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黒い刺青  作者: 中間
第一章:化物と英雄
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プロローグ 前世界と神様

ここは町郊外にある工事現場。そこでは大人に混じって、高校生の少年が泥にまみれて働いていた。


「リクトくん、今日はもう上がっていいぞ!」


現場監督が、大きな声でリクトに上がるように伝える。


「はーい」


近くの高校に通う高校1年の滝風タキカゼ 陸刀リクトは、監督の好意で工事現場でバイトをしていた。

8時くらいに帰途についたリクトは、帰宅途中のコンビニで弁当を買う。夜の9時を回った頃に自宅に帰ってきた。


「ただいま」


部屋に入っても誰の返事もなかった。両親は今日も外泊だろう。

リクトの特異な力を持っていた。ある事件をきっかけに周りの人間はリクトの力を知り、両親はリクトを恐れた。リクトが小学校5年生の時に殺そうとしたが失敗に終わり、それ以降両親は家に寄り付かなくなった。


両親でこれだ。リクトに友人と呼べるのは一人もいなかった。良くしてくれているバイト先の監督は、ただリクトの異常性を知らないだけだ。


リクトの力を知った人たちは、リクトのことを『化け物』と呼んだ。


帰宅の言葉が宙に消え、心には空しさだけが残った。

そこには他者に、対する怒りはない。自分の力を理解しているリクトにとって、自分の力がもっとも忌むべきものだったからだ。他人は力の表面を見ただけで恐怖する。もし本質まで知ったらどうなるか想像もつかない。


リクトは、コンビニ袋から弁当を出す。いつもは自炊をしているが、帰りが遅いときはコンビニ弁当に頼っている。遅めの夕食を済ませると、今度は図書館で借りてきた本を読み始める。お金のないリクトにとって、唯一の暇つぶしだ。リクトが外で暇を潰そうとすると、リクトの色々な噂を聞いた不良が集まってくる危険があるのだ。だからバイトも郊外のバイトを選んだし、いつも図書館で本を借りて、暇を潰しているのだ。


読む種類は様々で、今は内容の軽い医学書を読んでいる。この前は物語の本、その前は経営学の本、その前は建築関係の本を読んでいた。3年間の読書は、リクトに幅広い知識を蓄積させることになり、これからの人生の助けとなった。


リクトは、読書を切りの良いところでやめ、一人で眠りについた。




目が覚めるとリクトは何もない白い空間にいた。自分自身が異常な存在なため、不思議なことには耐性があるつもりだったが、これには驚いた。


「なんなんだ、夢?」


「まあ、そんなところよ」


何もない空間から女が現れた。


「誰だお前、俺の前にその人の姿で出てくるな!」


この時は、驚きより怒りがまさった。

その女の容姿は、小学生時代の恩師のものだった。恩師は既に亡くなっている。


「ごめんなさい。この人が、もっともあなたに影響力を持った人だったから」


恩師ではないナニかは、身体を回転させて、今度は名前も忘れたクラスメイトの女子に姿を変えた。


リクトは、またしても不思議な現象を見せられ、少しだけ落ち着きを取り戻した。


「何なんだ、あんたは?」


「まあ、あなた達で言うところの神様よ。まあ神様といっても、世界の管理者みたいなものなんだけどね。」


「その神様が何のようだ。まさか雑談に来たわけじゃないんだろ。」


「そのまさか、実は雑談しに来たのよ。」


「・・・・・・・・」


「コホン。それじゃあ、今から本題を話すわね。」


なかったことにするらしい。自称神様が本題に入る


「あなたには異世界に、行ってもらいます。拒否はできません。行き先はファンタジーな世界です。」


「ま、待て。なんで俺が異世界に行かなきゃならない?」


「それは本来あなたは、この世界に存在するべき人間ではないからよ。」


存在するべきではない、だと


「それは、どういう、意味だ」


「本来あなたは、何処かのファンタジー系の世界で、生まれる筈だったのよ。それがなにかの手違いで、この世界に生まれてしまった。見つけるのに苦労したのよ。」


「・・・・・」


やれやれといった様子の神様だが、リクトは言葉を無くして呆然とする。

それも仕方ない、神様はたった今リクトの存在を全否定したのだ。この世界にお前の居場所はない、そう告げたのだ。人間に存在を否定されたことは数あれど、神様や世界にまで存在を否定されたのは初めてだ。


「元気出しなさいよ。そのための異世界行きよ。」


確かにそうなのだろう。今となっては今の世界に戻ることが辛い。元々リクトには、居場所のない世界だったのも事実だ。


「それに、この異世界行きは悪いことばかりじゃないわ。限定的だけど、あなたの力を封印してあげる。」


「ほ、本当か?」


突き落とした後で拾い上げるところに、黒さを感じさせるが、リクトにとって自分の力の封印は、願ってもないことだった。


「ええ、ただあなたの力は生命に、関わるものだから無くすことはできないし、大怪我を負ったりしてあなたの命が危なくなると、封印が解除されてしまうわ。あっ、でも再封印は簡単よ。」


「それでもいい。この力を封印してくれるなら。異世界だろうと行ってやるさ」


「それでは、乗り気になったところで、行き先の説明をするわね。これから行く世界では、全ての生き物にステータスカードっていう物があって、『カード・オープン』と唱えると、あなたの詳細が書かれたカードがその場に出てくるの、消すには『カード・クローズ』よ。これは、あなただけなんだけど『カード反転』で本来のあなたの力が表示されるから気をつけてね。私から言えるのはこれだけ。心の準備はいい?」


「俺に選択権はないんだろ」


「そう、ね。両腕を貸して封印を施すから。」


神様は一瞬悲しそうな顔を見せるが、すぐに両腕を所望する。

両腕を神様の手がある位置に持っていく。すると両腕を掴まれ次に瞬間、両腕に燃えるような熱が走る。


「うっ、があああ、あああ・・・があ・・・・・はあ・・はあ」


熱が引いたとき、腕には禍々しい黒い刺青が刻まれていた。その刺青も時間が立つと消えた。

身体の感覚がいつもと違う。どうやら力は、しっかり封印されているようだ。確認のために


「終わったのか?」


「終わったわ。再封印は両腕の刺青に触れて、心の中で『封印』って頭で念じればいいから、簡単でしょ」


「わかった」


「それじゃあ、そろそろ異世界に送るわね。あっ、会話と読解はサービスしておくから。」


リクトの周りが白から黒に変わっていき、どんどん暗くなっていく。次第にリクトの意識も薄れていき


「良き人生を化け物さん。」


神がそう囁き、そこでリクトは意識を失った。



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