ライディン砂漠
タッタッタッタッタ
ミナは、宿の中庭を突っ切る。エントランスを通り、外に出た。
今は夜明け前。マルクと分かれてから一、二時間しかたっていない。もちろんミナの後ろにはマルクもカリクもいない。
タッタッタッタッタッタ
「え・・・・」
ミナは宿の入り口前で立ち止まる。
「外に出るのがはやすぎんだよ。こんにゃろう」
あくびして目に涙を溜めつつマルクが言った。
「ミナちゃんの考えることなんて丸分かりやって」
カリクが左手を腰に当て、ミナに向かって言う。
「なんでよ!なんでついてくるの?私はもうあなた達を巻き込みたくない。あなた達を危険な目に合わせるわけには行かないの!カリクだって私と一緒にいるよりユウと一緒にいた方が危険が少ないのよ!?なんで?」
「「危険でもいい」」
声をそろえて言われた。
「俺は、勇者の助けをするためにハクをつれてるわけじゃない。女神の助けをするためだ。危険でも、ミナと一緒にいなければいけないし、俺がミナと一緒にいたいんだ」
「俺も。ミナと一緒にいたいし、お前を助けたいんだ」
結局マルク達はついてくることになった。
「前も言ったとおり、足手まといはいらないからね!」
強く言ってから、早足で出て行った。マルクとカリクは顔を見合わせて苦笑し、その後を追った。
「ここが、ライディン・・・」
ミナは呟くように言った。
『変わり果てていますね』
『俺がおったときはもっと緑豊かな土地やったのになぁ』
「今の状態からは想像もできへんな」
「なんの話してんだ?」
マルクが不思議そうに聞く。
(あ、マルクは聞こえてないんやな)
「いや、なんでもない。てか、ミナちゃんさっきから黙ってるけど、どうしたん?」
カリクは、ミナに話を向ける。ミナは耳に手をあて何かを必死に聞こうとしていた。
「え?あ、あぁ」
手に当てていた耳を下ろし、後ろに隠す。
「特に何も無いけど、強いて言うなら生き物の気配が無いのよね」
「『『え!?」』』
「は?」
「探索しないと分からないけど・・・・ここ、敵も居なければ味方もいないわ」
「生き物の気配がせんって、そしたら亜人もおらんのか?」
「そうなるわね。自力で見つけろってか」
ミナは大きくため息をつく。
「探索しないとどうしようもねぇだろ。いくぞ」
マルクが先頭に立って歩き出す。
「あ、まってくれよ」
カリクが後を追う。その後をミナがついていく。
リィン
(!?)
ミナが左を向く。視線の先には小さい廃墟。
リィン
小さいけれど、はっきり聞こえるナゾの音。誰かを呼んでいるような、それでいて辛そうな音。
「でも、ほんとに広いな。どこから手をつけるか・・・・。ミナどうする?」
マルクはミナに意見を聞こうと聞いた。のだが、返事が返ってこない。
「ミナ?」
「ミナちゃん?」
後ろを見るが、
ヒューーー
風が吹くだけだった。
「「いねぇ!!!」」
二人同時に叫ぶ。
「あいつっ!どこ行きやがった!!」
周りを見渡すが、ミナらしき影は無い。
『ミナさんなら、向こうの小さい廃墟にフラフラ歩いてったで』
カリクが、ハクをにらみつける。
「なんでもっと早くいわねぇんだよ!!」
ハクの首をしめた。
『く、苦しいって・・・』
ぺちぺちとカリクの手を叩くハク。
「マルク!ミナちゃんの居場所が分かった。いくで」
「え?あ、あれか」
マルクはカザルム山の時に使ったものと勘違いしているが、カリクは気にしている余裕は無かった。
(嫌な予感しかせぇへん)
カリクは内心舌打ちをしながら、来た道を走り出す。
『あ!そういえば、あの廃墟は・・・・』
「なんだよ」
『あそこには≪悪魔の鐘≫がある!!まずい!!いそぐで!!』
「あぁ」
カリクは走る速度を上げる。カリクは騎士学校で一番足が早い。マルクは見失わないようにするのが精一杯だった。
「なんでこんなに差があるんだよ・・・」
マルクはボソッと呟く。マルクは騎士学校で三番目に足が速い。だが、カリクの方が圧倒的に早かった。
「おーい置いてくぞ!」
カリクが怒鳴る。そのいつもと違う真剣な声を聞いてマルクはミナが危険な状況に晒されていると感じた。
「わかった!先行っててくれ!」
マルクも怒鳴り返す。
「了解!」
カリクはあっという間にマルクの視界から消え去った。
「あいつ、あんなに早かったか?」
マルクが驚くのも無理は無い。カリクはハクに手伝ってもらい(無理矢理?)スピードを上げていた。
『やっと見えてきた!あれや!』
ハクはかなり辛そうな顔をしている。
「おい、だいじょうぶかよ」
『大丈夫やない。休む』
そういってハクは琥珀に戻った。
「あれか・・・」
廃墟を見つめ、呟く。
リィン!
「!?」
強く、大きく、ナゾの音が聞こえてきた。
(もしかして、これを聞いてたのか?)
ミナが耳に手を当てていたのを思い出し、そう考える。
『この音!間違いない!≪悪魔の鐘≫の音や!』
琥珀の中から、ハクが叫ぶ。
「ふぅん」
まだなお続くナゾの音。カリクは確信していた。ミナはこの音につられ、この廃墟に入っていったんだと。
ミナはというと・・
『ミナさん!カリクさんたちとはぐれてますよ!』
もう、何度注意しただろうか。
少し時間は戻り、ミナがカリクたちとはぐれて間もない頃。
「・・・・」
ミナは答えない。崩れている、瓦礫を飛び越え、奥へと進む。
リィン
「『!?」』
悪魔の鐘の音がいっそう強くなる。
《まずい!このままじゃ!》
『ミナさん!それ以上行ってはダメです!!』
ソフィーは力の限り叫ぶ。
「・・・・・分かってる」
やっとのことで帰ってきた返事はこの一言だけ。
『分かっているなら何故進むのですか?』
ソフィーは問いかける。
「音」
『音?』
ミナはうなずく。
「この音に近づいてはダメ。それは分かってる。けど」
『分かってるならいっちゃだめです!!』
「音が、悲しそうにしてるの」
『どういう意味ですか?』
「きっと、この音をならしている人はとても悲しい目に合っているんだと思う。それが音に伝わってる」
ミナはそれ以降黙ってしまい、奥へと突き進んだ。
そしてミナが見た光景は・・・・
「うそでしょ」
カリクのキャラ(性格)が変わった気がします。




