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黒い刺青  作者: 中間
第一章:化物と英雄
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プロローグ 異世界と化物

次に目が覚めた時、リクトは森の中で倒れていた。


意識を取り戻したリクトは、神様の言葉を思い出していた。あいつは「良き人生を化け物さん」と言っていた。

この世界は化け物でも、いい人生が歩める世界なのだろうか?

考えても答えがでるはずもなかった。リクトは一旦忘れることにして、辺りを見回す


「異世界か、草木は前の世界とあまり変わらないな。」


というか草木しかない。山か森の中のようだな。

そういえばステータスカードがあるとか言ってたな。試してみるか


「『カード・オープン』」


白い板状のカードが、宙に出てきた。


リクト・タキカゼ

Lv1

種族 人間 男

クラス なし

 筋力 2

 耐久 2

 敏捷 2

 知覚 3

 魔力 1

職業 なし

技能 完全対話能力 完全読解能力

装備

 布の服

 革の靴


知らない文字で書かれていたが、書いている意味はわかった。完全解読能力のおかげだろう。それにしてもこのカード、まるでゲームの初期設定だな。


「『カード・クローズ』」


そうリクトが言うとカードは透けるように消えた。さてこれからどうするか、辺りに人の気配はないし自分から人に会いたいとは思わない。

それなら、まずは衣食住の確保からだな。


それには常識がいる、この世界の常識が。ファンタジーな世界と言っていたから、科学は期待できないだろうからインターネットのような便利なものはなさそうだ、となると情報源は人か本の可能性が高い。

憂鬱だ。リクトは自分の異常な力のせいで人に避けられていたため、会話を中心としたコミュニケーション能力にかなり問題があることを自覚している。人から情報を得ることができるだろうか?


「人を探さないといけないのか・・・はあ」


リクトはため息をつきながら歩き始める。



一時間経過


小さな池にたどり着いた。ここに来るまで人には会っていない。


「もしかして、この辺りに人はいないのか?」


池の畔で休憩していると、森から何かが飛び出してきた。

一角獣ユニコーンに酷似した生き物だった。白い馬体に頭には渦巻き状の角がある。

よく見ると一角獣の後ろ足に、矢が突き刺さっている。


続いて森から武器を持った男達が出てきた。男達の内、何人かがボウガンを持っているから、一角獣に刺さっている矢はこいつらの仕業だろう。


「ようし追い詰めたぞ。ここなら遮蔽物はない。野郎ども仕留めるぞ」


ボウガンを構える男達。前の世界の感覚で、その前にリクトが立ち塞がる。


「止めろ!」


動物はリクトを恐れない。そのためリクトは、人よりも動物の方が好きだったりする。


「何でこんなところに、こんなガキがいるんだ?」


「おい、どうすんだ?」


「こうするしかないだろ。」


剣を持った男がリクトに近づき、胸を剣を突きした。その躊躇のない動きに、リクトは避けるのを忘れてしまった。


ドサッ


リクトの身体が、剣が刺さったままその場に倒れる。


「おいおい、いいのかよ」

「いいんだよ。どうせ密猟の現場を見られた時点で、見逃がすわけにもいかなかったしな。」

「確かにな。それにしても、何でこんなところにガキがいたんだ。」

「さあな、どうでもいいだろそんなこと。」


倒れたリクトは、男達の声が聞いていた。心臓を貫かれたのに生きているのだ。

こいつら密猟者か、それも人の命を奪うことに抵抗が無いようだ。

さっき見た感じだと男は7人ぐらいだった。どうやってこいつらを追い払うか考えていると


両腕に、黒い刺青が浮かんできた。リクトの異常に気付いた、密猟者が指差す。


「おい、なんだあれ?」


密猟者に気付かれたので、リクトはその場に立ち上がる。その胸には、剣が刺さったままだ。


「ひぃ、な、なんだこいつ」

「生きてんのか?」

「嘘だろ、胸に剣が刺さってるんだぞ!」


リクトは、右手で胸から剣を引き抜き、男達にゆっくり歩いて近づいていく。リクトは驚いて逃げてくれるのを期待したのだが。


「うっ、・・・うあああああ」


恐慌状態に陥った一人の男が、リクトに斬りかかってきた。他の男達も釣られてリクトに群がってくる。リクトは、大振りの攻撃を難なく避け、胴に剣を叩き込んだ。男はそれだけであっさり死んだ。次の男も、同じように殺した。

それを見た男達は左右から攻撃を仕掛ける。リクトは、左右からくる剣を、右手に持つ剣と左手・・で受ける。


「なっ」

「何だ、そりゃあ」


素手で剣を掴むような形で受けた左手は、肉が裂け夥しい量の血が流れる。リクトは一切気にせず、右側の男の腹を蹴り飛ばした。空いた右手の剣で、もう片方の男を斬る。リクトは、自分の血で汚れ、持ち手のいなくなった剣を持ち直して、さっき蹴ったまま地面に転がる男に投げつける。剣は男の喉に突き刺さり男は息絶えた。

