――第5章・ダンジョンの試練――
――東京・カイタンシャ本部。
橘ハヤテは椅子にもたれ、腕時計を一瞥した。
「二十時間が消えた、か。残り四時間」
綾瀬マリンがいくつもの紙束を抱えてきて、机の上にドサッと置く。
「苦情一覧です、サー」
ハヤテはうんざりした顔で上体を起こした。
「今度は何だ」
「今年の〈ディビジョン・レイド・トーナメント〉の要望対応です。準備が滞ってます」
「使い捨て要員に回せ。私は手が離せない」
「了解しました」
立ち去りかけて、マリンはふと足を止める。
「正直に言えば――またニュガワさんを巻き込むのは、大きな間違いだと思います」
「理由は?」
マリンは目を閉じた。
「大いなる力って、ときに呪いにもなりますから」
それだけ言い残し、部屋を出ていった。
「ふん。まだ引きずってるか」ハヤテは小さく笑う。
「まあいい。ニュガワの残り時間は少ない。伝説のカイタンシャが、どこまで追い上げられるか見ものだな」
彼はモニターに沖縄ダンジョンの映像を呼び出す。
画面には、第四階へと踏み込もうとするオマリロ一行の姿が映っていた。
――沖縄ダンジョン・第四階。
階を踏み出した瞬間、ザリアの目がぱちりと開いた。
「うぅ……みんな……ここ、もうクリアした?」
「ザリア!」リカが飛びつく。「よかった、生きてた! 完全に死んだかと思ったから!」
「感覚的には一回死んだね……」ザリアは頭を押さえる。「で、今何階?」
「第四階だよ」ハンが答える。「俺たち“超優秀なパーティー”が、あのキモストーカー共をきっちり片付けておきました」
ザリアは立ち上がった。
「感謝。夢の中で、とんでもないもん見せられたわ……」
「どんな?」
「掘り返されたくない思い出。……今はパス。ニュガワさんは?」
「前の方」
オマリロはすでにフロアの分析に入っていた。
真っ白な部屋。その中央に、ひとつだけコンソール端末が据えられている。
「ふむ」
ザリアはふらつきながらオマリロに近づく。
「ニュガワさん、ひとつ聞いてもいいですか」
「言え、少女」
ザリアは一度深呼吸した。
「“ジュゲン堕落”っていう系統……何かご存じですか?」
オマリロの動きが止まる。
その声色は、先ほどよりも硬かった。
「危険。禁忌。理由がなければ、口にするな。……理由は」
「ママとお姉ちゃんに、ちょっとあって。それで……知ってることがあればって」
オマリロはザリアの方を向いた。
「今はない。答えはここにない。まずダンジョン踏破。それから探せ」
「……はい、サー」
そこへリカとハンが追いついた瞬間、部屋が反応し、端末が光を放つ。
〈規則:パーティメンバー全員、試験に参加せよ〉
「試験?」ハンが目を輝かせる。「得意分野ですね! 数学? 理科? 量子物理?」
「今すぐ落第したいんだけど」リカがうめく。
〈パーティメンバー1名目を選出:竹野ザリア。端末に手を当てろ〉
ザリアは一瞬だけ仲間の顔を見たが、オマリロが軽くうなずく。
「行け」
「テストは好きじゃないけど……まあ、やるしかないか」
ザリアは端末に近づき、掌をハンドスキャナーに当てた。
〈確認。レベル:55。クラス:ジュゲン闘士――戦闘クラス。対戦相手を選定中〉
「対戦相手?」
〈決定。レベル55・ドメインボス:風の一族の闘主・ヨシヒロ。目標:一分三十秒以内に撃破せよ〉
