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――第16章・雷鳴墜つ――

――沖縄ダンジョン・最終階。


 稲妻のような速度で、老人と竜は激しくぶつかり合っていた。

 なお生き残っていた竜たちは、その余波に耐えきれず、じりじりと後退する。


「滅びろ!」


 ライゼンの大剣が弾丸のように振り抜かれ、オマリロの頭めがけて飛ぶ。


「ジュゲン操運者ソウンシャ呪速移動カースド・ムーヴメント


 オマリロの姿がふっと掻き消え、次の瞬間にはライゼンの頭上に現れていた。


「その歳で、まだその速度か」ライゼンが言う。「いつまで持つ?」


 雷をまとった爪がオマリロを掴もうと伸びるが、オマリロは弓を構え、矢でその爪を吹き飛ばした。


〈ボスHP:1,500%→1,200%〉


 ライゼンは腕を突き出し、失われた爪を再生させる。


〈ボスHP:1,200%→1,500%〉


「続けるぞ」


 稲妻のごとき速さで、ライゼンがオマリロの隣へ現れる。大きく口を開き、口腔から雷の奔流をぶちまけた。


 ドゴォン。


 爆雷がオマリロを直撃し、彼の身体を地面へ叩きつける。

 衝撃と熱で全身を焼かれ、服は焼け爛れてぼろぼろになった。


「……臭い。服、終わった」


 オマリロがぼそりと呟く。


 ライゼンはふわりと降り立ち、オマリロの前に着地した。


「あの一撃は、人間なら千回は殺せる威力だ」竜王は言う。「それなのに、なぜ立っていられる?」


 オマリロは破けた上衣をびりっと引き裂き、やせ細った上半身を晒す。

 ライゼンは目を細める。その身体に残る傷が、ゆっくりと再生していくのが見えた。


「……そういうことか」ライゼンが悟ったように呟く。「お前、簡単には死なん。七つのクラスをすべて持ちながら、回生者だけは一度も使ってこなかった……」

「つまりそれは、常時発動の能力――違うか?」


 オマリロは地に落ちていた杖を拾い上げた。


「竜、物わかり良い」


 ライゼンはくつくつと笑う。


「だが、お前も所詮は人の身。歳はごまかせん」

「いずれ肉体は朽ちる。ここでお前を引き裂いた後、あの小僧どももまとめて殺してやろう」


 オマリロの瞳がギラリと光る。


「竜、やれるものなら、やってみろ」


 白髪が逆立ち、空気が震えた。


「ジュゲン回生者カイセイシャ呪不死カースド・イモータリティ


 オマリロの肉体はさらに老いさらばえたように見え、その変化にライゼンが目を見開く。


「……何をした?」


 次の瞬間、さきほどまでを上回る速度でオマリロが踏み込み、杖の一撃でライゼンを空へ吹き飛ばした。


 ドゴォン。


 ライゼンは遠くの神殿へ叩き込まれ、石造りの建造物を粉々に砕く。

 オマリロはすぐさま上空から降下し、今度は刀を構えて地に降り立つ。


 ライゼンが放った衝撃波が神殿の残骸を巻き上げ、瓦礫が宙に浮かび上がる。


「何をした、ニュガワ……?」


 オマリロの身体が鎧に覆われていく。


「回生者は〈誓約〉を打ち消す。身体は老いる。だが――力は増す」


 ライゼンの翼が大きく羽ばたいた。


「見事だ、老人。だが叡智でダンジョンに勝てると思うな」


〈規則:死ね〉


 真上から巨大な雷が落ち、オマリロの姿を完全に呑み込む。

 そこに残ったのは、黒い灰の山だけだった。


「さらばだ、オマリロ・ニュガワ」


 ライゼンは月光の差し込むトラップドアの方へと向き直る。


「さて、今度は小僧どもの番だ」


 竜王の拳がトラップドアの周囲の地面を粉砕する。


「月は、再び檻に戻る」


 足を一歩、内部へ踏み入れようとしたその時――尻尾に何かが引っかかる感覚が走った。


