71.リビング?ウェポン
「それじゃあ、瑾瑜、玉帛、ブルームさん」
『何でしょう!あとわたしも呼び捨てでお願いします!』
「じゃあブルームも敬語無しでいいよ」
『いえ!わたしはひよっこの18歳なので!』
「……まあ、嫌ならいいけど」
『ブルーム殿は溌剌としていらっしゃいますね』
『うるさくない?コイツ』
『好感を抱きやすいでしょう。ね?』
『は?何その顔』
「お前たちみんなうるさい。まずブルーム」
『はい!』
まず、【支配】……と言うか眷属の管理について色々と試すために、眷属たちのスキルを見せてもらう。一旦ブルームから。
ちなみに、眷属になると【念話】とかフレンドチャットを介する必要なくやり取りができるようだ。瑾瑜もずっと念話でしゃべってたわけではなかったらしい……。まあその仕様自体は結構ありがたいね。
じゃあ、ブルームのスキルはこう。
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プレイヤーネーム・ブルーム
性別・女
種族・【混沌】ミニ・カオス・スピリット
レベル・1/40
スキル
【全属性耐性脆弱】レベル10
【物理耐性脆弱】レベル10
【魔法耐性脆弱】レベル10
【全環境耐性脆弱】レベル10
【虚弱】レベル50
【干渉力低下】レベル100
【感覚鈍麻】レベル50
【非実体】
【影魔法】レベル1
【光魔法】レベル1
【憑依】レベル1
【剣術】レベル1(現在使用不可)
【鑑定】レベル1(現在使用不可)
【採取】レベル1(現在使用不可)
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うわあ。
「……こーれはまた……」
『初めて自分のステータスを見たときは卒倒しかけました……せっかく【剣術】スキル取ったのに振れない!って』
「わかる……私も最初はこうだったよ」
『え?エナさんもそうだったんですか?ちょっとやる気湧いてきました!』
「……あ。オフレコでお願い」
『……わかりました!』
この中で明確に気になるものと言えば……【憑依】だな。ちょっと調べてみるか。
「この【憑依】っていうのは?」
『文字通り、人とか物とかに取り憑いて動かすスキルです。一回に一つまでだったり、体力が取り憑いた相手依存になったり……色々ある代わりに魔素を消費しないし、制限時間も無いです!』
「……物でもいけるの?」
『いけます!』
……もしかして彼女、私の剣にも取り憑くことができるんじゃなかろうか?その時の体力計算とかはよくわからないけれど。
「試すだけ試してみていい?もしかしたら【剣術】は生き返るかも」
『はい!願ってもないです!』
と、言うわけで。ブルームの前に【浄穢の剣】を差し出し、ブルームが【憑依】……これがまあ、判定に入る範囲がちょっと狭いみたいで。四苦八苦しながらも、ブルームは無事に剣へと憑依した。
「……よし、距離を取ったから振り回してみていいよ」
そう言うや否や、剣がご機嫌にくるくると回転し始めた。横薙ぎにしたり斬り下ろしたり、随分と嬉しそうだ。傍目から見たら完全にポルターガイストだが。
『……やりました!復活してます!【剣術】!』
「ふむ。じゃあ、ブルームが憑依した【浄穢の剣】を私が装備すると?……出来るな。ちょっと鑑定するよ」
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【浄穢の剣】レベル1
かつて夥しい穢に満ちていた剣。綺麗に浄化された……はずだが、浄化者の気質にあてられたか、清浄さと穢を同時に持ち合わせる混沌とした剣に変化した。
混沌なる魂が住み憑いている。
憑依:ブルーム
備考:破壊時再生
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悪くない。無事にくっついてキャラクターと化したようだ。壊れて成長することはなくなったが、むしろレベルが生えてきたと考えればお釣りが来るだろう。
『あ、じゃあじゃあ、潜入捜査のとき、一人で入ったふりして実は二人だー!なんて出来ちゃったり?』
『無意味ですね』
『意味無いわ』
『ですよねー』
割と仲良くなってるね、君たち。瑾瑜と玉帛だけだとちょっと衝突してたし、ブルームがいい潤滑剤になってるのかもしれない。まあまた二人きりにするつもりだけど。
さて。あとは瑾瑜と玉帛のスキルだが……私とほとんど大差無いな。精々【聖浄魔法】とその系列……光と陽を持ってないこと。あと【侵蝕魔法】も持っていなかった。不可解なのは、【影禍】も【幽影鬼】も【侵蝕魔法】が進化条件に入っていたのに二人は使えない、という点だが。後から生まれたから、ちょっと弱体化しているとか?
「まあ、こんなもんかな。これなら今後、うまくブルームを誤魔化してセーフティエリアに入ることも出来るだろうね」
『え、連れてってくれるんですか!?』
「来ないつもりだったの?」
『てっきり、「自分で動けるようになってから」とか言われるかと……』
「……まあ、こっちが巻き込んだ部分もあるから。それに、【不定形】生活って割としんどいよ?実体になるまでが遠いし、ストレートに?実体になれても、今度は【尸体】とかだし」
『お言葉に甘えさせていただきます』
流石に恐ろしさが勝つよな。後はまあ、私もブルームの憑依した剣にはお世話になるだろうし。ぜひ来てほしかったから。
『我が君!この玉帛は?玉帛はお供させていただけないのでしょうか?』
『アンタは私の補佐だっつうの!』
……やっぱり、瑾瑜と玉帛、相性は良い……のかな。どうなんだろう……。2人で置いていっても、ここの運営は何とかなるだろうけど。やっぱりビジネス的な相性はいいだろうし、人間関係はそのうち育っていくと思っておこうか。
『そういや聞きそびれてたけど、アンタの頭のそれなんなのよ』
「ああこれ?なんか……仙人にもらった」
『仙人!?仙人いるんですか!?』
「まあ、私もそんな感じの存在だし?」
そういえば【尸解仙】なんて称号が生えてきてもいたな。あとで称号の方の【龍生九子】とまとめて確認しておくとしよう。
「じゃあ、ここは瑾瑜と玉帛に任せるとして、私たちは山を降りよう」
『はい!……ここ山だったんですね!』
『せいぜい上手く立ち回ることね』
『この玉帛、謹んで拝命いたします』
インベントリには、桃がいくらかとかっぱらった生薬が少々。それ以外には何も無い。
ずいぶん身軽な出発だな、と内心で苦笑したのだった。
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『メッセージが届いています』
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【第二回イベント開催のお知らせ】
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二つの陣営は「侵攻側」として、防衛陣営が保持する【コア】を奪い合い、最後にコアを保持していた陣営が勝利!
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【クライシスオンライン】イベント運営チーム
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