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FILE(Y)  作者: 鎌堂成久
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FILE1【メッセージはたった3通】#2

 翌朝、俺はいつものように起き、事務所へと向かう仕度をしようとして、昨晩彼女を部屋に泊めたことに気が付いた。

 急いで寝室の扉を開けると布団がきっちりと畳まれていて彼女の姿は何処にもなかった。

 ベッドの上にこげ茶の長い髪が落ちていた。俺は彼女以外の女性を部屋に泊めたこともない。それに週に一度は部屋を掃除する習慣があるからその髪の毛は彼女が昨晩落としていった遺物と思われた。

「朝までいないなあら、事務所にいればいいのに」

 ぶつくさ文句を言いながらも俺は彼女のことが心配で電話をかけてしまった。

 呼び出し音は鳴り続けた。そして、彼女は出なかった。

 携帯電話にもかけてみたが、「電源を切っているか、電波の届かないところ――」だそうだ。

 言いつけ通り、その日一日はしっかりと休暇を取ることにした。

 真冬の炎天下。日差しは暑く、空気は冷たい。そしてそれがどちらか分からない窓辺のソファに座ってテレビをつけた。

 バラエティ番組の間は読書、ニュースになると画面を見るという動作を繰り返した。

 お昼のニュースで昼間の街並みが流され始めた。

 そして、本に目を移そうとしたとき、彼女は街のど真ん中のスクランブル交差点を歩いていた。昨夜と同じ格好で。

「なっ、どうしてあんなところに?」

 誰にともなく俺は呟く。

 俺はリモコンでテレビの電源を消して自室に戻った。ものの十分で準備をし、彼女を追うことにした。

 電車を乗り継いで三十五分。彼女のいた周辺まで来た。

――俺、バカだった……

 俺は自分の間違いに気が付いた。

 都会のど真ん中、何万人もの人が一気に擦れ違う中でたった一人の細身な女性を見つけることなど無理に近いのでは? と。

 そして俺は"探偵の助手"と自分に言い聞かせた。

 まずビルの屋上から彼女を捜した。彼女を目撃して少し時間が経ち過ぎているから予測される方面を中心にしてレンズを覗いたがそれで彼女は見つからなかった。

 可能性を考えてみた。

――……脳内から取り出すのは無理。

 俺は彼女の知り合いなんてそれほど知らなかった。

 仕方なくビルを出て俺はトボトボと街中を歩いていた。

 ふと俺の鼻が利いた。

 振り返ると人ごみに紛れて奇怪な空気を羽織った男がいた。

 夜だったら目立たないような真っ黒なスーツで平日の今日には普通に見かける格好だったけど何かがおかしかった。

 彼女のことはすっかり忘れ、俺は尾行を始めた。

 最初のところ、不審な行動は窺がえなかった。だけど、ふとビルの裏側へと入っていった。

 その先は行き止まりで男は何故だかいなくなっていた。

 そして道を阻んでいる壁に血で書かれた文字のようなものがあった。

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