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FILE2【逃げるヒヨコはただのバカ!】#5
「んっ――?」
そっと布団をかけたと同じとき、少年はまぶたを上げた。
「起きた?」
それを包容のある笑みで――それでも言葉は少なく、感情すらこもってはいないけれども――少年を見つめる。
「先ほどはすまない。気絶させてしまった……」
申し訳なさそうに目を逸らす。
「いや、別にいいよ。あんな刺激のあるもん見たら感情が暴走して、何か一つ心の中の何かを壊してたと思うよ。君に気絶させられて傷つかずに済んだんだ。かえって俺のほうがお礼を言うよ。ありがと」
お辞儀をして、顔を上げないまま、手を差し伸べる。
「なんだ、どうした?」
千田は戸惑った。
(こんなときにすべきこと、とは……?)
考えた挙句、素直に手を置いた。
すると、修司が手を俯けたままの顔の下に持ってゆき――軽く、キスをした。
「――なっ!」
あまりのことに千田は、千打ならぬうろたえ方をした。