第26話 覚醒ミキティ
「お昼だ~。ごはん一緒に食べようね」
午前中の授業が終わり、教室中が解放感に包まれる。
自席でお弁当を広げたり、学食や購買に行ったりとお昼は皆自由に動く。
私と席子ちゃんはお弁当派。自分の席でまったりと食べるのだ。
広井君は大きく伸びをすると席を立ち、どこかへ行こうとしていた。
私は彼の腕をむんずっと掴み、こちらへ引き戻した。
「ごはん一緒に食べようって私言ったよね?」
「えっ? あ、お、俺に言ったのか?」
「他に誰がいるのかな?」
「(……み、ミキティが物凄く笑顔だ。可愛いけど今までみたことのないような迫力を感じる)」
「ふっふっふ。逃がさないよ広井君」
私は絶対にキミと仲良くなるって決めたのだから。
可能な限りずっと一緒に居るからね。
「こらこら。広井君お弁当持ってないんだから放してあげなさい。お昼抜きにさせる気か」
「むぅ……」
そういえば広井君はいつも購買のパンを食べていたっけ。
私の我儘でお昼抜きにするのはさすがに駄目だ。
「広井君。私のお弁当半分こにするのと、私を腕にくっ付けたまま購買に行くのどっちがいいかな?」
「「とんでもない2択だな!?」」
「前者の場合、お箸が一膳しかないから回し食べすることになるけど大丈夫?」
「「あまり大丈夫じゃないな!?」」
広井君と席子ちゃんのツッコミが綺麗に重なった。
「未希ちゃんどうした!? なんか朝から様子変だよ!? おかしな方向に吹っ切れている感じだぞ!?」
そんなの自分でも分かっている。
あえて強気な姿勢を貫いているのだから。
「だってこうでもしないと誰かさんは私と仲良しさんになってくれそうにないからね」
ジロッと広井君の顔を覗き見る。
紅に染まりながら気まずそうに外方を向く広井君。
「なるる。そういうわけか。昨日の『友達にはなれない』宣言が未希ちゃんの怒りを買っちゃったわけね。うんうん。そういうことなら観念するしかないね広井君」
「か、観念するしかないのか」
「でも意外だな。未希ちゃんってこういう時は極端に落ち込んじゃう人だと思っていたのに」
席子ちゃんの意見は最もだ。
気になる人から絶縁に近い宣言を受けたらショックのあまり一人で泣き出してしまうのが氷室未希という人間だ。
だけど今回だけは違った。
私はすでに誓っていたのだ。
『広井君に頼られるくらい強い人間になる』
その誓いを果たすために広井君から拒絶されたくらいで落ち込んでなどいられない。
むしろ、意地でも彼と仲良くなってやるという決起が私の中で沸き起こった。
それに彼が私を好いてくれていることを知っていることも大きかった。
私のことが好きなくせに近づいてこようとしない。それにはきっと何か理由がある。
悩ましそうな顔の彼がちょっと悲し気に見えたから、私は放っておくことができなかった。
でも一番の理由は——
「広井君はどう思っているか知らないけど、私はどうしてもキミとお友達になりたかったから」
広井君が私と友達になれないのには理由があるのだと思うけど——
私がそれに付き合う理由もない。
だから勝負だよ。
友達になりたい私と、友達になれないキミ。
先に音を上げた方が負けだ。
今まで数々の失敗で負け続きの私だけど。
今回だけはなんとしても勝たせてもらう。
だから覚悟していてね広井君。