「……ん?」


「悪い竜だ」


 ライゼンが振り返ると、そこには灰の山のはずのオマリロが、何事もなかったかのように立っていた。


「な――何だと?」


 オマリロは尻尾を掴んだまま、ライゼンの巨体をぶん回し、周囲のビル群へ次々と叩きつける。

 最後に勢いよく放り投げると、ライゼンは数度瞬きをして信じられないように叫んだ。


「たしかに焼き尽くした……灰になるのを見たはずだ! 規則は絶対のはず!」


「規則は“逆らう”ものではない」オマリロが淡々と告げる。「“ぶち破る”ものだ。……次は竜の番」


 ライゼンは腕を振るい、残っていた竜たちを自分のもとへ集める。


「ならば見せてみろ」

「子らよ、融合せよ!」


 竜たちは次々とライゼンの身体へ吸い込まれていき、赤い光が溢れ出す。

 その光の中で、ライゼンの姿はさらに巨大に、さらに異形へと変貌していった。


 そこに立っていたのは、もはや“ライゼン”と呼んでよいのか分からぬ存在だった。

 黒と深紅に染まった巨竜。三つの頭、六枚の翼、八本の腕。全身を鎧が覆い、両手には超巨大な大剣が握られている。


〈規則:雷鳴ダンジョンの皇竜神コウリュウシン――ライゼンを倒せ〉


〈ボスHP:1,500%→20,000%〉


 ライゼンは大地を揺らしながら身を屈め、低く、底冷えする声で告げる。


「祝福してやろう、人間」

「お前は、皇竜神の“怒り”を受ける資格を得た」


〈ドメイン効果:〈オースキーパー〉・クリムゾンレイン。説明:10秒ごとに〈クリムゾン・サンダー〉を発動し、“フューリアス・ドラゴンズベイン”を召喚。彼らの攻撃は追加で20,000%のダメージを与える〉


「もう手加減はしない、オマリロ・ニュガワ。ジ・エンドレスが見ている」


 言い終えるより早く、ライゼンの大剣が振り下ろされる。

 オマリロは瞬間移動で刃をすり抜け、矢の雨を皇竜神へ撃ち込んだ。


〈ボスHP:20,000%→15,000%〉


 ライゼンは愉快そうに笑う。


「それでこそだ」


〈〈フューリアス・ドラゴンズベイン〉発動〉


 荒れ狂う雷光から、二体の巨大な竜の構造体が現れ、オマリロめがけて急降下する。


「ジュゲン滅者メツシャ:オブリタレイト!」


 オマリロが手を打ち鳴らした瞬間、二体の竜は音もなく消滅した。

 だがライゼンはすかさず蹴りを叩き込み、オマリロの身体を空へ吹き飛ばす。


 ドゴォン、ドゴォン、ドゴォン――。


 ライゼンの攻撃は、先ほどまでとは比べものにならないほど荒々しく、重く、速い。

 オマリロは紙一重で避け、受け、いなし続ける。


「我が子らよ!」ライゼンが咆哮する。「力を貸せ! 父は決して敗れぬ!」


 その呼びかけに応じるように、さらに多くの〈フューリアス・ドラゴンズベイン〉が形成され、紅い雷でオマリロを焼こうとする。


「ジュゲン闘士トウシ聖刃乱撃セイジン・ランゲキ!」


 オマリロの周囲に無数の黄金の刃が形成され、紅雷とぶつかり合い、雷鳴と光の大爆発を引き起こす。


「消え失せろ」


 ライゼンが再び肉薄し、斬撃を浴びせようとするが、オマリロは地面に着地すると、そのまま全力疾走を始めた。

 ライゼンも地へ降り立ち、背後から雷を吐きながら追いかける。


「ジュゲン後備者コウビシャ禁忌牢獄フォービドゥン・プリズン!」


 オマリロの展開した封印が、後方から迫る雷を丸ごと呑み込み、消し去る。

 それでもライゼンは斬撃の雨を浴びせ続け、オマリロは走りながらこれを捌いていく。


(この男……)ライゼンは内心で唸る。(こんなにも老い、こんなにも脆く見えるのに。いったいどれほどの戦いを潜ってきた……)