足元の床が開き、重厚な鎧をまとった侍が、正座の姿勢で姿を現す。
片手は刀の柄に置かれたままだ。
「バトル系テストね」ザリアはにやりと笑う。「上等」
〈タイマー:1:30 開始〉
ヨシヒロが立ち上がると同時に、嵐のような風が全身から吹き荒れる。
「小娘一人。刃の糧に丁度よい」
ザリアは槍を呼び出し、構えを取る。
「その身長でそのセリフ? 面白いじゃん」
ザリアとヨシヒロの周囲にバリアが展開し、オマリロたちは締め出された。
「ちょっ、こっち締め出された!」リカが焦る。
「全員試験って言ってたからね」ハンが肩をすくめる。
「集中しろ」オマリロが言う。「一瞬の迷いが死」
「了解、サー!」
ヨシヒロは一歩踏み出し、空を斬った。
斬撃と同時に、冷気を帯びた風がザリアに襲いかかる。
〈ドメイン効果:極寒の風。すべての斬撃が、氷点下の突風を発生させる〉
「はいはい、最高にツイてない」ザリアが毒づく。
侍は再び斬りかかり、ザリアの首を狙う。
ザリアは身を沈めてかわし、逆に槍を突き出し、そのまま伸ばしてヨシヒロの鎧を貫いた。
〈ボスHP:100%→89%〉
「今回はちゃんとダメージ通ってる!」
ヨシヒロは首を鳴らす。
「当てられたときだけ、だがな」
彼は剣を振り下ろし、激しい風の衝撃が床を揺らす。
ザリアはかわしきった――が、足もとを風にすくわれて転倒した。
「立って、ザリア!」リカが叫ぶ。「コケたまま終われる相手じゃないでしょ!」
「さっさと倒して、次は俺の番にしてくれ!」ハンも声を張る。
ヨシヒロは大きく跳躍し、ザリアのいた場所めがけて刀を突き立てる。
ザリアはロールしてギリギリで回避した。
「身のこなしはよい」ヨシヒロが評する。「ただし、粗い」
ザリアは地面を蹴って立ち上がり、槍をくるりと回してから、側面を思いきり打ち据えた。
〈ボスHP:89%→72%〉
「その調子!」リカが手を叩く。
オマリロは黙って見つめていた。
二人は互いに距離を取り、じりじりと回り込む。
ヨシヒロが刀を突きつけ、ザリアも槍の穂先を向け返した。
「それって“居合いスタイル”ってやつ?」ザリアが軽口を叩いた瞬間――
ヨシヒロは一瞬で間合いを詰め、槍をはじき飛ばし、顔面に蹴りを叩き込んだ。
「ちょっ、待っ――反則!」
「集中せよ」オマリロが低く言う。「頭空にしろ。打ち込め」
「ラジャー!」
ザリアは転がりながら槍を拾い、迫る風をスライディングでかわし、そのままヨシヒロの足を払う。
〈ボスHP:72%→55%。フェイズ2へ移行〉
ヨシヒロは部屋の中央へ瞬間移動し、周囲に暴風の渦をまとった。
〈ドメイン効果:暴風竜巻。二秒ごとに竜巻を発生させる。残りタイマー:0:45〉
「竜巻って、具体的にどのレベルの……」
〈開始〉
ヨシヒロの刀から巨大な竜巻が生まれ、弾丸のような速度で壁に当たり、跳ね返りながらザリアを吹き飛ばした。
「はい、めっちゃデカいやつ〜!」
「落ち着け」オマリロが言う。「近づくな。距離を使え」
「距離?」ザリアは叫ぶ。「どういう――」
二つ目の竜巻が発生し、風速が一気に上がる。
体が持っていかれそうになりながら、ザリアは踏ん張った。
「風を使え」オマリロが命じる。「投げろ」
ヨシヒロは自らも回転し、巨大な竜巻を発生させながら、ザリアを追い立てる。
ザリアは部屋の反対側まで走りながら、心の中で考えた。
(投げろ、って何を?)
