ライディンの神殿
本当のことを包み隠さず、すべて話した。
といっても、隠すようなことはないし、それほど長い話でもない。
「って、いうことなの」
音子族は黙って聞いていた。そして、一人が口を開く。
〔時の狭間って、あの石と同じじゃないか〕
「え?」
〔じいさん。あの石もってたよな〕
〔あの石か?ちゃんと持っておるぞ〕
爺さんとよばれた、音子族はふところに手をいれ、石を取り出す。
〔これ、役にたたないかもだけど〕
音子族の男の子は石をミナに差し出す。
「いや、これはあなたが持つべきよ」
ミナはにっこり笑い、
「私の力になりたいのなら」
「こっちでいいの?」
音子族の男の子(名前はロキというらしい)にミナが聞く。
カザルムでもしていたが、亜人を道案内に使っていた。
〔うん〕
ロキは答える。そして、前方を指差す。
〔あの砂の中〕
サラリと当たり前のように言う。
「そう。って、は?」
「「砂の中?」」
カリクとマルクが声をそろえて聞き返す。
〔うん。もとは海の底に沈んでて、いまは砂海になっちゃってるから。でも、大丈夫。いま俺が石持ってるから〕
誇らしげに手の中の石を見せる。
「つめたっ」
気がつくとミナの足元は海になっていた。
〔もうすぐそこだよ。もう少し先をもぐるんだ〕
少し進むと、石碑があった。
「えっと、『この先の水の中。神の聖域、近づくべからず』だってさ」
「だってさっていわれてもなぁ」
「ミナちゃんがこれ作った張本人やねんから近づかなあかんやろ」
「だよね」
ククッと笑ってからロキに向き直る。
「ロキは?ついてくる?」
ロキは、悩んだ末に、首を横に振る。
〔ううん。俺が行って何かになると思わないし。でも、これはもっていったほうがいいよ〕
石を差し出す。
「・・・話。聞いてた?私がこれをもっていったら・・」
〔きいてた。でも神殿の入り口にはこの石をはめ込む所があるんだ。はめなくても入れるけど、はめた方がいいのは確実〕
ミナはためらいながら、その石を受け取る。
「ありがとう」
そして振り返り、カリクたちに声をかける。
「いくよ」
「おうっ」
「あいよ」
ミナを先頭に海へともぐっていった。
ミナはスイスイと深く深くもぐっていく。
だが、
(カリクたちが泳ぐの得意なんて聞いたこと無いな)
後ろを振り返る。少し後ろにマルクが居た。まぁそれはいい。ミナは泳ぐのが得意で先先もぐってきたからだ。ならば、カリクはどうか?
(おい!!)
もぐっては上に戻り。もぐっては上に戻りを繰り返していた。
(はぁ)
マルクについてきてとジェスチャーで伝えて、カリクの元へ。
「ぷはっ。はぁはぁ」
「あ、ミナ・・・ちゃん・・」
カリクはおぼれてるとも言えそうだ。
「泳げないなら言いなさい。ほら、大きく息すって、止める!」
言われたとおり息をすって止めた。するとミナはカリクの手を取ってから潜った。
「!!」
カリクがもがく。
(ちょっ、あばれんな!)
ミナが思いっきりカリクの背を叩く。
「うぐっ」
(あばれないで!!)
カリクを睨みつける。途端におとなしくなる。マルクは大分先で手を振っている。
すぐに追いつくと、マルクは少し先を指差す。
(あ!神殿)
カリクを引っ張りマルクに続いて神殿内に入る。
中に入ると石をはめ込むところがあった。ポーチから石を取り出し、はめ込む。
ブゥン
低い音がして、入り口側から強い波が一気に押し寄せてきた。
(うわっ)
その強さに耐え切れず、カリクの手を離し、神殿の奥に吹っ飛ばされた。
「カリクっ!」
(ってあれ?)
吹っ飛ばされたといっても、ギリギリ入り口からの光が入ってくるところだし、カリクがすぐ傍で伸びていた。
「カリク!起きろ!」
ぺしぺしと頬を叩く。
「う、うぅ。水の悪魔ぁ」
うなされながら意味不明なことを呟くカリク。
「起きろよっ」
げしっ
「ぐはっ。は!ミナちゃん!?てか、ここどこ?」
「神殿の中」
ミナは入り口へと向かっていく。
「マルク!」
マルクは中へ入れていなかった。
「うんしょっと!!」
マルクの腕を取って、中に引きずり込む。
「ゲホッ、ゴホッ、はぁはぁ。ありがと。ミナ」
大きく咳き込んでから礼を言うマルク。
「なぁ、ミナちゃん。おれ、嫌な予感がすんねやけど」
「あ、カリクも?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「奥にはしれっ!!」
迷わず奥に走り出す。
ドカーン
入り口が崩れ落ちた。ついでについさっきまで居た所まで。
「走ってなかったら今頃下敷きになってしんどったな」
「そうね。ま、これからもこんな事はたくさんあるでしょうけど。岩が猛スピードで転がってきたり」
「猛スピード!?」
マルクが叫ぶ。
「屋根が壊れて水で神殿が満たされたり」
「水!?」
カリクも叫ぶ。
「でも進むしか無いのよ。どっちみち入り口は塞がれてるしね」
「「はぁ」」
二人で大きなため息を着いてから元気に奥へと進んでいくミナの後ろをとぼとぼと歩いていった。
この後に、ミナも悲劇にあう。カリクの水と同じくらいの。