残ったボウガンを持った男三人は、呆然と突っ立っていた。


リクトが、剣を三人の前に投げつけると


「ひっ、ひぃぃ、た、助けてくれ。」

「ば、化け物。」

「あんな化けもんの、相手なんかできるか」


三人の男はその場から逃げ出した。リクトは、その三人を追わなかった。


化け物か、結局俺はこの世界でも化け物なんだな。その証拠に、身体の治癒は異常な速さだった。すでに胸の傷は癒え、左手も、もう血が止まっている。

リクトは、ほとんど癒えた左手を見ながら


「『カード・オープン』、『カード反転』」


白いカードが出てきて、反転の言葉で一度カードは真っ黒になり、白い文字が浮かんできた。


リクト・タキカゼ(裏)

Lv3

種族 人間 男

クラス 人喰らい(マンイーター)

 筋力 32

 耐久 33

 敏捷 30

 知覚 34

 魔力 21

職業 なし

技能 高速再生 魂の貯蔵 痛覚鈍化 完全対話能力 完全読解能力

装備

 布の服

 革の靴


人喰らい(マンイーター)、人を喰らう化け物か。予想はしていた。前の世界でも、リクトが初めて人を殺してから、急に身体能力が上がったのだ。だから、わかっているつもりだった。だが、こうして事実を突き付けられるとさすがにキツい。


どうやら俺は、人間を殺して強くなる人間。まるで人類の敵じゃないか。


それにレベルの割りには、能力値が異様に高い。そこからもリクトがこの世界で異端なのは明らかだ。


「『カード・クローズ』」


リクトは、カードを閉じると池に入って返り血を洗い流す。そのときに黒い刺青に気付き、腕を組むようにして、封印を心の中で念じる。すると黒い刺青は、すぐに綺麗に消えた。

再封印が終わると、一角獣ユニコーンの存在を思い出した。一角獣は歩けないのか、池に座りこんでいた。

リクトは、近づいて行き。


「言葉はわかるか?」


「【不思議だ。いつもは、おぼろげにしかわからないのだが、君の言葉の意味ははっきりとわかる。君は何者だ?】」


会話が出来た。どうやら完全対話能力は、人間以外にも有効らしい。


「俺は滝風タキカゼ 陸刀リクト。さっきの奴らが言っていた通り、化け物だよ」


「【奴らの言葉はよく解らなかったが、私は君よりも密猟者の方が嫌いだな。私は一角獣ユニコーンのスレイ。そういえば礼を忘れていた。助けてくれて、ありがとう】」


一角獣で、合っていたようだな。


「【どうしのだ?】」


リクトの目から涙が流れていた。


「えっ」


リクト自身、自分が泣いていることに気付いていなかったようだ。


「いや、何でもない。」


久しぶりだった。誰かを助けて礼を言われたのは。

リクトは、涙を拭き取って


「それよりスレイ、矢を抜こうと思うんだが?」


「【頼むよ】」


「了解。ちょっと待ってろ」


リクトは、死んだ密猟者の服を剥ぎ取り、それを池で綺麗に洗ってから、スレイの近くまで持って行く。

それから矢を引き抜き、傷口を服を切り裂いて作った包帯で巻いて応急措置をした。


「【何故、君が化け物と呼ばれるのだ?私には解らないのだが】」


「人間は自分とは違うものを受け入れられない生き物だからな。それに俺の力は、確かに化け物さ」


「【力は使い方しだいだと思うがね。】」


「それが真実でも、俺は人には受け入れられないと思う。」


リクトは、前の世界で人を助けた時に、怖がられた経験がある。だからスレイの言葉を、素直に受け入れることができなかった。


「【そうか】」


悲しそうに目を伏せるスレイ。


「【・・・・・リクトよ、私は君に恩ができた。何か礼をさせてくれ。】」


「なら、この世界の常識を教えてくれないか?」


「【常識?構わないが、私は一角獣ユニコーンだ。あまり人の常識には、詳しくはないぞ。それより人里に、行かなくていいのか?】」


「人には・・・会いたくないんだ。」


「【・・・・・わかった。だが、それだけでは、命を救ってくれた礼には不足だろう。リクト、私の主になってくれないか、私は君が気に入った。】」


「一角獣は、女性を好むんじゃないのか?」


「【それは、知っているのか。まあ、気にするな。私は変わり者なのだ。それでどうだね?】」


「ありがたいよ。スレイの主、やらせてもらうよ。」


「【そうか、これからよろしく頼む。我が主よ】」


「よろしく。そこで相談なんだが、田舎暮らしでもいいか?」


「【何処でも構わない。主の好きなように】」


「田舎でのんびりするだけだぞ」


「【主は、人に会いたくないのだろう。田舎でのんびり、多いに結構。いっそ山奥で暮らすのもいいだろう。】」


スレイは、リクトのことを優先してくれるようだ。


「ありがとう」


この後、スレイが動けるようになると、リクトとスレイは山奥に姿を消した。



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