(これはもはや、人の域ではない)


 ライゼンはさらに刃を増やしながら追走する。


「……怪物だ」


 また一撃が振り下ろされるが、オマリロは腕でそれを受け、刃は鋼に弾かれたかのように跳ね返った。


 オマリロは角を曲がり、ライゼンがすぐさまその後を追う。

 皇竜神が紅い雷の奔流を放つが、オマリロはその合間を縫うように転移する。


「なぜ逃げる、人間!」ライゼンが怒鳴る。「正面から立って死ね!」


 オマリロは後ろをちらりと振り返り、次の瞬間にはライゼンの頭上へ転移していた。

 そして、その頭を掴んで地面に叩きつけ、そのまま引きずるようにして突っ走る。


〈ボスHP:15,000%→13,500%〉


 そこへ〈フューリアス・ドラゴンズベイン〉の一体が突っ込み、オマリロの腕を奪い去る。


「追い詰めたぞ」ライゼンが宣告する。「ここが貴様と私の、最終決戦の場だ」


 オマリロの腕はすぐに再生し、彼は腰をさする。


「腰、限界。さっさと終わらせる」


「安心しろ」ライゼンが嗤う。「腰だけでは済まさん。身体ごと灰にしてやろう。遺言は?」


 オマリロは背骨をボキボキと鳴らし、刀をライゼンへ向けて突きつける。


「竜、目が悪い」


「……何?」


 ライゼンが顔をしかめ、ゆっくりと振り返った瞬間――

 月光の一撃が真正面から顔面を撃ち抜いた。


〈ボスHP:13,500%→12,000%〉


「へへっ! ど真ん中、命中!」


 オマリロが目を向けると、月光を纏った裸足の少女がふわりと降り立つところだった。

 その背後には、ハン、リカ、ザリアの三人が控えている。


「師匠!」ザリアが叫ぶ。「戻りました!」


「援軍、連れてきました!」ハンが続ける。


「しかも、たぶん幽霊!」リカが言う。


 ハンとザリアが同時に振り返る。


「は?」


 レイはぴょんぴょんとスキップしながらオマリロに駆け寄り、その腕を掴んでじっと観察する。


「あなたが最強? すっごい! ちっちゃい! しわしわ! でも超カッコいい!」


「少女、ベタベタ触るな」オマリロは淡々と言う。「鬱陶しい」


 彼がふっと転移すると、レイはその場でズルッと転び、床を転げ回った。


「いったぁ……でもサイコー!」


 子どもたちが合流する頃には、ライゼンも体勢を立て直し、怒りに満ちた視線をレイへ向けていた。


「レイ……」


 レイはくるっと振り向き、ひらひらと手を振りながら鼻歌まじりに言う。


「やっほー、ライゼン! ついに自由の身だよ!」


「檻に戻れ」


 レイは指を左右に振ってニヤリと笑う。


「やーだ。ノー。絶対。ムリ」


 ライゼンの爪が伸びる。


「愚かな小娘。二度は言わん」


「おお、やる? 殴り合い?」レイは両拳を構え、ぴょんぴょん跳ねる。「じゃ、私から!」


 パーティ全員が若干引いた目で彼女を見る。


「変な人だな……」ハンが小声で。


「だね……」ザリアも同意する。


「裸足だし……」リカが付け加えた。


 ライゼンは口を大きく開く。


「まずは貴様から始末してやる」


 口腔から稲妻が放たれるが、レイは手のひらを突き出し、不敵な笑みを浮かべる。


「ジュゲン魔法士マホウシ:月の明幻華ツキノ・メゲンカ!」


 手のひらから放たれた月光のビームが雷を押し返し、そのままライゼンの胸を撃ち抜いた。


〈エラー:〈オースキーパー〉との接続が切断されました〉


「よっしゃ!」ザリアが拳を握る。「やっちゃえ、お姉さん!」


