FILE1【メッセージはたった3通】#1
最近「ジャンルが違うのではないか?」とのメッセージが入りました。
この作品は「ファンタジー」の中でも「現実ファンタジー」です。
またキーワードで「推理」とありますが少々違った「探偵モノ」としての作品です。
「外も見てよ、椰爽」
彼女は俺に言う。
「今、見れるわけありませんよ」
デスクの資料に目を通しながら俺は答えた。彼女はブラインドの間からネオンの光る街を見ている。
「別にいいじゃない。どうせ後で出来るんだし」
俺のやっていることを分かっていないらしい彼女に言われ、俺は手を止めた。
「見るも何も、今この状態で見たくないです! なんなら山崎さんも手伝ってくださいよ」
「ヤ。」
あっさりと言われ、デスクの上にどっさりと積まれた資料を見て大きな溜息をついた。
それから一つ一つ記すべき事件を"簡潔かつ詳しく"――彼女の命令で――それの専用のノートに写していく。
そのうち俺は興味深い資料を見つけ、読み始めた。
"小6女子・凶悪殺人事件解決!"という新聞記事だった。
ムスっとした表情を浮かべた少女の写真とその下に載っている名前は"山崎裕麻・12歳"だった。
今――髪をこげ茶色に染めて軽くカールをかけ、目には深緑のカラーコンタクト――の彼女は、少女時代――分厚そうな丸い眼鏡を架けたお下げの生真面目ちゃん――の面影は全くなく、俺は自分の目を疑った。目を擦ってもう一度見てみたが、その文字は変わらなかった。
「――眠たいの?」
「あ、いえ。なんでもないですっ」
俺は資料を閉じた。適当に答えた俺に彼女は腕時計を見て言った。
「あ、もうこんな時間。今日はこれで引き上げちゃって。あといつも残業だから明日は休んでいいよ」
彼女が疲れを隠すように微笑んだ。
いつもならば平気で早朝五時まで残業させる彼女が今日は十一時で俺を帰らせた。
「今日は送ってあげる」
彼女は細すぎるほど痩せた長身に男物のコートを着て、緑色と白色のストライプ柄のマフラーを首に巻き始めた。
彼女の手を直接止めて言った。
「山崎さんみたいな美女が夜中の街を歩いたらすぐに攫われちゃいますよ」
彼女は頭一つ下から怯えた表情で「連れてって!」と主張した。
「そんなもの、俺に効くわけありませんよ」
再度断った。
「……今夜、だけ……」
下へ俯いた彼女が悲しそうに呟くから俺は巻きかけのマフラーを巻いてあげた。
「何かあったんですか?」
答えない彼女の肩を抱き、俺と彼女は探偵事務所――正しくは彼女の部屋を出た。
外は雪が降っていた。