自分の手の中――槍を見て、ようやく気づく。
「あ、うちアホすぎじゃない?」
次々と竜巻が生まれる中、ザリアは目を細め、風の流れを読む。
「隙が必要。こんだけ風が暴れてたら、軌道がバレバレ……いや、逆に――」
「もう諦めたか?」ヨシヒロが問う。
ザリアはひとつの竜巻めがけて槍を投げ込む。
槍は竜巻に飲み込まれ、その回転に乗って軌道を変え、そのままヨシヒロの兜を直撃した。
「よっしゃ、直撃! 食らえ、サムライ!」
〈ボスHP:55%→32%〉
「あと数発ってとこだね」
ヨシヒロは風の衝撃波を放ち、ザリアを壁に叩きつけ、槍は遠くへ弾き飛ばされた。
「生意気なガキが」
さらに生まれた竜巻のひとつが、ザリアの槍を巻き上げる。
ヨシヒロはザリアの首をわしづかみにした。
「終わりだ」
ザリアは、竜巻の中を回る槍を横目で捉え、歯を食いしばる。
「まだ」
彼女は脚で槍を蹴り上げ、自分の手元に呼び戻すと、そのままヨシヒロの胸を一気に貫いた。
〈クリティカル! ボスHP:32%→0%〉
ヨシヒロは叫び声とともに膝をつき、風の爆発となって消し飛んだ。
〈タイマー:0:02。チャレンジ達成〉
バリアが解け、ハンとリカが駆け寄る。
「ナイス!」リカが抱きつく。「あの侍、ズタズタだったね!」
「風のパターンをもっと早く読めてたら、数秒短縮できたけどね」ハンが冷静に分析する。「まあ、十分」
「はいはい、ありがとさん」
ザリアはオマリロの前まで歩いていく。
「フォローありがとうございます、ニュガワさん」
オマリロは手を伸ばし、彼女の肩をぐっとつかんだ。
「油断、大怪我。頭澄ませ。戦い、もっと研ぎ澄ませ」
「はい……すんません」
〈パーティメンバー2名目を選出:ハン・ジス。端末に手を当てろ〉
ハンはニヤリと笑い、端末へ向かう。
「じゃ、俺のターン」
手を当てると、すぐに表示が変わる。
〈確認。レベル:53。クラス:ジュゲン後備者――拘束クラス。対戦相手を選定中〉
「さあ、どんなお題かな」
〈決定。レベル52・ドメインボス:北嵐のオオカミ。目標:二分三十秒以内に、北嵐のオオカミを“捕獲”せよ〉
「捕獲ね。了解」
〈開始〉
視界が揺らぎ、部屋は山岳地帯に変わる。
同時にバリアが展開し、ハンは一人きりに。
頂上には巨大な狼が立ち、角笛のような遠吠えをあげた。
「見た目はただのデカい犬」ハンはキューブを構える。「スキャン!」
[解決策を五件検出。最適解を選択:スティールケージ召喚]
キューブは狼の頭上に巨大な鉄格子を形成する――が、狼はふっと身体を透過させ、そのまま檻をすり抜け、ハンに飛びかかってきた。
「いや、ありえない! 全パターン計算したはずだろ!」
〈ドメイン効果:狼の秘奥。三秒ごとにフェイズシフトを一回使用可能。発動中、北嵐のオオカミは非実体化する〉
「先に言ってくれません!?」
狼は山肌を駆け回り、ハンの目では追いきれないほどの速度で動き回る。
罠を仕掛けても、フェイズシフトで抜けられてしまう。
〈タイマー:1:01〉
「さっさと捕まえちゃいなさい、ハン!」ザリアが叫ぶ。
「そうだよ、ただのモフモフ狼じゃん!」リカも煽る。「ネットでも撃ちなよ!」
「撃ってるっての!」ハンは叫び返す。「こいつ、機動力オバケなんだよ!」
狼は再度飛びかかり、ハンを押し倒した。
「頭、使え」オマリロの声が響く。「キューブは道具。本体はお前」
狼の牙をかわしながら、ハンは転がって距離を取る。
「それ、めっちゃ抽象的なんですけど、もう一声いただけます!?」
「頭。使え。以上」
〈タイマー:0:30〉
「あと三十秒……」ハンは歯を食いしばる。「キューブに頼るな、ってことは――俺自身が仕掛ける」
ひらめきが走る。
