに勝つしか道は無い。全てを知らずに進むというのなら勝たなくても良かろう}
「すべてを?」
顔をしかめる。
(何の話だ?)
「お前に勝って、えるものが全てなら俺は関係ないと思うが?」
カリクも口を開く。
{全てを知られているのは、女神様のみ。人間の言い伝えなどアテにできるわけが無かろう}
「言い伝えなんて、何処の誰が言ったんだよ。まぁ、それだけなら俺は関係ないぜ」
{ふん、諦めるのか。女神様においていかれるが良かろう}
「置いていかれる?んなことあるわけねぇだろ?」
{わしに勝たぬ限り資格は無い}
「はぁ?わけわかんねぇぞテメェ」
カリクは段々イラついてきているようだ。口がどんどん悪くなっていく。
だが、戦況が変わるはずも無い。数分後に
{貴様ら、本当に勇者とお供か?弱すぎるぞ}
カリクとユウは床に突っ伏していた。
「う、くっ」
「・・・」
べチャッ
ユウとカリクの後ろで何かの音がした。
何事かと何とか上半身を起こし後ろをみると。
「ふぅ、助っ人参上!!!」
サファイアをはめ込んだ剣を右手に持つ、ポニーテールの金髪少女。
「「ミナ!」」




