第18話 AI採点は割とAIが気を使った点数を出してくれる
皆で歌い終わった後、全員が好きな歌を一曲ずつ披露した。
3人ともカラオケ初心者だけあって、不慣れな様子がうかがえる。
でも私は思ってしまった。
「(もしかしてこの中では私が一番上手いのでは?)」
席子ちゃんはよく音程を外す。広井君はリズムから外れることがよくある。
たぶん私はどちらも出来ている。
これは……大勝利の予感!
「あ、あの、次からは採点機能を付けてみない?」
優劣をつけるには採点が一番だ。
二人よりもいい点数を取って、私は今日初めて二人に勝利するのだ!
二人からは特に反対意見は出なかったので、AI採点モードを起動した。
「じゃあ俺から歌ってみる」
広井君が歌うのは有名な昔のアニメソング。
一般受けもよく、カラオケの定番とも言われている曲だった。
音程は取れているが、やはりたまにリズムを外してしまう。
画面に点数が表示される
『81点』
「おぉ……俺なんかの歌声でも80点超えるのか」
広井君は自分の点数に感激している様子だった。
「へー、広井君やるじゃん。次私ね」
席子ちゃんが曲を入れる。
有名なJ-POP曲だ。私もサビだけは知っている。
広井君とは対照的にリズム感はバッチリなんだけど、音程が外れてしまう。
席子ちゃんの声は低音寄りのようで、高温のパートで必ず躓いてしまうようだ。
点数が表示される。
『81点』
「お、広井君と同じ点数だ。いえーい」
ハイタッチを交わす二人。
何か仲いいなこの二人。距離近くない? もっと離れた方がいいんじゃない? 距離感って大事だよ? 手を合わせるなんてはしたない。ていうか広井君、女の子とそういうことしちゃう人なんだふーん。あーあ、はしたない。はしたない二人だよ本当。嫌になるなぁ。
「(み、ミキティな怒り満ちたような目で睨みつけてきている……)」
沸き立つ感情のおかげで緊張はだいぶ薄れてくれた。
今なら平常心で歌える気がする。
「次は私歌います」
勝つんだ! この二人に!
私が入れたのはマイナーなアニメ曲。
バラード調でしんみりとしたテンポが特徴だ。
音程とリズムはちゃんと取れている。大丈夫、丁寧に歌えている。
無難に歌い切り、点数が画面に表示された。
『69点』
「なんでぇ!?」
「そ、その、どんまい」
「私そんなに音痴かな!? 自分では気づけないけど実は聞くに堪えない歌声だったかな!?」
「いや~、上手な方だと思うよ。でもね——」
「でも?」
「声小さすぎ」
「うぇぇ!?」
嘘でしょ!?
個人的には大ボリュームで歌っていたつもりだったのに!
「正直耳元で飛ぶ蚊の方がまだ大きな音出してたよ。声が小さすぎて機械が採点評価できなかったんだろうね。モスキート音かと思ったわ」
「うぅ……ビビりな性格が無意識にでてたぁ」
項垂れながら落ち込む私。
「ひ、氷室さん。俺は氷室さんの歌声好きだぞ? 透明感あってよかった」
「……勝者からの哀れみは受けないもん」
「べ、別に勝ったなんて思ってないのだが……」
頬を膨らませてジッと広井君をにらむ。
なぜか彼は視線を反らして壁の方をむいてしまった。
「(歌声、本当に良かったと思うけどな。確かに声は小さかったけど、それが小動物みたいで、可愛くて、保護欲が駆り立てられた。何をやっても可愛いとかズル過ぎん? ていうか涙目で頬膨らませるのずるいって。惚れるってそんなの。あっ、もう惚れてたわ。惚れてたわミキティーーーー!!)」
……そういう所なんだよなぁ。
でもそっか。広井君には私の歌声届いていたんだ。
採点勝負では完敗だったけど、一人でも歌声を『良い』と思ってくれたなら……いいかな。
うん。今日の目的は勝ち負けにこだわることじゃない。
少しでもビビりを治すためなのだから。
「——あっ、なんか次歌ったら90点出ちゃった」
「サラッととんでもない偉業やり遂げないで席子ちゃん!」
勝ち負けにはこだわらないって言ったよ?
でも、急に突き放すのはやめてほしい。いきなり置いていかれるのは普通にキツイから。




