FILE1【メッセージはたった3通】#3
――山崎裕麻 死す
それは事後、あるいは予告のどちらとも捉えられる文だった。そして俺はそれを予告として受けた。
「くそっ! さっきのは?!」
俺は通りに出るため走り出した。
(山崎さん、昨日から何かが違った! もしかして、この変なことのせいなのか?)
思い当たる節はただ一つ。昨夜の彼女の怯えたような表情だけ。
普段、彼女は俺に有無を言わさず尻に敷いて世の中を見回している。そんな彼女の異常に気づけなかった俺は自分を別の人格を持って憎んだ。
人ごみに紛れていった黒スーツの男を捜す。擦れ違う人々に肩をぶつけながらオフィス街を目指してみる。多分、スーツのまま歩くならオフィス街が絶好の隠れ場所だ。
だけど、同時にもう一つの可能性が浮かび上がる。スーツの男がどこかで着替えた場合だ。まず、それが犯人ならば証拠を残そうとはしないはず――だから、服も持ち歩く。
確か手持ち鞄を持っていた。あの中に服とそれの入るバックが入っていたのかもしれない。するとバックは少し大きめのものを使っているはず。
俺はすぐに引き返して若者の多いストリートへと向かう。
それでも、それらしき男は見つからなかった。
――俺、もっとバカ……
顔も普通の人だったと思う男を見つけられるわけがなかった。
人では一人だけ。探偵の仲間もいるわけもな……――いた。一人だけ。
黒田明日也――関西弁を無理に喋る切れ長の眼を見えるのか、というくらい細めている実は美形と自称するビンボウ探偵。
「あいつ……使えるかな?」
黒田の事務所は有難いことにそこからかなり近い場所にあった。