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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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18/25

第18話 AI採点は割とAIが気を使った点数を出してくれる

 

 皆で歌い終わった後、全員が好きな歌を一曲ずつ披露した。

 3人ともカラオケ初心者だけあって、不慣れな様子がうかがえる。

 でも私は思ってしまった。


「(もしかしてこの中では私が一番上手いのでは?)」


 席子ちゃんはよく音程を外す。広井君はリズムから外れることがよくある。

 たぶん私はどちらも出来ている。

 これは……大勝利の予感!


「あ、あの、次からは採点機能を付けてみない?」


 優劣をつけるには採点が一番だ。

 二人よりもいい点数を取って、私は今日初めて二人に勝利するのだ!

 二人からは特に反対意見は出なかったので、AI採点モードを起動した。


「じゃあ俺から歌ってみる」


 広井君が歌うのは有名な昔のアニメソング。

 一般受けもよく、カラオケの定番とも言われている曲だった。

 音程は取れているが、やはりたまにリズムを外してしまう。

 画面に点数が表示される


 『81点』


「おぉ……俺なんかの歌声でも80点超えるのか」


 広井君は自分の点数に感激している様子だった。


「へー、広井君やるじゃん。次私ね」


 席子ちゃんが曲を入れる。

 有名なJ-POP曲だ。私もサビだけは知っている。

 広井君とは対照的にリズム感はバッチリなんだけど、音程が外れてしまう。

 席子ちゃんの声は低音寄りのようで、高温のパートで必ず躓いてしまうようだ。

 点数が表示される。


『81点』


「お、広井君と同じ点数だ。いえーい」


 ハイタッチを交わす二人。

 何か仲いいなこの二人。距離近くない? もっと離れた方がいいんじゃない? 距離感って大事だよ? 手を合わせるなんてはしたない。ていうか広井君、女の子とそういうことしちゃう人なんだふーん。あーあ、はしたない。はしたない二人だよ本当。嫌になるなぁ。


「(み、ミキティな怒り満ちたような目で睨みつけてきている……)」


 沸き立つ感情のおかげで緊張はだいぶ薄れてくれた。

 今なら平常心で歌える気がする。


「次は私歌います」


 勝つんだ! この二人に!

 私が入れたのはマイナーなアニメ曲。

 バラード調でしんみりとしたテンポが特徴だ。

 音程とリズムはちゃんと取れている。大丈夫、丁寧に歌えている。

 無難に歌い切り、点数が画面に表示された。


 『69点』


「なんでぇ!?」


「そ、その、どんまい」


「私そんなに音痴かな!? 自分では気づけないけど実は聞くに堪えない歌声だったかな!?」


「いや~、上手な方だと思うよ。でもね——」


「でも?」


「声小さすぎ」


「うぇぇ!?」


 嘘でしょ!?

 個人的には大ボリュームで歌っていたつもりだったのに!


「正直耳元で飛ぶ蚊の方がまだ大きな音出してたよ。声が小さすぎて機械が採点評価できなかったんだろうね。モスキート音かと思ったわ」


「うぅ……ビビりな性格が無意識にでてたぁ」


 項垂れながら落ち込む私。


「ひ、氷室さん。俺は氷室さんの歌声好きだぞ? 透明感あってよかった」


「……勝者からの哀れみは受けないもん」


「べ、別に勝ったなんて思ってないのだが……」


 頬を膨らませてジッと広井君をにらむ。

 なぜか彼は視線を反らして壁の方をむいてしまった。


「(歌声、本当に良かったと思うけどな。確かに声は小さかったけど、それが小動物みたいで、可愛くて、保護欲が駆り立てられた。何をやっても可愛いとかズル過ぎん? ていうか涙目で頬膨らませるのずるいって。惚れるってそんなの。あっ、もう惚れてたわ。惚れてたわミキティーーーー!!)」


 ……そういう所なんだよなぁ。

 でもそっか。広井君には私の歌声届いていたんだ。

 採点勝負では完敗だったけど、一人でも歌声を『良い』と思ってくれたなら……いいかな。

 うん。今日の目的は勝ち負けにこだわることじゃない。

 少しでもビビりを治すためなのだから。


「——あっ、なんか次歌ったら90点出ちゃった」


「サラッととんでもない偉業やり遂げないで席子ちゃん!」


 勝ち負けにはこだわらないって言ったよ?

 でも、急に突き放すのはやめてほしい。いきなり置いていかれるのは普通にキツイから。


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