FILE2【逃げるヒヨコはただのバカ!】#1
「ひっ、人。やっ、山崎裕麻っっ……――ヒィッ!」
何故か修司が恐怖の声を上げる。
「ん、ンんぐ、クッ」
そこには目隠しと猿轡に手錠、足にはガムテープをぐるぐるに巻かれた彼女が悶えて横たわっていた。
「開放してあげないといけないわよ、君?」
三浦さんが俺の肩に手を置いた。
「あっ、はい――山崎さん、大丈夫……ですか?」
まず、俺が目隠しと猿轡を外した。同時進行に黒田と三浦さんは慎重に足のガムテープを剥がしていく。
猿轡はすぐに取れた。
「大丈夫ですかっ?!」
俺が訊いた。
「椰爽っ、なぎ……さ」
彼女の目から一筋、二筋と涙が次々に溢れてくる。
「なにがあったんですか?」
手錠をかけられたままの手は動かせない。だから、俺が抱き起こす。
「疲れはないみたいね、椰爽君」
「へ? な、なんで俺の名前知ってるんですか?」
確かに教えていなかったはず。
「……気付きなさい」
俺の腕の中で彼女が言った。
「あ……ああ。はい、山崎さんが俺の名前を言ったから」
三浦さんはニッコリ笑って頷いた。
「椰爽、あなた本当に私の助手、してるのかしら? 洞察力がなさ過ぎよ」
なみだ目の彼女に言われて俺は憤慨した。
「なっ、助けようって必死で考えてたんですからね。迷惑掛ける人の方がよっぽどダメですよ」
プイッと目を逸らした。