第53話:待ち人はリーナと猫(神)
第53話:待ち人はリーナと猫(神)
街の門をくぐった瞬間、三人は揃って息をついた。
石畳の感触と人の声そして慣れ親しんだ屋台の匂い。
「……帰ってきたな」 エンキドが肩を回す。
「まずはギルドに報告ね」 セレナが言うと、ウルガも自然と頷いた。
冒険者ギルドの扉を開いた瞬間。
「おかえりなさーーーい!!」
弾んだ声と同時に、リーナが身を乗り出してきた。
「皆さん無事ですか!? ケガは無いですか!?」
「皆さん見て下さい!!」
リーナは両手をぎゅっと握りしめ、満面の笑みで奥を指さす。
ギルド奥のクッション三段重ねの王座。
その中央で。
「ふぁ……」
バステト様はお腹を出し、毛並みは艶やか、首元には新しいリボン。
「見てください皆さん!!」 リーナが誇らしげに言う。
「お留守番中、ずっと一緒だったんですよ!」 「ご飯も特別メニューで!」 「ブラッシングもして!」 「さっきなんて膝の上で――」
「余は寝ておったぞ」 バステト様が当然のように言う。
「はい!とっっっても可愛かったです!!」
即答だった。
ウルガとセレナは顔を見合わせ、 エンキドは遠い目をする。
(……完全に主従逆転してないか?)
「……よくしてもらった」 バステト様は小さく喉を鳴らす。 「悪くなかったぞ」
リーナはその一言で昇天しかけた。
「き、聞きました!? 今!!」 「“悪くなかった”ですって!!」
報告を終え、ギルドを出る頃には夕暮れ。特別な戦いは終わり、特別じゃない日常が戻ってくる。
そしてギルドには――
今日も変わらず溺愛される一匹の猫がいる。
「……次はどこへ行くのじゃ」 バステト様が、欠伸混じりに呟いた。
日常は、何事もなかったように続いていく。




