プロローグ
「なぁ、向こうの神殿いかない?」
私が、ユウに聞く。
「神殿行くには大人がいないとだめだろ?ミナ」
「えー、お母さんいたら自由に行動できないでしょ。だから、私とユウのふたりだけ」
「好奇心旺盛なのは、たまに傷だな」
私達二人はお母さんの鳥を使って神殿に向かった。いま思えば、これは敵の仕掛けた罠だったのかも知れない。神殿に行くのを止めていたら。その思いは今になっても消えはしない。いまの私達が知る由も無いのだが。
「わー、気持ちいー」
鳥の背に乗ってかぜを体で受け止める。
「そういえばミナ」
「なに?」
「大地ってしってるか?」
「あぁ、この雲海の向こうにあるっていう?」
下を指差しながら言う。
「うん、俺行ってみたいんだよな」
いつになく少しだけ目を輝かせていた。
「ふーん」
ユウの願いはこの後直ぐにかなえられることになる。危険な形で。
ビュー
「きゃあ!」
いきなり、凄い突風が吹きつけてきた。鳥が揺らぐ。
「あぶないぃぃ!?」
ユウが手を伸ばす。けれど、私とユウは別々に鳥から落ちた。
「ユウ!」
私は、叫んだ。十三歳の私の手が届くはずも無いのに手を伸ばす。だけど、ユウは笑っただけだった。
(どうしてこんな時にわらえるの?)
私は不思議だった。ユウは、最後に何かつぶやいたけど聞こえなかった。
ユウは、私を助けには来ないだろう。そういう人だというのを私は知っている。だから、
私が助けに行く。ユウを。そして私の持ってるフルートで街に帰るの!
私の最初の目的。だけど、まだまだ先で発覚する事実で目的は変わる。だけど本当にまだまだ先の話。
俺は笑った。ミナを安心させるために。うまく笑えただろうか。なきそうになってるようにしか思えない。神殿に行くの、止めさせとけばよかったな。
「カルミナさま、どうかミナを・・・」
声が出なくなってしまった。ミナが見えなくなって怖くなってしまったのだろうか。
我ながら情けない。どうせ落ちていくんだ、風に身を任せよう。
「ミナを助けに行こう。こんな時ぐらい、な」
おれの目的はコレだった。だが、大地での出会いでおれの目的は変わる。まだ先の話だが。