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黒い刺青  作者: 中間
第一章:化物と英雄
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2話 食後の自己紹介

しばらくして食事は終わった。


「「ごちそうさま(でした)。」」


「おそまつさま」


モーリーが食器を片付け、リクトが紅茶を入れる。焼き菓子もセットだ。


「わあ~」


ミーシャが嬉しそうな声をだして、お菓子に手を伸ばす。リクトは出会った頃が嘘のように親切だ。どちらが本当のリクトなのだろう?

クーラは、この不思議な男のことを知りたい気持ちが、どんどん強くなっていく自分に気づいた。


「あの、リクトさん、どうして、ここまで?」


「俺が招待したんだ。持て成すのは最低限の礼儀だろう。不服か?」


「い、いえ、そんな」


「【主、そう意地悪しないでも】」


「あの、本当にありがとうございます。とても美味しかったです。あの、よろしければ、ステータスカード見せ合いませんか?」


「・・・まあ、いいよ」


「それでは、ほらミーシャも出す。『カード・オープン』」


「ほーい『カード・オープン』」


「『カード・オープン』」


「どうぞ」


クーラが、ミーシャのカードも取って二つとも渡してきた。


クーラ・ポートレアモン

Lv8

種族 獣人 女

クラス 魔法師

 筋力 13

 耐久  8

 敏捷 13

 知覚 20

 魔力 29

職業 冒険者

技能 初級風系魔術 中級氷系魔術 

装備

 銀杖

 白いマント

 布の服

 皮の靴


ミーシャ・ミレンツ

Lv8

種族 獣人 女

クラス 獣戦士

 筋力 19

 耐久 11

 敏捷 30

 知覚 18

 魔力  6

職業 冒険者

技能 半獣化 初級剣術

装備

 鋼の剣

 皮の鎧

 布の服

 皮の靴


おかしい、この世界のステータスは、レベル×10=能力値の合計のはずだ。彼女達のレベルは8なので、合計は80のはず、なのにステータスの合計は83になっている。クラスや装備が関係しているのだろうか?



リクト・タキカゼ

Lv12

種族 人間 男

クラス なし

 筋力 25

 耐久 24

 敏捷 25

 知覚 34

 魔力 12

職業 冒険者

技能 初級拳闘 初級剣術 初級炎系魔術 完全対話能力 完全読解能力

装備

 ダマスカスの剣

 黒衣

 皮の靴

 黒い包帯


「クラス無し?」


「ああ、良くわからないんだ」


「えっ?」


クーラが驚きの声を出す。そしてリクトを伺うようにしながら


「その、神殿で簡単に追加、変更ができますよ。それにクラスを設定すると、ステータスや魔法の威力にボーナスが付きますから、設定しなのはもったいないですよ。」


「そうか」


リクトの反応が薄い。なにか悪いことを言ったのだろうか、とクーラがおろおろしていると。


「【すまないな。主に悪気はないのだ。ちょっと人間不信でね。打ち解けるのに時間がかかるのだ。】」


「おい、スレイ」


「【そうだろう。アメリア殿の頼みだって、最後には聞いたではないか。】」


「うぐ」


苦い顔をするリクト。


「ねえねえ、完全対話能力ってなに?」


「誰とでも話せるんだよ。口から言葉を喋れるなら、誰とでも人でも動物でもね」


「すごーい、それで動物達とあんなに仲がいいんだ。もしかして私達に動物達が近づかなかったのも」


「俺が、俺以外の人間に近づかないように教えている。それよりあんた達」


「むっ、名前で呼んでよ。カードに書いてたでしょ、あたしは、黒猫獣人のミーシャ、よろしくね。」


「私は、銀狼獣人のクーラです。その、名前で呼んでもらえませんか?」


上目遣いのクーラが、とても可愛いかった。


「わかった。名前で呼ぶよ。それで、ミーシャとクーラは、これからどうするんだ?」


「【主、そこは送ってやるくらいの事が、言えないのかね】」


「無茶言うな。このあと、用事があるのは知ってるだろ。」


「そうなのですか?」


「ああ、まあな。予定が合わなくても、動物達に麓まで送らせるから、帰りのことは気にしなくていいぞ。それでこの後の予定は?」


「【主は、これでも君達のことを気にしているのだ。】」


スレイが茶々を入れる


「スレイ、お前は少し黙れ」


「え、えーと私達は、王都を目指しています。」


「王都を目指していて、何でこんなところで迷うんだよ。」


「ミーシャが、近道をしようと」


「ちょ、ちょっとクーラ!あんた、今日は良く喋るわね。」


「そ、そんなことはないわよ」


二人とも、何故か顔を赤くしている。何が恥ずかしいのだろう?


