FILE2【逃げるヒヨコはただのバカ!】#2
「ねぇ、犯人の顔って覚えてるかしら?」
いきなりでごめんね、と表情に出ている。
「いや、全く覚えてないわ。奈津子……さん」
彼女は名前を呼ぶとき、躊躇った顔をした。
奈津子さんがそれに気付いたのか、それともそうでないのかわからない。
「そうですか。どうしてあんなとこ歩いてたんですか、山崎さん?」
「はい? どこのこと」
そんなのは知らないと言うように彼女は首を傾けた。実際、テレビなんかに映されている自覚はないのだから、仕方がないだろう。
「あの交差点です」
「あ、あぁ。映されてたのね、テレビ中継……私は確か、買い物に行ってたっけ?」
何気に覚えてないらしい?
「その前にどこ行ってたんですか、朝早くから」
「そうかしら、私が出たのは七時過ぎよ。眠気が覚めたから早く帰りたかっただけよ」
「迷惑なことやってるわね、裕麻ちゃん」
最もだと思った。ただでさえかなり神経質な俺には一言もなくいなくなるのは、ただ事を大きくするだけにしか過ぎないからだ。
「いつ、連れ去られたんですか?」
「んー、交差点から少し行ったところから路地裏に入ったところかしら?」
「そう、一体誰が犯人なのかしら? やっぱり事件後を探るの嫌いだわ、私」
三浦さんは困ったようにぼやいた。