「そうか」
ハンは再びキューブを展開し、狼が高台へ跳び退くのを見届ける。
〈タイマー:0:15〉
「実験したことはないけど……やるしかない」
北嵐のオオカミが飛びかかろうと身構える中、ハンは小声で命じた。
「キューブ。《レーザーネット・トラップ》セット」
キューブは音もなく消えた。
「ハン?」リカが呟く。「何したの?」
キューブが消えた直後、狼がフェイズシフトしながら突撃してきて、ハンを弾き飛ばす――が、その瞬間、足元からネットが弾けるように展開し、二体まとめて包み込んだ。
〈タイマー:0:00。チャレンジ達成〉
「よし、狼ゲット」ハンが勝ち誇る。「ついでに俺も捕まってるけど、勝ちは勝ち」
バリアが消える。
「頭は悪くないじゃん」ザリアが感心する。「さすが理系」
「はいはい、褒めてくれてありがとう。で、誰かほどいてくれる?」
北嵐のオオカミは霧のように消え、ネットだけが残った。
リカとザリアは互いに目を合わせる。
「どっちが行く?」
「やだよ。狼とハンの混合の匂いしそう」
オマリロは一歩で近づき、さっさとネットを解除した。
「助かりました、ニュガワさん」
ハンは元の位置へ戻る。
「……で、お二人さんはノーサンキューね」
二人は生返事だけ返した。
〈パーティメンバー3名目を選出:天川リカ。端末に手を当てろ〉
リカは大きく息を吸い込む。
「よし、それじゃ、行ってくる」
掌を端末に当てる。
〈確認。レベル:51。クラス:ジュゲン回生者――ヒーラークラス。対戦相手を選定中〉
「かましてこい、リカ」ザリアが親指を立てる。
〈決定。レベル51・ドメインボス:コッコンの死神。目標:トーテムシギルを三分間、守り抜け〉
「シギル……?」
バリアが展開し、視界が墓地へと変わる。
「雰囲気最悪なんだけど……」リカは身震いした。
「大丈夫っしょ」ザリアが言う。「幽霊なんて出ないって」
「そんなの分かんないでしょ!」
リカの背後に、大きなトーテムが出現する。
同時に、ひとつの墓から影が立ち上がり、手には黒い大鎌を握っていた。
〈開始〉
「なんであたしだけ“死神様”担当なの……?」リカは泣きそうな声を出す。
コッコンは鎌を振りかぶり、リカは慌ててしゃがみ込む。
背後のトーテムシギルが直撃を受けた。
〈シギルHP:100%→75%〉
「やばっ!」
「落ち着け」オマリロが言う。「恐怖を切れ。恐怖はお前を弱くする」
「ムリです! サーみたいな前衛じゃないんで!」
「前衛じゃない。守り手だ」
「え……?」
「シギルを守れ。お前のシギルで」
「でもさっき、“温存”って――」
「今が使いどき。価値、証明しろ」
リカのポケットから、自分のシギルがふわりと浮かび上がり、光り始める。
「本当にいいんですね?」
「いい。守れ」
リカはシギルを握りしめる。
「分かりました。言う通りにしてみます」
〈シギル能力:偏向。どんな攻撃力でも、一撃だけ無効化する。残りチャージ:2〉
「二回までね……」リカはつぶやく。「無駄撃ちはできない」
〈タイマー:2:25〉
コッコンが再び斬りかかる。
リカは逃げず、腕を上げて正面から受け止めた。
ザシュッ。
〈残りチャージ:1〉
コッコンの身体が弾き飛ばされ、墓石に叩きつけられる。
「やった!」リカは笑う。「見たか、死神!」
「リカが強気になってる……?」ハンが驚く。「確率的には隕石直撃レベルなんだけど」
「聞こえてるからね!?」
コッコンは立ち上がり、耳をつんざくような絶叫をあげる。
リカは耳を塞ぐ。
背後の巨大トーテムに亀裂が走った。
〈シギルHP:75%→50%〉
「集中、リカ」彼女は自分に言い聞かせる。「ニュガワさんの言葉、思い出して。しっかり、怖がらない」
