第24話 広井サトルの闇
【main view 広井サトル】
俺には幼い頃から大切な人が居た。
その子は峰田瑠美といった。
幼稚園時代からの大切な友達。
一緒にいる時間が心地よくて、いつの間にか親友と呼べるレベルまで仲が良くなっていた。
明るくて、誰にでも気さくな瑠美は小学生の頃からモテモテだった。
男女仲が良くない学校だったのに、みんな瑠美だけは特別と言わんばかりに彼女はクラスメイトの男子全員と仲が良かった。
そう、瑠美はモテまくっていた。
俺も彼女のことを特別に見ていた。
それは間違いなく俺の初恋だった。
瑠美は中学でもモテまくっていた。
誰とでもすぐに打ち解けることができてしまう瑠美。
俺はその中で誰よりも瑠美と仲の良い存在。
ただのクラスメイトの男共とは違いアドバンテージがある。
瑠美との交友関係はもうすぐ10年に達する。
瑠美と恋仲になれる可能性が一番高いのは俺なのだ。
その傲慢さに浮かれていた俺はすぐに後悔することになる。
「サトル! 私、バスケ部の大川先輩に告白されちゃった!」
青天の霹靂とはこのことをいうのだろうか。
まるで雷に打たれたかのような衝撃が俺を襲った。。
俺は震えた声で聞き返す。
「そ、それで、お、おまえ、返事……は?」
「もっちろんOKしたよ! だって大川先輩だよ! 皆が格好いいって噂しているモテモテの先輩なの! スリーポイントシュートがめっちゃ上手なんだよ!」
「…………」
ショックのあまり崩れ落ちそうになった。
俺の10年間が……ポッと出の3Pシューターに負けたのだ。
“俺が先に好きだったのに”
“ていうかお前も俺が好きだと思っていたのに”
“どうして俺から離れていくんだよ”
“どうしてバスケ部の先輩がお前に告白するんだよ”
“お前帰宅部じゃねーか。どこでバスケ部と接点持ったんだよ”
“スリーポイントシュートくらい俺だって上手に決められるよ”
“どうして”
“どうして”
“どうして”
「お、俺だって、俺の方が瑠美のこと、知っている。お前は、俺と付き合うべき、なんだ」
「……え?」
この時の俺の精神状態はショックでおかしくなっていた。
少しでも自制心があれば、俺はきっとこんな最低なことを言わなかっただろう。
「そんなよくわからないバスケ部の先輩なんてやめて俺と付き合え!!」
口からそんな言葉が出てしまい、俺はすぐに後悔した。いや、言いながら後悔した。
これが俺の言葉だなんて信じられなかった。
「……ごめん。サトルのことは……友達としてしか……考えられない」
「そ、そんな……」
「……私達……友達としての時間が長すぎたんだと思う……サトルが先輩のように全く知らない人だったら……私は今の告白にOKしていたかもしれない」
なんだよそれ。
何を言っているんだよ。
幼馴染だぞ?
幼馴染は誰よりも仲の良い存在じゃなかったのかよ。
俺が……何年間……お前を好きでいたと思っているんだよ。
「サトル。これからも私達、友達だからね」
瑠美とは疎遠になった。
俺から近づくことを辞めた。
それでもたまに視界に入ってしまう。
先輩と仲良さげに歩いている瑠美を遠くから眺める日々がつらかった。
何がバスケ部の先輩だ。
何が幼馴染だ。
何が——
「(何が友達だ)」
“友達”
この出来事があってから俺は自分から女友達を作ることをやめた。
だって、その女友達を好きになってしまったら
また“友達だから”という理由で恋仲になれない気がしたから。
だから次に心から好きな人が出来た場合——
絶対に“友達”にはならない。
深い関係を築きたいのなら——
先輩が瑠美にやったみたいに——
初めから“恋人”という関係でスタートしなければならないんだ。




