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『我儘な玩具箱(トゥテソロ)と少年ハンター 〜才能ゼロと鑑定された俺が、代償を払って神具を使いこなすまで〜』  作者: フジサン デス


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第52話:それぞれの日常へ

第52話:それぞれの日常へ


ミスリル鉱山を背に、

それぞれの日常へ戻っていく。

山道を下る風は冷たく、だが不思議と心地よかった。

坑道の奥で起きた出来事を、誰も口にはしない。

けれど、確かに――何かが変わったという感覚だけが、全員の胸に残っている。

「いやぁ、今回の依頼は楽しかったな」

クロムが軽く肩を回しながら言った。

戦いの後とは思えないほど、声音は明るい。

「見てる側に回るのも、たまには悪くない」 「なあ、ガルバラ」

「がははは!」 「若い連中が前に出ると、血が騒ぐのを抑えるのが大変じゃったわ」

「抑えてたつもりなのか?」 メテロムが淡々と突っ込む。

「細かいことは気にするな」 ガルバラは豪快に笑った。

ウルガは三人に向き直り、深く頭を下げる。

「ありがとう皆んな」 「皆んなの立ち回り、すっごく勉強になったよ」

「素直だな」 クロムは目を細める。 「それだけで、飯が食える冒険者になれる」

「無理をしなかった」 メテロムが続けた。 「それでいて、引くところと踏み込むところを分けていた」 「それで十分さ」

それだけ言って、視線を逸らす。


やがて、街道の分岐点が見えてくる。

王都グランカノンへと続く道と、ウルガたちが戻る方向。

「じゃあな」 クロムは剣を軽く掲げた。 「次に会う時は、同じ依頼か……酒場だな」

「うん」 ウルガは頷く。 「その時は、今より胸を張って挨拶するよ」

「期待しとるぞ!」 「次は背中じゃなく、横に並んで戦おうじゃないか!」

ガルバラの声が、山に響いた。

「……生きていれば、また会う」 メテロムはそれだけ言い、背を向ける。

殲滅戦線の三人は、そのまま王都へと続く道を進んでいった。

やがて姿が小さくなり、完全に見えなくなる。

「……行ったな」 エンキドが息を吐く。

「ええ」 セレナが静かに応じる。 「強い人たちだった」

「強さだけじゃない」 ウルガは前を見たまま言った。 「カッコよかったよ…すごく」

三人は再び歩き出す。

もう振り返ることはしなかった。

ミスリル鉱山は、背後に静かに佇んでいる。だが、あの坑道で起きたことを語る必要はない。

それぞれが、それぞれの道へ戻るだけだ。冒険者の日常は、明日も何事もなかったように続いていく。

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