スレイは、(主は、自分の前だから、とか考えないのだろうな)と思っているが、口にはせず、ほかの事を口にする。


「【ちょうどいい。王都になら、我々も行く予定だ。転移門ゲートを使うから時間も短縮できるぞ。】


「門が使えるのですか!?」


転移門とは、大きな町に設置されている、門と門の間を瞬間移動できる門のことだ。門は、悪用されないように厳重に管理されていて、通行証が必要になる。一日限りの通行証を手に入れるのにも、厳正な審査が行われるため、一般人はあまり利用できない。門を日常的に使えるのは、国の高官や貴族だけというのが現状だ。クーラが驚くのも仕方がない、こんな辺鄙な所にいるリクトが通行証を持っているとは思わない。


「・・・リクトさん、それはどうやって手に入れたんですか?」


「王都の知り合いから貰った。」


「そんなことよりクーラ、同行させてもらおうよ。転移門がつかえたら、王都なんてすぐじゃん。」


「転移門まで三日かかるがな。それまで一緒に行動するつもりか?」


「私は構わないよ。リクトいい人みたいだし」


クーラが、リクトを見て微笑む。それを見たミーシャも


「まあ、私もリクトさんが良い人っていうのは否定しませんが。」


「ちょっと変わってるけどねえ~」


「・・・・・勝手にしてくれ」


「【照れておるのだ】」


「スレイ、窓をしめるぞ」


「【主、このお嬢さん達は、主のよき友人になれそうななので、主を売り込もうかと】」


「あれのどこが売り込んでいるんだ?」


「【主は誤解されやすい言動を取る癖がありますからな。】」


「・・・・勝手にしろ。俺は、動物達に挨拶してくる。戻ってくるまでに準備をしておけよ。」


リクトは、家を出て行った。


「【逃げられましたか。まあいいです。それでは、許しも貰ったところで、主のことを簡単に説明しようと思うのですが、・・・・・聞きたいですか?】」


「「聞きたい(です)」」


クーラとミーシャは、獣耳を立てて興味津々のご様子だ。


「【まず、先程の食事、主が作ったと言いましたが、実は、この家も、椅子、テーブル、食器、ベットまで主の手作りなのです。】」


「「本当(ですか)?」」


「【主は、幅広い知識をお持ちで、さらに手先も器用でしてな。あらゆる物を自作してしまうのです。どうです、すごいでしょう。料理も得意ですし、優良物件ですよ。】」


「確かにすごい。」


「なんだか、ここに来てから驚いてばかりだよ。」


「【そして、ここだけの話、主は心に深い傷を負っていてな。詳細は話せませんが、そのせいで、人間不信なのだ。だからというわけではないが、主と仲良くしてくれまいか?そして本当の主を知っても嫌いにならないでいてくれると、わたしは嬉しいのだが、そこまでは望まない】」


スレイが真面目な雰囲気でそう話した。それに、ふたりも真剣に答える。


「仲良くするのは、問題ありませんよ。リクトさんには恩がありますし、個人的に興味もありますから」


「あたしもいいよー。最初は何だこいつって思ったけど、ご飯は美味しいしかったし、それに、動物達といる時のリクトの顔、とっっても優しい顔してた。あの顔を近くで見てみたいし」


「最後だけ聞くと、まるで告白ですね。」


「ち、違うわよ!」


ミーシャが立ち上がって否定してくる。かなりの慌てようだ。逆に怪しい。


「わかってる。それに、私もあの表情を、私に向けて貰いたいとは、思ったしね。」


「【おお、では、二人とも主の恋人候補ということですな。】」


「な、なな、何でそうなるんですか!」


今度はクーラが立ち上がって、スレイに問いただす。


「【主のあの顔を見たいのなら、恋人ぐらいにならないと厳しいですぞ】」


「うっ、マジ?」


「・・・考えておきます。」


「ちょっとクーラ!」


「【それでよい。考えるのは、自由じゃ。ただ】」


「ただ?」


「【生半可な覚悟で、主にちょっかいを出すのは、私が許さないのでそのつもりで】」


ゴクッ


それまで人のよさそうな雰囲気だったスレイが、本来の聖獣の空気を纏って二人を威嚇した。


「わかったわ、それも肝に銘じておきます。」


「りょ、了解」


元のやわらかい雰囲気に戻ったスレイが


「【すまんな、主は、繊細な心の持ち主でな。それに私の恩人でもある。あまり主の泣き顔を、見たくないのだ。】」


その言い方だと、泣き顔を見たことがあるということだ。


「【この話はこれまで、何か聞きたいことはないかね。】」


「リクトさんのことは自分で聴いて見ます。なのでリクトさんとスレイさんの馴れ初めを聞かせてくれませんか?」


「【構わんが、色々話せない部分があるから、結構省くぞ】」


「構いませんお願いします。」


二人に、リクトとの出会いをスレイが話し終えた頃に、リクトが戻ってきた。



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