FILE1【メッセージはたった3通】#7
「ただいま。山崎さん」
いつものように言っってみる。
「おかえり〜」と元気のないような間延びした不思議な返事は返ってこなかった。
「裕麻に言われとるんやな……」
昨日、俺と彼女が出て行ったときの空気が変わらないままあるような気がした。
「まあ、そうだけど――俺として、昨日の夜と変わった様子はないんだけど、この状態はどう思う?」
黒田に意見を求める。とりあえず、他にこの場所に人はいないから必然的ではあるけれど。
「ダイニングメッセージとかがあるか調べたほうがよさそうやな」
言って、黒田はマイ手袋をはめて部屋に上がった。
俺がいるからキレイに掃除された部屋の雑誌の間に何かが挟まっていないかと黒田は調べていく。
俺は昨夜、締め切っていた部屋の異常を見て回る。そして、見つけてしまった。
ふと、彼女の寝室のカーテンがヒラッと靡いた。風が吹いている。
多分、彼女が戻ってきていちいち窓を開けるはずがない。とすると、侵入者の可能性が大きい。
俺は窓に近寄る。
「誰もいませんように……」
心を引き締めて、窓の前に立つと一人の少年が――いた。
「……あの人のオトコぉ?!」
声を上げたのは少年のほうだった。それに叫んでいる。それもまた、その少年は黒田の部屋をブッ叩いたときに出てきた、あの少年。
少年の叫び声を聞いて、黒田が寝室に入ってきた。
「なんや?――犯人か、コイツ?」
黒田は俺を見て、少年を指差す。
「わからないけど……ここに、いた」
自分の意識も飛んだまま、俺は言う。
「お前は誰なんや?」
黒田はまじまじと少年を見て言う。
「――俺は、修二。佐藤修二、高校二年生、十七歳!!」
自信に満ち溢れた声。だが、佐藤修二にとってそれが一番びっくりして怯えている様子だと聞かされたのは後のことだが。世で言う、「変人」の種類だからだろうと本人考えている、らしい。
「いやっ、そういうことを聞いてるんじゃ、ないんや。しゃあないな。お前はここで何してるんや?」