 ライゼンは大剣の一本を地面に突き立てた。


「主に背くか、レイ……首を刎ねて檻に吊るしてやろう」


 彼はもう片方の大剣を投げつけるが、レイは笑いながらステップを踏む。


「ジュゲン魔法士:無尽の夜の三日月ムジンノ・ヨルノ・ミカヅキ!」


 宙に巨大な三日月の紋章が現れ、その一振りで飛来した大剣をはじき返した。

 ライゼンが咆哮し、空から凄まじい量の雷を降らせるが、レイは指を二本立てる。


「ジュゲン魔法士:月光の護光ゲッコウ・ノ・ゴコウ!」


 月光の防壁がパーティ全員を包み込み、雷撃を完全に遮断した。

 オマリロは周囲を一瞥してから、再びレイへ目を向ける。


「少女、かなり強い」


 レイは顔を赤くして足先で床をつんつんと突く。


「えへ……ありがと」


 ライゼンは雷刃でシールドを斬り裂くが、その刃をオマリロが受け止める。


「竜、弱った。ここからは――墜ちる番だ」


 ライゼンの翼が広がり、雷の鎖が発生。

 パーティ全員を拘束しようとするが、オマリロはザリアの腕を掴んで彼女だけを外へ引きずり出した。


「その程度の鎖がなくとも、お前たちを塵にできる。買いかぶりすぎるな」


「どうします、師匠?」ザリアが訊く。


「背中に乗れ」


「……え? い、今なんて?」


「背中に乗れ。竜を斬る」


 ザリアの顔が一瞬で真っ赤になり、次の瞬間ぱっと笑顔が弾ける。


「は、はい!」


 躊躇なくオマリロの背中へ飛び乗ると、ライゼンは鼻で笑った。


「滑稽だな」


 ザリアは槍を呼び出しながら尋ねる。


「作戦は?」


「槍を投げろ。何があっても」


「投げるだけ?」


「投げろ」


 ライゼンが大地を叩き割るが、オマリロの姿はすでに消えている。


「ジュゲン闘士:呪槍射出カースド・スピア!」


 右側から槍が飛来し、ライゼンの右目をえぐり取った。


〈ボスHP:12,000%→11,999%〉


 ライゼンは反射的に目を閉じ、怒鳴る。


「ぐっ……どこだ、人間!」


 その隙にオマリロが右脇腹へ突っ込み、深々と刀で斬り裂く。


〈ボスHP:11,999%→9,000%〉


「やった!」ザリアが叫ぶ。「今の、かなり入ったよ!」


 ライゼンはすぐに体勢を立て直し、二人をはたき落とすが、オマリロは軽やかに着地し、ザリアも背中に乗ったままだ。


「剣、来ます!」


 ライゼンは大剣を何度も地面に叩きつけ、地面から雷が噴き上がる。

 オマリロはその間を縫うように跳び回り、ザリアは次の槍を構えた。


「ロックオン……はい、いただき!」


 槍を投げると、ライゼンはそれを素手で掴み取る。

 だが、ザリアはすでに次の槍を蹴り飛ばしていた。槍は左目を抉り取る。


「小娘……己の運命を、自分で決めおったな」


 怒りに満ちた声と共に、ライゼンの腕が振るわれるが、オマリロが腕を斬り裂く。


〈ボスHP:9,000%→8,000%〉


「今の見た? ガチで刺した!」


 オマリロは小さく頷く。


「よくやった」


 そのタイミングで、他のメンバーを縛っていた雷鎖が消え、ライゼンはオマリロだけを掴み上げると瞬間移動で姿を消した。


「師匠!」ザリアが叫ぶ。


 ハンとリカが駆け寄る。


「どこ行っちゃったの?」リカが焦る。


「キューブで位置を――」ハンが言いかけたところで、レイがくすくす笑う。


「必要ないよ」


 レイは指をさす。


「あそこ」


 遠く、巨大な竜の神殿から凄まじい雷と光が噴き上がっていた。


――竜殺しの神殿――


