第54話:バステト様は子供好き
第54話:バステト様は子供好き
平和なギルドの朝。
朝日が差し込むロビーのソファで、ウルガはだらしなく背中を預けていた。
その膝の上では、丸くなったバステト様が気持ちよさそうに寝息を立てている。
「……平和だな」
そう呟った直後、ギルドの扉が――
バンッ!!
勢いよく開いた。
「ウルガお兄ちゃーん!! あーそーぼー!!」
元気いっぱいの声、ミアだ。
その後ろには苦笑いのカイルと、控えめに手を振るノエルの姿。
「よぉ……みんな、今日も元気だな……」
ウルガは半分眠ったまま手を上げる。
「みゃあ〜……」
膝の上から、小さな欠伸。
それを聞いた瞬間だった。
「……え?」
ミアの動きが止まる。
「……ね、ね、ね……」
ゆっくりと、信じられないものを見るように指を伸ばし――
「ねこちゃんだーーー!!」
「ちょ、ミア待て!」
時すでに遅し。
ミアは両手をわなわな震わせながら、
獲物を狙う小動物のように忍び寄る。
「かわいい……かわいい……」
「みゃっ!?」
バステト様は飛び起き、ウルガの膝から一気に飛び降りた。
「逃げた!?」
「待ってー!!」
「にゃーっ!!」
ギルド内を縦横無尽に駆け回る黒猫。
それを全力で追いかけるミア。
「ウルガ兄ちゃん! ねこ捕まえていい!?」
「だ、駄目だ! 優しくしろ優しく!」
「ノエルも行く?」
「う、うん……」
結局、ソファの下、受付カウンターの裏、階段の手すり――
ギルドは即席の鬼ごっこ会場と化した。
その様子を見ながら、カイルがぽつり。
「……このギルド、ほんとに平和だな」
「だな……」
ウルガはため息混じりに笑う。
やがてバステト様はウルガの肩にひょいと飛び乗り、誇らしげに尻尾を揺らした。
「みゃ」
「……バステト様、わざと挑発してるでしょ」
子供たちの笑い声が、今日もギルドに響いていた。




