第14話 カラオケに連れて行ってもらう そしてカラオケに連れて行く
「席子ちゃん。私をカラオケに連れてって」
「……をぉ? どうした? 急に」
「特訓するのっ!」
広井君に頼られるくらい強い子になる為に私は殻を破らなければいけない。
まずは号令も出来ないようなダメダメ委員長の称号を返上する。
私には圧倒的に度胸が足りない。それを克服しないと何も始まらない。
そこで思いついたのがカラオケだった。
人前で歌えるくらい度胸が付けば号令くらいきっとできると思うから。
「席子ちゃんギャルギャルしいからきっと毎日カラオケ三昧なんだよね! お願い! 無知な私にカラオケを教えてください!」
「未希ちゃんはどうもギャルに対して偏見があるみたいだね。ていうか前にも言ったけど私ギャルじゃないからね? カラオケも行ったことないよ?」
「席子ちゃん。面白くないエイプリルフールネタはいいの。私は真剣なの。席子ちゃんのギャル力を私に分けてください!」
「瞬時に嘘判定されるくらいカラオケ三昧のギャルっぽいのか私!」
「お願い~! お願いします~!」
「わかったわかった! でも平日は部活あるから無理だよ。今度の土曜、一緒に行こ?」
「う、うん! ありがとう!」
やったっ!
念願の初カラオケ! 私の経験値すごい勢いで上昇するぞコレ。
そういえば友達と休日に遊びにいくのも初めてだ。
緊張するけど普通に楽しみだ。
「ね、未希ちゃん。広井君も誘っちゃえば~?」
席子ちゃんがからかうように囁いてくる。
ひ、広井君をカラオケに誘うなんて無理無理無理!
——と、昨日までの私なら思っていたけれど。
決めたんだ。強くなるって。
「わかった。そうする」
「えっ?」
目を丸くしてきょとんとする席子ちゃんを横目に私は隣の席の広井君に声をかけた。
「そ、そそそ、そういうわけだから!」
「「どういうわけ!?」」
広井君の席子ちゃんのツッコミの言葉が重なる。
いけない、主語を省き過ぎた。
「ど、どど、土曜日に、私達と、一緒に、カラオケ、です!」
緊張で瞳に潤いが宿る。
半泣きのまま、縋るように広井君の瞳をじっと見つめた。
広井君は壊れたロボットみたいにコクコクと首を縦に振り続けてくれた。
了承ってことでいいんだよね?
「……ありがと。嬉しい」
「「~~~~っ!!」」
もう限界。
心臓ばっくばくでどうにかなっちゃいそうだ。
私はカバンを引っ掴み、逃げるようにこの場から立ち去った。
「アデュー!」
駆け足で出て行った私。
取り残された広井君と席子ちゃんがポカーンと私の方を見つめていた。
「……あの子かわいすぎじゃない?」
「~~~~っ」
ぽつりとつぶやかれた席子ちゃんの言葉に広井君が顔を真っ赤にさせながら小さく頷いていたことを残念ながら私が知ることはないのであった。




