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『我儘な玩具箱(トゥテソロ)と少年ハンター 〜才能ゼロと鑑定された俺が、代償を払って神具を使いこなすまで〜』  作者: フジサン デス


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第30話:棺の中身

――ギ……ギ……。

遺跡深部。

青白い光を放っていた棺が、ついに完全に開いた。

中から現れたのは――

黒髪の、あまりにも美しい女だった。

肌は白く、夜を思わせる長い髪が背に流れ落ちている。

その存在は静かで、穏やかで、それでいて圧倒的だった。

「……女、神?」

誰かが呟いた。

その瞬間、三人の足が同時に震え、

思考より先に、身体が地に伏した。

理由は分からない。

ただ、逆らうという選択肢が“存在しなかった”。

彼女は一歩、棺から降りる。

わらわは――バステト」

低く、よく通る声だった。

「太陽神ラーの“目”として

 人の世を見守る者よ」

その名を聞いた瞬間、

ウルガの心臓が嫌な音を立てて跳ねた。

(……エジプト神話)

前世、地球。

確かに知っている名だ。

それが、

今、目の前に“いる”。

バステトは、跪く三人を一瞥し――

なぜか、一直線にウルガの前へと歩み寄った。

「……っ」

ウルガの喉が鳴る。

逃げられない。

見られている。

バステトは屈み、

そのまま――

優しく、頭を撫でた。

「……?」

温かい。

想像していた神の触れ方とは、あまりに違う。

「そう緊張するでない。我が子よ」

柔らかな声。

「妾はな、

 そなたを守るために

 こちらへ呼ばれたようじゃ」

ウルガは何も言えなかった。

知っている神であるが故に、

余計に現実感がなく、ただ硬直するしかない。

その様子を見て、バステトは小さく笑う。

「ふふ……」

次の瞬間。

彼女は軽やかに一歩踏み出し、

くるりと宙返りをした。

光が一瞬、弾け――

着地したそこにいたのは、

艶やかな黒毛の猫だった。

「……は?」

セレナが、完全に思考停止した声を出す。

「どうもこの世界はのう、

 妾の神力が馴染みにくいでな」

黒猫は尻尾を揺らしながら言った。

「この姿が一番楽じゃ」

そして、きっぱりと告げる。

「ウルガと、そのお供達よ」

黒猫の黄金の瞳が、三人を見回す。

「いつまでこんな場所に居るつもりじゃ?

 早う帰るぞ」

あまりにも軽い口調。

ついさっきまでの威厳は、どこへ行ったのか。

三人は――

ただ、啞然と立ち尽くしていた。

遺跡は静まり返り、

棺は役目を終えたかのように沈黙している。

世界の理に登録されていなかった“何か”は、

こうして――

猫の姿で、あっさりと歩き出したのだった。

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