クモ、タラナ
「にしても、くらいなぁ。前が見えないわ」
前方を睨みつけるミナ。視線の先は真っ暗。
「ミナちゃん足元気ぃつけや」
そう声をかけてくるのはカリク。何故か夜目がきくらしい。
「分かってるって。おっと」
「言われた傍からこけるなよ」
「ごめん、ごめん。ありがと、マルク」
こけかけたミナの体を支えたのはマルク。ミナがマルクとカリクに挟まれる形で進んでいる。
「この壁古いなぁ。今にも崩れそう」
「この神殿自体が古いんだろ」
暫く進むと、ミナがいきなり立ち止まった。
「いてっ」
案の定カリクがミナにぶつかる。
「どうした?いくぞ」
ミナは首を横に振る。
「ダメ。その先にはあいつが居る」
「ギランか?」
「違う。もっと恐ろしいあいつが」
ミナは小刻みに震える。
「分かる。絶対あいつが大量にいる!!」
お化けも怖がらず、ハナマに怒られるのも恐れなかったミナがこんなに怖がっているのだ。
二人は気を引き締めた。
「進むしか無いんだろ。行くぞ」
「何があるか分からんけど、絶対に守るから。な?」
ミナは小さくうなずく。少しずつ、少しずつ進む。最初の扉が見えてきた。
「あけるぞ」
「ダメ!それをあけたらあいつが・・」
「あけないと進めないって」
ミナの制止も聞かずマルクは扉を開ける。すると隙間から、
ワサワサワサワサ
小さいクモが大量に出てきた。
「うわっ、何だこれ!?邪魔だ」
「うっとおしいな」
マルクとカリクは冷静にクモを払う。クモたちはその扉から逃げるようにすぐに去って行った。
「なんだったんだ?」
「さぁ」
肩をすくめ返事をするカリク。
「この向こうに何があるのか。行くぞミナ」
返事は返ってこない。
「ミナ?」
カリクとマルクは振り返る。ミナは倒れていた。
「ミナ!!」
「大丈夫か!?」
駆け寄り揺り起こす。ミナは目を覚ますと、
「いやぁ!!」
大声で叫び、そこに頭を抱えてうずくまった。
「おい!どうした?」
ミナは何かぶつぶつ呟いている。耳を傾けて聞いてみると。
「クモいや、クモいや、クモいや、クモいや、クモいや、クモいや、クモいや、いやいやいやいや」
これを呪文のように繰り返していた。
「あの~、ミナさん?」
マルクは恐る恐る声をかける。
「・・・・・・・」
呪文をまだ唱え続けている。
「おい」
「・・・・ぃ・・・っ・?」
「え?」
「クモ、いない?」
震えた声で聞いてくるミナ。涙目になっている。頭に置いた手は離していない。怯えた子供のようだった。(実際にそうだが)
「あ、あぁ。向こうに行ったけど・・・」
その言葉を聴いた途端、ミナは立ち上がり目にたまった涙を拭いた。
「そう、なら行きましょうか」
完全にいつもの調子だ。
マルクとカリクは顔を見合わせ、笑った。
「な、なによ!」
マルクが答える。
「いや、ククッお前が、大のクモ嫌いとは思ってなかったから」
「もう!笑うな!!ここに置いてく・・・」
ミナの言葉が途中で切れる。
「どうしたん?」
笑いが収まってきたカリクが聞く。顔はまだニヤついている。
「この向こうに、あいつがいる」
扉を指差し言った。
「ギランか?」
カリクは聞き返す。ミナは横に首を振る。
「違う。もっと恐ろしいもの」
「なら、クモちゃうん?」
「違う。もっと恐ろしい。思い出すだけで吐き気がする」
気分が悪そうにミナは口に手を当てる。
「もう、出会わない。そう思ってたのに・・・。なんでフェアルの神殿のアイツがここにいるのよ」
また、震えだすミナ。
「とりあえず。行くで」
コクリと小さくうなずくミナ。扉を開けた先には、
「うわっ。キモッ!」
無数のクモと、数十匹の
フシュー
タラナがいた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
ミナはそこで気絶。後ろにいたマルクに受け止められる。
「うわっ、何だよこれ」
マルクも足を踏み入れ、顔をしかめる。
「めんどくさいなぁ」
カリクは、シュッと剣を一振りする。さっきまで持っていなかった淡く黄色に光っている剣を手にしている。
「たしかにな」
マルクも剣を構える。カリクがミナをちらりと見て、
「蹴散らしてからおこそか」
「そうだな」
マルクは同意し、走り出した。
「おい、起きろ」
聞きなれた声に目を覚ます。目の前には
「ひゃっ!!イタッ」
マルクの顔が。驚いた拍子に壁に頭をぶつける。いった~。
「そんなに驚かなくてもいいだろ」
「起きた時に人の顔が目の前にあったら誰でも驚くわよ」
頭をさする。古くても壁は硬い。
「マルクー。こっちは何も無かったでー」
カリクが右側にある通路から顔をのぞかせている。
「そうか、左もハズレって書いてあったしな。真っ直ぐ進めって事か」
「何にもなかったけど、これあった」
カリクが差し出しているのは懐中電灯。ちょうど三つある。
「ちゃんと点くで」
カチッ
「こっち向けてつけないでよ!」
まぶしい。さっきまで暗かったから余計にだ。
「あ、ごめん」
懐中電灯を消す。今までより余計にくらい。
「おい。それ以外点かねぇじゃねぇか」
「え?まじで?さっき調べた時にはついたんやけど?」
?何が起こってるの?くらさに目が慣れていない私は二人が何をしているかなんてわからない。
「あ、ほんまや。点かんか。ま、これあるし大丈・・・夫やないな」
「それも点かねぇのか。つかえねぇなぁ」
「さっきので切れたみたいやな」
やっと目が慣れてきた。くらい中にマルクとカリクと思しき影が。
「!二人ともっ、伏せて!」
「「え?」」
聞き返しつつも二人とも同時に素早くしゃがんだ。
シュッ
さっきまで二人の頭があった場所を何かが通る。音で分かる。刃物だ。
「誰!?」
目が暗闇に慣れ、マルクたちを切ろうとした人物がはっきりと見える。
「誰って・・」
「あ・・・・」
私の顔は驚愕に染まった。




