第27話 遺跡の守護者
遺跡の入口を前に、ウルガは地図をひっくり返していた。
上下逆だと気付いたのは三回目だった。
「……おかしいな。入口、ここで合ってるはずなんだけど」
「合ってる合ってる。石がそれっぽい形してるだろ?」
エンキドが適当な石を指差す。
「それはただの瓦礫だ」
セレナは冷静に切り捨てた。
「いやいや、遺跡ってのは“直感”が大事なんだよ直感!」
そう言ってエンキドは入口付近の石柱に手をかけ――
ガゴン、と嫌な音が響いた。
一瞬の沈黙。
次の瞬間、地面がわずかに沈み込む。
「……エンキド?」
ウルガが引きつった笑顔で名前を呼ぶ。
「安心しろ、こういうのは――」
その言葉を遮るように、遺跡の奥から重い金属音が連続して鳴り響いた。
壁の奥で、何か巨大なものが“起動”する音。
空気が変わる。
冗談の入り込む余地が、一気に消えた。
セレナが槍を構える。
その目は、先程までの呆れたものではない。
「全員、下がって。
これは……遺跡の守護者」
床の紋様が淡く赤く発光し、通路の奥に影がいくつも浮かび上がる。
単体じゃない。連携型。
ウルガは喉を鳴らし、無意識にスキルの名を呼びかけかけて――止めた。
まだだ。頼り切る場面じゃない。
「……エンキド」
「ん?」
「二度と“直感”で触らないでください」
珍しく即答がなかった。
エンキドは薄く笑い、肩をすくめる。
「悪い悪い。
どうやら本物の歓迎みたいだな」
遺跡の扉が、背後で静かに閉じた。
――逃げ道は、もうない。




