第61話 王都への道、騒がしい旅路
第61話 王都への道、騒がしい旅路
王都グランカノンへ続く街道は、よく整備されていた。
往来も多く、商人の馬車や巡回兵の姿もちらほら見える。
「……平和ね」
セレナが周囲を見渡しながら呟く。
「だなぁ。魔物も出ねぇし拍子抜けだ」
エンキドは両手を頭の後ろで組み気の抜けた声を出した。
「でも油断は禁物だよ」
ウルガは一応それらしいことを言ってみるが――
「お前が言うと説得力ねぇな」
「ひどくない?」
そんなやり取りをしている間バステト様はというと、ウルガの肩の上で丸くなっていた。
「みゃあ……」
喉を鳴らしながら、気持ちよさそうに尻尾を揺らす。
「……なあ」
エンキドがちらりと視線を向ける。
「その猫、連れてこなくてよかっただろ?」
「バステト様よ」
セレナが即座に訂正する。
「失礼なこと言わないで」
エンキドは肩をすくめた。
「みて見ろ、完全にくつろいでるじゃねぇか」
「みゃ?」
バステト様が目を細め、
なぜかエンキドの方をじっと見つめる。
「……何だよ」
「みゃー」
「威嚇すんな」
ウルガは苦笑しながら、そっとバステト様を撫でた。
「大丈夫ですよ。エンキドは心を入れ替えましたから」
「元悪人みたいな言い方やめろ!」
「みゃあ」
バステト様は満足そうに鳴き、再び目を閉じる。
「……なあセレナ」
エンキドがぼそっと言う。
「これ本当に“重要な素材探しの旅”だよな?」
「ええ」
セレナは真顔で頷いた。
「だからこそ、無駄に疲れないのは良いことよ」
「その割に緊張感ねぇんだが」
「エンキドがいるからじゃない?」
「俺のせいかよ!」
そんなやり取りに、ウルガは小さく笑った。
――こうして並んで歩けるのも、悪くない。
やがて街道の先に、
高くそびえる城壁が見え始める。
「あれが……王都グランカノン」
セレナの声に、わずかに熱がこもった。
「でっかいね……」
ウルガは素直に感嘆する。
「さて」
エンキドは口元を吊り上げる。
「ここからが本番だ。覚悟しとけよ」
「みゃあ」
バステト様が、まるで同意するかのように一声鳴いた。
賑やかで、少しだけ気楽な旅路。
だがその先に待つのは交渉と、駆け引きと、そして――厄介な“人”だ。
王都は、もうすぐそこだった。




