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4.死に体と形無し

2025/06/29 一部修正

 ハ〜ア、うごうご。ぐにぐに。


 ごきげんよう、ダイスの女神に弄ばれた次はシステムの要求に踊らされている影こと、ログイン二日目のエナです。


 あ〜、たぶんもうちょいなんだよな。さっき見た時は9まで上がってたし。当然ながら、レベルアップのためには未経験のことをやって経験を稼ぐ必要があるわけで。


 もうきちんと形にできるものを100個作るよりも、まだできるかわからないものを1個作ったほうが経験的にはおいしい。そういうものなんだろう。


 というわけで、今は魔素を集めて発散するのみならずできる限り小さく集約したり、一箇所で集めつつもう一箇所で発散したり、まあ色々やっている。


 お、なんか掴んだかも……?


『シャドウ“エナ”が進化規定を満たしました』

『ミニ・ウィーク・スピリットに進化しますか?』


 んあ?はい?


『受理しました。ミニ・ウィーク・スピリットに進化します』


 へ?


「……、……!?!?!?!?」


 全身がゆがんだ。歪んだ。ゆがんだ。


 ……………は?


 は!?!?!?なんか……なんか気持ち悪!?あっぐにゃぐにゃする、待ってくれ私はぐにゃっとされたいわけじゃなくてぐにっとしたいだけというか、あああああああ洗濯物か!?!?!?!?私は洗濯されているのか!?!?!?多分ドラム式だ。すごいなんかでっかいドラム式洗濯機に1枚だけぶち込まれたハンドタオルみたいすごい運動エネルギー感じるう!!!!あっなんかきもちわるいのにきもちいいなにこれ……


「……(おええ……)」


『ミニ・ウィーク・スピリット“エナ”の安定化を確認』

『進化完了』


――――――――――――

プレイヤーネーム・エナ

性別・女

種族・ミニ・ウィーク・スピリット

レベル・1/20

スキル

【全属性耐性脆弱】レベル10

【物理耐性脆弱】レベル10

【魔法耐性脆弱】レベル10

【全環境耐性脆弱】レベル10

【虚弱】レベル50

【干渉力低下】レベル84

【感覚鈍麻】レベル47

【非実体】

【侵蝕魔法】レベル1

【魔素操作】レベル10

【魔素感知】レベル1(New)

【隠匿】レベル1(New)

【魔素自動回復】レベル1

【体力自動回復】レベル1

【鑑定】レベル1(現在使用不可)

【採取】レベル1(現在使用不可)

【人語】レベル1(現在使用不可)

【魔物語】レベル1(現在使用不可)

装備

頭部【空きスロットなし】

胴体【空きスロットなし】

   【空きスロットなし】

腕部【空きスロットなし】

 【空きスロットなし】

脚部【空きスロットなし】

  【空きスロットなし】

武器【空きスロットなし】

【空きスロットなし】

備考:ランダム・虚弱キャラクター成長ボーナス・デスペナルティなし

――――――――――――


 すごい目にあった。何だったんだ。もしかして進化の度にアレを味わわなくてはならないのか?それはちょっと困るんだが……


 ……ん?


「……??(目が見える?)」


 正確には、すごい薄ぼんやりとグリッド線のようなものが見える。真っ暗な世界だった視界と比べれば、ごく薄くとも輪郭線があるだけで5億倍は違うな。自らの感覚器官に感謝せねば。


「……(もしかして、新しく生えた【魔素感知】のおかげか)」


 それのおかげで周囲の魔素を体感しやすくなった分が視覚に表れている?可能性はある。というか高い。ちょっとうれしい誤算だな。


 あ〜、でも【非実体】を解除する道は遠そうだな。何せ(スピリット)なので。またしばらくはぐにぐに三昧か。


 でも目が見えることで進んだこともある。自分の場所と姿を確認できるようになったのだ。まだ【鑑定】は使えないけれど、物にぶつかって乙る可能性はほぼ完全になくなった。


 見た感じ、私がいるここは四角く区切られた部屋のようなもので……恐らくは、というか十中八九人工物の中だろう。餓鬼が彷徨いてる人工物ってそんなん廃墟確定じゃ〜〜〜ん。


