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『我儘な玩具箱(トゥテソロ)と少年ハンター 〜才能ゼロと鑑定された俺が、代償を払って神具を使いこなすまで〜』  作者: フジサン デス


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第9話 森の外縁、薬草と約束

ウルガが初めて受けたクエストは薬草の採取だった。


と言うよりも…リーナが心配して討伐クエストを認めてくれなかったのだ。


「まあ仕方ないよな‥」

ポリポリと困ったように頭をかきながら街の外へ向かう。


森の外縁は、思っていたよりも静かだった。

街に近いためか魔物の気配は薄く、踏み慣らされた地面が続いている。


「ここなら……あるな」


ウルガは腰を落とし、目的の薬草を探した。

赤みを帯びた細い葉。回復薬の材料になる、基本的な薬草だ。


だがすぐに、別の気配に気づく。


少し離れた場所で、子供たちが夢中になって地面を探っていた。

継ぎはぎだらけの服。擦り切れた靴。


「……スラムの子供か」


邪魔をする気はない。

ウルガは距離を取り、黙々と採取を続けた。


しかし――。


「ねえ、それ何?」 「お兄ちゃんも薬草?」


気づけば、煤けた顔の子供がこちらを覗き込んでいた。


「回復用の草だよ」


「やっぱり!」 「すげー!」


あっという間に数人が集まってくる。

一番年上らしい少年が胸を張った。


「俺、カイル。こっちはミアとノエル!」


ノエルは一番小さく、ウルガの袖をぎゅっと掴む。


「お兄ちゃん、これも?」


「……ああ、それもだ」


お兄ちゃん。

その呼び方に、ウルガは一瞬だけ言葉を失った。


末っ子だった自分が、誰かにそう呼ばれる。

胸の奥が、少しだけくすぐったい。


「よし、じゃあ競争だ。誰が一番多く見つけられるか」


「ほんと!?」 「負けない!」


ただの採取が、いつの間にか遊びになっていた。


やがて日が傾き、森に影が伸びる。


「そろそろ帰るぞ」


そう言った瞬間だった。


――ガサッ。


茂みが大きく揺れ、低い唸り声が響く。


赤い体毛を持つ大型の狼。

レッドウルフ。


「逃げろ!」


だが――。


「あっ!」


ノエルが蔓に足を取られて転んだ。

必死にもがく小さな体。


レッドウルフが、獲物を定めたように視線を向ける。


まずい。

今の自分では、剣だけじゃ勝てない。


迷っている時間は、ない。


ウルガは一歩前に出て、歯を食いしばった。


「……来いっ!」


胸の奥から、何かを引きずり出す感覚。


「我儘な玩具箱トゥテソロ!」


空間が、軋む。

見えない亜空間が開き、“最適解”が選び取られる。


魔力が、一気に削られた。

喉が焼けるように熱い。


次の瞬間、ウルガの手に現れたのは、青白い光を帯びた短槍だった。


――『ペリオンの槍』。


ギリシャ神話において、英雄アキレウスの父ペレウスに授けられた武具。

不死身を討った一撃の象徴。

「必ず急所に届く」と語られる、運命を貫く神具。


「……これなら、止められる」


レッドウルフが跳ぶ。


ウルガは正面から踏み込み、体重を乗せて突き出した。


一閃。


青白い光が一直線に走り、赤い巨体が地面に叩き伏せられる。

断末魔すら、上がらなかった。


静寂。


「……お兄ちゃん?」


ノエルの声で、ウルガは我に返る。


ペリオンの槍は淡く光り、役目を終えたかのように亜空間へと還っていった。


膝が、がくりと折れる。


「だ、大丈夫!?」 「すげえ……」


子供たちが駆け寄ってくる。

ウルガは息を整え、無理やり笑った。


「ほら、怪我はないか?」


「うん!」


その答えを聞いて、ようやく胸をなで下ろす。


――力には、代償がいる。

それでも。


「また来るよ」


「約束だよ、お兄ちゃん!」


その声を背に、ウルガは森を後にした。

少しの照れ臭さと誇らしさを胸に抱いて

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