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マッチングアプリに散る

作者: 森の ゆう
掲載日:2025/11/03

スマホの中には、愛が詰まっている――

と、信じていた時期が、俺にもあった。

三十代半ば、職業・市役所勤務。あだ名・「Excelの亡霊」。

そんな俺・山田タカシが、マッチングアプリの世界に足を踏み入れたのは、

会社の飲み会で「今どきアプリも使えないの?」と笑われた夜だった。

アプリ名は「恋するコネクト」。

キャッチコピーは“運命、AIが見つけます”。

……運命をAIが探すってどういう仕組みだ。

俺はAIよりもまず、人間と話したい。

最初にマッチしたのは、プロフィール写真が猫の女性だった。

「猫派なんですね」と送ると、すぐに返事が来た。

「猫派ではありません。猫そのものです。」

……?

どうやら「ネコのアカウントを代理で操作してる飼い主さん」らしい。

が、会話はすべて猫目線だった。

「きょうのカリカリ、おいしかったにゃ」

「あなたもゴロゴロしますかにゃ?」

俺は真剣に悩んだ。

これを“人間関係”と呼んでいいのか。

二人目は「経営者・美咲」と名乗る美女。

「夢は世界を変えること」と書かれている。

写真は海外の高級ホテルのプールサイド。

まぶしすぎる。俺の残業明けの顔とは別次元だ。

「趣味は?」と聞くと返ってきたのは――

「投資と、あなた。」

おい。怖い。

すぐに「今、仮想通貨に興味あります?」と続き、

俺は三秒で“ブロック”ボタンを押した。

運命AI、詐欺師までマッチさせないでくれ。

三人目、「ゆりか(28)」

彼女のプロフィールにはこう書かれていた。

「マッチングアプリで彼氏できた人いるの?実験中。」

正直でいい。

やりとりも軽快で、食べ物の話で盛り上がった。

「会いませんか?」と誘われ、俺はついに人生初のアプリデートへ。

――待ち合わせ場所、駅前のカフェ。

緊張で汗ばむ手。心臓はプレゼン前の十倍の鼓動。

そして現れたのは、

プロフィール写真の彼女……の、母親だった。

「本人、いま体調悪くて。代わりに私が確認しに来たの」

確認?なにを?

「娘にふさわしいかどうかを」

――面接かよ!

カフェで母親相手に恋愛面接。

「将来の展望」「貯金額」「親との同居は可能?」

質疑応答45分。

最後に言われた。

「あなた、悪くないけど、娘は猫派なの」

……俺は犬派だ。完敗だった。

帰り道、スマホが震えた。

アプリから通知。

「新しい運命の相手が見つかりました!」

スクリーンには、“猫”のアイコン。

メッセージ欄には――

「にゃ?また会ったにゃ?」

俺はそっとスマホを閉じた。

もう、AIにも猫にも恋はしない。





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― 新着の感想 ―
二番目の人ぐいぐいと金振り込ませそうで怖いですね。 そして、猫になにかと振り回される運命にあるんですかね、山田さん。 なにはともあれ、テンポよく面白いお話でした。
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