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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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第15話 怖かった そして格好良かった

 

 ついにきてしまった土曜日。

 皆でカラオケに行く日。

 今でも信じられない。まさか自分が他人をカラオケに誘う日が来るだなんて。

 鼓動が鳴りやまない。高揚感が私の全身を巡っている感覚。


「(ゲームキャラのレベルアップってこういう感覚なのかな)」


 そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか待ち合わせ場所のカラオケ屋さんに到着していた。

 どうやら私が一番手のようだ。

 他のお客さんの邪魔にならないように隅っこに佇んで二人を待つ。


「(そういえば二人と私服で会うの初めてだ)」


 私の恰好は……大丈夫だよね? 無難な感じだよね?

 んふふ。髪はちょっといつもより手入れを頑張っちゃったもんね。三つ編み増し増しなのだ。

 ひ、広井君は三つ編み好きだから喜んでくれるよね?

 無意味に自分の三つ編みを撫でていると、二つの人影がこちらに近づいてきていた。


「あ、席子ちゃん、広井く——あれ?」


 近づいてきたのは広井君達ではなかった。

 5月なのにタンクトップを着た金髪の大人のひと。胸毛がちょっと見えている。

 知らない……人……


「お姉ちゃん。誰かと待ち合わせ? もし時間あるなら俺らと歌っていかね?」


「あびゃ! あびゃびゃ!?」


 驚き過ぎて変な声出た。

 も、もしかして、もしかしなくても、これってナンパというやつでは?

 え? 嘘? ナンパなんて創作の中だけの話じゃないの? 実際に存在する行為なの?

 ていうか私なんかをナンパって……この方達は今までよっぽど女性に縁がなかったのだろう。たぶん女の子なら誰でも良いという所にまで堕ちてしまっている。


「いいじゃんか。30分だけ! いやキミさえ良かったらフリータイムでもいいよ? 個室で俺らと楽しもうぜ?」


「あ……や……いや……」


「店員さーん。フリータイム3名。一部屋予約おねがいしまーす!」


 腕を掴まれ、受付に引っ張られてしまう。

 怖い。怖い。怖い。


「た、助け——」


「——店員さん。フリータイムは2名に変更で」


 ……あっ。

 ポンッと優しく肩を叩かれる。

 振り返ると、広井君が見たこともないくらい怖い目つきでナンパしてきた男性達をにらみつけていた。

 その後ろには席子ちゃんもいる。彼女もまた怒りの表情をぶつけていた。


「なんだ!? 邪魔する気か!?」


「アンタ達こそ俺達の楽しい休日を邪魔するんじゃない。氷室さんは俺達のツレだ。ナンパはやめてもらおうか」


「んだと!?」


「……店員さん。やっぱフリータイムは3名でいいですよ。あと1名はこちらで呼びますんで。席子、警察に連絡してくれ。フリータイムで部屋とってあるけどなるべく早く来てもらうように頼んでほしい」


「任せといて!」


 言いながら席子ちゃんはスマホを取り出し、片手で操作を始める。


「け、警察!?」


「お、おい、マジで連絡しているんじゃないだろうな?」


「…………」


「ち、ちょっと声を掛けただけなのに勘弁してくれよ!」


 たぶん席子ちゃんの電話はフリだろう。

 でもそれに気づかないほどこのお二人は動揺しきっている様子だった。

 詰め寄ってくる二人から私を庇うように広井君が身体を差し込んできた。


「まぁ、彼女があまりにも可憐だから声を掛けたくなる気持ちはわからんでもないが、だからこそ許せない。氷室さんは皆のマドンナなんだ。勝手に自分のモノにしようと考える下賤な考えは万死に値する。俺やお前たちが気軽に触れていいような存在じゃないんだ。本当に純な心を持っている人間だけが彼女と会話して良いのだと法律で決まっている! 煩悩を全て捨ててから出直してこい!」


 広井君節が炸裂してしまった。

 どんな法律なの……

 べ、別に広井君なら気軽に触れるくらいしてくれてもいいのに。


「やべえこいつ!? い、行こうぜ!」


「あ、ああ」


 毛深い二人組は逃げるようにお店から去っていく。

 私達3人はその場でふーっと息を付いた。


「遅くなって悪かった氷室さん。大丈夫だったか?」


「う、うん。平気……です。広井君が……助けてくれたから……」


「そ、そうか。よかった」


「「…………」」


 顔を真っ赤にしてうつむく私と広井君。

 正直に言おう。

 とっても怖かった!

 そして……


「(とっても……格好良かった……)」


 私はあんなに怖がっていたのに、広井君は一切物怖じせず、終始攻勢に立っていた。

 大人に向かってあんなに堂々と立ち向かえるなんて凄いよ。凄すぎる。

 同時に少し寂しく思えてしまった。

 広井君はきっと私よりも遥か高い経験値を持っているのだと感じてしまった。


「(もっと……もっとレベルアップしなくちゃ!)」


 二人をカラオケに誘ったくらいで浮かれちゃだめだ。

 広井君を助けられるくらい強くなるって決めたんだから。


「……はい……はい……あ、もう大丈夫みたいなのでやっぱり来なくて大丈夫です。お騒がせしました~」


「「本当に警察に連絡していたの!?」」


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