コッコンが静かに漂ってくるのに合わせて、リカも前へ出る。
「下がって」
「愚かな娘よ」コッコンが囁く。「戦場を知らぬくせに」
「関係ない」リカは言い返す。「“このシギルを守れ”って言われた。それだけで十分」
手は少し震えていたが、深く息を吐いて、その震えを押さえ込んだ。
「震えているな。恐怖している」
「してるよ。でも、関係ないって言ってるでしょ!」
死神の斬撃が再びリカを弾き飛ばす。
〈残りチャージ:0〉
「もう防げない……」リカは立ち上がる。「どうしよう」
「気を抜くな、リカ!」ザリアが叫ぶ。
オマリロは、短くひとことだけ告げた。
「お前はヒーラー。忘れるな」
コッコンは鎌の刃を地面に引きずりながら、トーテムシギルへと歩み寄る。
そして、勢いよく斬りつけた。
〈シギルHP:50%→25%〉
「終わりだ」死神が言う。
リカはふらつきながらも立ち上がった。
「そうだよ、あたしはヒーラー」
考えるより先に、トーテムへ手を伸ばす。
「ジュゲン回生者:禁忌再生!」
〈シギルHP:25%→100%〉
「何をした……?」コッコンが目を見開く。
「シギルを治しました」リカは息を荒げながら言う。「その代わり、あたしの寿命を二年分、削って」
「自分の死期を早めてまで?」
「チームを守れるなら、何度でもやるよ」
「もっと削れっていうなら、いくらでも削ってやる」
死神はリカを横へ弾き飛ばし、再びトーテムを殴りつけた。
〈シギルHP:100%→10%〉
「まだよ!」
リカは膝をつきながらも、再度シギルに触れる。
そのたびに、体の奥から何かがごっそり抜けていく感覚がした。
〈シギルHP:10%→100%〉
「無茶するな、リカ!」ハンが叫ぶ。「そのペースだと、80歳が40歳コースだぞ!」
「あとで悩む!」
〈タイマー:0:30〉
「ならば、今ここで寿命ごと刈り取ろう」
コッコンは瞬きする間もなく距離を詰め、右脚、左腕、そして両目を一閃で斬り飛ばした。
「っつ……!」
リカは悲鳴を噛み殺し、残った手を自分の胸元へ当てる。
「これでまた一年分……でも、それは未来のリカに任せる」
暗いエネルギーが彼女の体を駆け巡り、失われた四肢と視力を無理やり再構築する。
その代償に、全身から力が抜けていった。
〈タイマー:0:05〉
コッコンは大鎌にさらに闇を纏わせる。
「終わりだ――」
振り下ろされる刃を、リカは両手でつかみ、その動きをわずかに止めた。
〈タイマー:0:00〉
「いや――まだ終わらせない!」
〈チャレンジ達成〉
コッコンの姿はふっとかき消える。
バリアが解け、リカはその場に崩れ落ちる――が、オマリロが素早く抱きとめ、すぐにザリアとハンも駆け寄る。
「リカ、今のはマジでヤバい! 無茶! バカ! でも……最高だった!」ザリアがまくし立てる。「ちょっとあたしに似てきて怖いんだけど!」
「もうああいうのはやめろ」ハンは眉をひそめる。「寿命の削りすぎは、マジで洒落にならないから」
「分かってるってば……」リカはぐったりしながら笑う。「ニュガワさん、少しは……褒めてもらえました?」
オマリロはしばらく黙ってリカを見下ろし、やがて短く言った。
「よくやった」
「……ありがとうございます」
彼はリカをハンとザリアに預ける。
「少女、支えろ。私は行く」
〈パーティメンバー4名目を選出:オマリロ・ニュガワ。端末に手を当てろ〉
オマリロはゆっくりと端末へ歩み寄り、掌を押し当てた。
〈確認。レベル:99,999。クラス:オール。エラー、エラー……〉
部屋の光が真っ赤に染まる。
〈データ不整合。計測不能〉
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