第2話 「一人だけうるさい」
翌日から、俺はうるさい存在になった。
いや、正確には、俺だけが、まだ反応してた。
誰も俺に話しかけへん。
無視とも違う。
気づいてない感じでもない。
最初から、そこにいないものみたいな扱い。
昼休み、隣の席の同僚に声をかけた。
「昨日の件、どうなりました?」
返事はなかった。
俺の声だけが、空気に吸われて消えた。
「なあ」
もう一回、声を出す。
同僚は、困った顔をした。
「あれ?……いたんですね」
その一言で、頭の中が真っ白になった。
「何それ」
思わず言ってた。
「俺、ここにおるやろ」
同僚は、曖昧に笑った。
「いや、そういう意味ちゃうんですけど……」
意味、やなくて、現実の話をしてるんやけど。
更衣室でロッカーを開けると、番号が違ってた。
中身は俺の私物やのに、番号だけが、知らん数字。
総務に言いに行った。
「ロッカー、勝手に変えられてるんですけど」
総務の人は、画面を見て首をかしげた。
「登録、無いですね」
「俺のですけど」
「登録が無いです」
話が、噛み合わん。
戻ってくると、俺のペン立てが消えてた。
「誰か持っていきました?」
「最初から無かったですよ?」
その瞬間、胸の奥がズン、と重くなった。
俺だけが、必死に世界にしがみついてる。
周りは、もう次に進んでる。
その事実が、一番きつかった。