〈規則:生き残れるのは一人だけ〉


 ライゼンはオマリロを床へ放り捨てると、神殿全体を雷の結界で包んだ。


「さっきの小細工は見事だった」ライゼンが言う。「あの娘の槍、視界にまだ残っている」


「少女たち、有能」オマリロも認める。「全員、伸びしろ充分」


「かもしれん」ライゼンは鼻を鳴らす。「だが、お前がいなければただの“餌”だ」

「規則はすでに発動している。この場から生きて出られるのは、我か、お前か――どちらか一人」


 オマリロは鎧を霧のように消し去り、刀だけを手に残す。


「なら、決めようか」


 二人の身体から、紅と金のオーラが立ちのぼる。

 竜王と老人は、互いの全力をぶつけ合うようにして斬り結んだ。

 その速さは、外からではとても追えない。


「この戦い!」ライゼンが吼える。「この死闘こそ、死ぬに値する!」


 オマリロはライゼンの大剣を飛び越え、矢を一本構えると、そのまま竜の口内へ撃ち込んだ。


〈ボスHP:8,000%→4,000%〉


 ライゼンの爪が横薙ぎに裂き、オマリロの顔面を切り裂いて視力を奪う。


「これで互いに、何も見えん」


「そうだな」オマリロは静かに呟く。「何も見えん」


 視界を失ったオマリロは、耳を研ぎ澄ます。

 耳の奥で、稲妻の弾ける音が膨れ上がり、肩先をかすめて雷が落ちる。


「ジュゲン操運者!」


 オマリロは瞬時に位置をずらし、再び矢を放つ。


〈ボスHP:4,000%→2,000%〉


 ライゼンの蹴りがオマリロをふっとばし、オマリロは床を滑りながらも刀を呼び出す。

 腫れ上がった瞼の下で、目は完全に閉じていた。


「まだ出し惜しみか、ニュガワ」ライゼンが嘲笑する。「なら、見せてやろう」


〈ボスHP:2,000%→20,000%〉


〈ライゼンを“一手”で倒せ〉


「これで分かったろう」ライゼンの声が響く。「理解したか? ダンジョンには逆らえん!」


「違う」オマリロは首を横に振る。「“逆らえん”ではない」

「“超える”のだ」


 オマリロの刀が変形を始め、黄金の輪状の武器へと姿を変える。

 輪の四隅には異なる四枚の刃が生え、回転速度はライゼンの感覚をも上回った。


「ジュゲン闘士:無限環の黄金刃ムゲンガン・ノ・オウゴンジン!」


 黄金の輪が光の軌跡を描きながら飛び出し、ライゼンの身体を縦横無尽に切り裂き、その巨体をまっぷたつにした。


〈ボスHP:20,000%→0%〉


 ライゼンの身体が地面に崩れ落ちる。


「……ああ、これが“伝説”か」


 上半身だけになった竜王は、ゆっくりとオマリロを見上げる。

 オマリロは足音も静かに歩み寄っていた。


「お前は……最初から決めていたのだな」ライゼンが笑う。「いつでも、この一撃で終わらせられた」

「なのになぜ、ここまで引き延ばした……?」


「子どもたちのためだ」オマリロは短く言う。「全部見せねば、育たん」


「……それには同意だ」ライゼンはかすかに笑んだ。「おめでとう。ダンジョンを……攻略した」


 ライゼンの身体がびくりと震える。


「最後に一つだ、ニュガワ」

「我が名を、忘れるな……いずれ、また聞くことになる」


「……雷象ドラゴンズベイン――雷の竜」


 その名を聞いた瞬間、ライゼンの身体は稲妻となって弾け、完全に消滅した。


「雷象……」オマリロは小さく口の中で繰り返す。「……確かに、強かった」


――

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