7話 城塞都市を目指して
なんでこうなった?
俺は今、クーラ、ミーシャ、キュール王女、アメリアに俺を加えた五人で、西の国境近くにある城塞都市ロディンを目指していた。城塞都市ロディンは国境の近くにあるためかなり遠い、しかも移動方法は歩きだ、かなりの日数がかかることが予想される。絶対に時間稼ぎだ。こんなことになったのも
「リクト、お前クーラ達と依頼を受ける約束をしているようだな。その依頼内容が決まったぞ。」
そう言ってキュールが説明した依頼内容は
依頼 ロディン街までの護衛
依頼ランク B
種別 護衛
報酬 金貨6枚
内容 女性二人の護衛。行き先はロディン街と王都を往復。日数は未定。なお、依頼の間は女性二人を含んだ仮のチームとして行動すること。転移門は使わない。行きで金貨三枚、帰りで金貨三枚。
という内容だった。リクトは断ろうとしたが
「お願いします、リクトさん。一緒に受けてください」
「お願い」
クーラとミーシャに頭を下げてお願いされ、それをリクトは跳ね除けることができず、この依頼を一緒にすることになってしまったのだ。
「リクト、この依頼の間、私は王女ではなく貴族の娘ということになっている。だから気兼ねなくキュールと呼べ。わかったか?」
「ああ、わかった。それよりよく旅を許してもらえたな」
「私は妾の子だからな、あまり重要視されておらん。それに父上は私に、あのボンクラと結婚させようとした負い目がある。そこを少し突いてやった。」
「王様も大変だな」
「まあな。それに父上は、あまり有能ではないから、他の事でも色々苦労しているようだ。ふんっ、もっと苦労すればよいのだ自業自得なのだからな」
「そうなのか?」
「この前、西の隣国、トライス国が大飢饉に襲われたのだが、父上は他国と同じくらいしか援助を出さなかったのだ。」
「それに何か問題があるのか?」
「トライス国は、山に囲まれていて我が国以外からの援助が難しいのだ。それを大臣が他の国の例を出して援助を控えるように言われると、あっさり援助を減らしよったのだ。おかげで今まで良好だったトライス国との仲は、今や最悪になってしまった。」
「進言しないのか?」
「女は国政に口を出せんのだ。」
「それじゃあ、今回の旅はもしかして」
「ああ、できればトライス国の現状を確認したい。」
「キュールは偉いな」
リクトが頭を撫でると、キュールは頬を染めて下を向いてしまった。
「リクトは唯一の男なんだから、私達の相手もしなさいよ」
キュールがおとなしくなった事で、ミーシャが絡んできた。確かにリクトは、女四人の中に男一人だ。スレイは、動物達に帰りが遅くなることを知らせるため、一度リクトの家に戻ってもらった。
「リクト殿、良ければステータスカードを見せ合いませんか?」
「まあ、仮にもチームだからな。構わないぞ。」
「それでは、『カード・オープン』どうぞ」
「仮にもは余計だ。『カード・オープン』ほれ」
アメリアとキュールがカードを渡してきた。そのカードを受け取って
「「「『カード・オープン』」」」
リクト、クーラ、ミーシャのカードを、キュールに渡す。
キュール・ジルランド
Lv10
種族 人間 女
クラス 王女
筋力 15
耐久 14
敏捷 15
知覚 26
魔力 35
職業 王族
技能 中級雷系魔術 初級水系魔術
装備
雷水の指輪
ダマスカスの短剣
高級な服
良皮の靴
アメリア・リプレーン
Lv21
種族 人間 女
クラス 騎士 剣士 魔法師
筋力 53
耐久 57
敏捷 43
知覚 28
魔力 40
職業 近衛騎士 冒険者
技能 中級剣術 中級風系魔術
装備
ダマスカスの剣
耐火のマント
鉄の鎧
良質な服
良皮の靴
アメリアは結構強い。この国の一般兵のレベルは8~12くらいだ。その中で21というのは高い。キュールのレベル10も、王族の女にしては高いほうだろう、たぶん。
「レベル12!?リクトこれは本当か?」
「ああ、そうだぞ」
「レベル12で私を助けた時の敵の数を倒せたとは思えない。あの時、『力』とやらを使ったのか?」
「ああ使った。『力』は普段は封印されているから、その数値に偽りは無いぞ。」
「寝ていたのが悔やまれるな。」
もし戦いを見ることができていたら、色々と解決していたかもしれない。
「それよりこれからどうするんだ。このままロディンを目指していいのか?」