 そして私の姿は、宙に浮いている謎の丸。なんか心霊写真にあるオーブ的な。まる〜くてふわ〜っとしたそれだ。あ、でも動く(もがく)と慣性でオタマジャクシみたいな形に崩れる。


 もろに魂でウケるね。そうすると、廃墟であることはむしろ幸運だったかもしれない。プレイヤーとか普通の人類種は少なさそうだから、即座に殺される心配は多分無い。私が警戒するのは餓鬼だけで十分だな。


 その餓鬼だが、未だに見当たらない。まああれだけチンタラ一箇所に居座って【魔素操作】してても出会ったのは踏み潰されたあの一回だけだから、そもそもこの辺りにはそんなに居ないのかもしれない。


 居ないなら居ないでいいや。え〜いぐにぐに。ぐに……ぐに?


 なんか魔素の動きが変だな。変な形に歪ん……あ。


 くるっと振り向く。そこにはぼんやりとしたグリッド線で形どられた、小さな子供くらいの大きさの、何らかの実体。


 廃墟に居うる、子供。すなわち。


「……!!!!(おるやんけお前!!!!)」


 居たわ餓鬼!!!ビーチフラッグ並に回収早かったなクソ!!!!


 また踏み潰されるのか、いや今度は浮いているから手で握りつぶされるか?ああもう進化して早速死んじゃうって本当……


 ……こないな。何、私のことわかってないの?


 ああ、【隠匿】か。そういやこんなのも生えてたんだな。できれば影のころから欲しかったんだけど、まあ良いか。


 今なら……コイツを【侵蝕魔法】の実験台にできる。よし、やってやる、やってやる!!


 ……使い方わかるのかって?調べたら普通に出てきた。まあ確かに、進化条件まで丁寧に教えてくれるなら魔法の使い方くらい教えてくれるか……。


「……(【魂縛】)」


 【侵蝕魔法】のレベル1、【魂縛】。敵を拘束(バインド)状態にしつつ特殊なスリップダメージを入れる魔法……と書いてある。


 どうだ!参ったかこの餓鬼め!!耳は聞こえないままだから、断末魔の叫びが聞こえないのが残念だ。


 餓鬼は立ち尽くしている。上手いことバインドが利いているようだ。【隠匿】もバレた気配はない。


「……(もう一度【魂縛】)」


 餓鬼は立ち尽くしている。倒れる気配はないが、すぐにでも死ぬだろう。君にとっては実に残念な終わりだろうな。


「……(さらに【魂縛】)」


 ああ、残念だ……残念……ざんね……残念なのは私の魔法の方だ、これ。


 こんな悲しい威力なことある?餓鬼だぞ、餓鬼。英訳するならほとんどの場合ゴブリンだぞ。こんな低級モンスターに数分かけて魔法重ね掛けしないと勝てないってお前。お前。


「……!(さすがに終わってくれ!【魂縛】)」


 さらに【魂縛】。そうしていると、ついに餓鬼の形をしたグリッド線がボロっと崩れ落ちた。そのまま魔素の歪みもほどける。


 ……倒した。餓鬼を。


 こうして私の初戦闘は、なんとも薄味な結果で終わるのであった……。


――――――――――――

【侵蝕魔法】レベル2

――――――――――――


 あ、レベル上がってる。

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― 新着の感想 ―
これ普通に外から見たらゴブリンは苦しんでるのだろうか…? まあ字面から苦しんでそうな気もするけど、だとしたら見た目は急にゴブリンが苦しみ出したと思ったら首がとれて消滅したように見えるのだろうか…? ……
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