「ん~~、私はリクトに、もう少しレベルを上げてほしい」
「・・・なんでだ?」
「えっ、な、なんとなく、リクトには強くいてほしいというか、私の中でリクトは強いイメージがあるというか」
キュールの本音は、レベルが高い方が自分の傍に置きやすいからだ。それを本人に言うわけにはいかないため、キュールの返答は曖昧なものになってしまい
「とにかく、次の町に着いたら、冒険者ギルドに行くぞ。」
結局ごまかした。
「まあ、それは構わないが。強いに越したことはないし、お金も必要になるからな。特にクーラとミーシャは」
「あはは~」
「すみません」
次の日の昼頃に、ノルディという町に着いた。ノルディは、これといって特徴のない町だが、王都に近いため、それなりに栄えている。
町に着くと、すぐに冒険者ギルドに向かった。今はキュールが、ギルド登録をしている。国や他のギルドが出す依頼は、条件さえ満たせば誰でも受けることが可能だが、冒険者ギルドの依頼を受けるには冒険者にならないといけない。
登録はタダで、冒険者ギルドの収入は依頼の仲介料が基本になっている。そのため冒険者ギルドは優秀な人材の確保に必死だ。
「終わったぞ。」
登録を終え、走りよってきたキュールが、ギルドカードを見せてくる。カウンターの方を見ると、ギルドの受付嬢が涙目になっている。この世界では、ステータスカードという身分証明があるから、身元がすぐにわかってしまう。キュールが王族だと知って緊張したのだろう。
冒険者カード
名前 キュール・ジルランド
所属国 ジルランド王国
チーム なし
達成依頼
S000 A000
B000 C000
D000 E000
受注中依頼
なし
今のチームは仮なので、表記はされない。
「お主達も見せてみよ」
キュールにギルドカードを渡す。
冒険者カード
名前 リクト・タキカゼ
所属国 ジルランド王国
チーム なし
達成依頼
S000 A001
B000 C017
D015 E022
受注中依頼
なし
冒険者カード
名前 クーラ・ポートレアモン
所属国 ジルランド王国
チーム なし
達成依頼
S000 A000
B000 C000
D007 E022
受注中依頼
なし
冒険者カード
名前 ミーシャ・ミレンツ
所属国 ジルランド王国
チーム なし
達成依頼数
S000 A000
B000 C000
D007 E024
受注中依頼
なし
冒険者カード
名前 アメリア・リプレーン
所属国 ジルランド王国
チーム なし
達成依頼
S000 A000
B008 C033
D021 E007
受注中依頼
なし
「リクト、Aランクの依頼を受けたことがあるの?」
「ああ、冒険者ギルドの依頼じゃなかったがな。」
達成依頼数は、基本的に冒険者ギルドで受けた依頼しかカウントしないが、申請すれば他の所の依頼もカウントすることができる。リクトのAランクの依頼は、依頼主が勝手に申請したのものだ。
「よし、次は依頼だな。何がいいと思う?」
「姫様それなら」
「アメリア、今は貴族の娘だ。せめてお嬢様くらいにせよ」
「わかりました、お嬢様。」
「それで何がいいのだ?」
「皆さんの腕を試すためにも、討伐系の依頼がいいのではないでしょうか」
アメリアのこの言葉で方向性が決まり。最終的に決まった依頼は
依頼 ゴブリン討伐
依頼ランク D
種別 討伐
報酬 半金貨5枚
内容 ゴブリン200体の討伐、早期解決を所望、場所はゾル森林、カウントカードを使用
というものだった。アメリアには、物足りないかもが、そこは我慢してもらうしかない。
半金貨5枚か単純に計算すると一人半金貨1枚だな。金欠のクーラとミーシャには、ちょうどいいだろう。カウントカードとは、討伐依頼でよく使われるもので、設定された魔物を倒すと、倒した数がカウントされていくカードで、討伐数の証明になる。
カウントカード
討伐者 リクト
討伐指定 ゴブリン
討伐数 000
という仕様だ。
「キュール達は、お金は持ってきたのか?」
これから当分は一緒に行動するのだから、少々気になったのだ。
「いや、あまり持ってきていない。アメリアと合わせて5千コニーくらいだな。な~に、途中で稼げばいい」
どうやらキュールは元から、依頼を受けるつもりだったようだな。
「さあ出発するぞ、リクト。」
キュールはとても楽しそうな顔で、ゾル森林に向けて歩き出した。