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39.正解の無いギミック

 目の前の装置を見据える。宝珠の濁りは時折うごめいていて、見つめていると何とも言い難い不快さがこみ上げてくる。


 ……メタ的に考えれば、これは【風化鬼】の弱体化ギミックなんだろう。適切な手順を踏めば、【風化鬼】が使える魔素の量は格段に減るはずだ。


 手順を間違えたときのことを考えると、少し恐ろしくもなるが。


 さて、こういうギミックの解除手順を考えるとき、ヒントになるのは作った人間の残した資料であることが大半だ。


 そして都合のいいことに、ここに解読を完了させ、内容で仕分けされた竹簡が大量にある。そこから【風化鬼】に関する発明のカテゴリーにある竹簡をひっくり返した。


「……(これじゃない……この辺?ああ、これだな。ふむ……宝珠を無闇に破壊すると魔素が逆流し龍脈が歪む、と)」


 ……そもそも龍脈には繋がってないんだってば。恐らくという話ではなく、確実に。


 どうやらあの装置もまた【扶桑樹】を参考に作り上げたものらしく、本質は龍脈から魔素を吸い上げる機能を持った機械であるらしい。その構造は植物的で、根を張るように地下に管を差し込んで魔素を吸収しているのだ。


 ……でもなあ。()()()()んだよね。私があんなに時間をかけて潜って、やっと龍脈にぶつかったのに。この装置から伸びる“根”は、精々3メートル少々かそこらだ。地下室の深さを加味しても、浅すぎてかすりもしていない。


 確かにこの辺りに魔素の溜まりがあることは確かなようだが、【扶桑樹】が吸い上げているほどの魔素は溜まってないと思うぞ。


 そもそも龍脈に干渉してたら、あのおじいちゃん……【歳王】に怒られるし。もしコイツがそんなことされたら、嬉々として日記に書き込むだろう。でも何も無いってことは、そういうことだ。


 ただし、それが宝珠を破壊しても平気だという証拠にはならない。ここに大きな魔素の溜まりがあることは間違いなく、それが歪んだときに何が起こるかは想像できない。想像できないが、碌でも無いことが起こるのは確かだ。


「……(素直に考えるなら宝珠が弱点だよな)」


 とりあえず、宝珠そのものを装置の台座から取り外してしまえば、魔素の行き場を失った装置はじきに停止するだろう。だが、そのまま外せば停止するまでの間に行き場を失っていた魔素が何を起こすかは正直わからない。シンプルに怖い。


 まあつまり、魔素の供給を絶ってから宝珠を外せばいいんだけれど。魔素を吸い上げている根っこを引き抜いて破壊すれば平気なはずだ。それともそのままへし折って管としての機能を失わせたほうが早いか?


 とにかく、どうにかして宝珠への魔素の供給を断ち切り、その後に宝珠をなんとかするのが良さそうだな。


 ……よし。作戦はこうだ。【念動】で根に当たる管を破壊しつつ、宝珠と装置を分離。行き場を失った魔素を【魔素操作】で抑えて、最終的には機械を完全に破壊する。


 ……ふー……。ゆっくりと深呼吸をする。【内丹】で巡らせ続けている魔素を、あらためて感じた。


 チャンスは一度きりだ。


 ……【念動】!管が、思ったより硬い、が……ここを破壊しないことには始まらない!……へし折った!そのまま宝珠も分離する!


 破壊された管に魔素が通らなくなったことは【魔素感知】で確認して……よし。通ってない。じゃあこのまま中に溜まった魔素を集めて、暴走の危険を消そう。


 ……!?この魔素、やたら抵抗してくるな。支配下に置きにくい。なんでだ?……あー、レベル足りない可能性は結構ありそうな……。まあいいや。大人しくしてろ!


 ……違う!危なかった。回路が複雑過ぎて、魔素が中でこんがらがってるんだ。なんでまたこんな複雑な回路にしたんだよ……自作するなら本体の回路はスッキリさせた方が絶対にいい。


 あーこれ、魔素を抑えながらゆっくり分解していくしか無さそうだな。まあ元は絶ったし、丁寧にやるとしようか。よいしょ。あっやべなんか外れ……ここはただのケースか。危ない危ない。


 思ったより脆いな。もうちょっと慎重に……チャンスこそ1回きりだけど、もう時間はいくらかかっても大丈夫なんだから。


――――――――――――


『【偽龍穴】解除完了。記録・3:47:56』


 ……はー……終わった……。


 正直、やってることそのものについては、剣を無理矢理に浄化したときよりはしんどくなかった。


 何がキツかったって、この装置あまりにも脆すぎるんだよ!中の回路はぐちゃぐちゃに混線していて、どこかが切れたら爆発してもおかしくないくらい魔素が渋滞を起こしていた。それを丁寧に一つ一つほどいて、あまりにも脆くてヤバそうなやつを回避しながらなんとかチマチマほどいたわけだ。


 もう二度とやりたくないね。大学受験の次にはやりたくない。……つらかったなあ。志望理由書に面接対策に、使えそうな資格や実績の証明書を方々にお願いして、学力試験対策ももちろん同時並行……二度とやりたくないなあ……。


 こほん。とにかく、解除完了である。これ以上の用事は多分もう無いし、一度【風化鬼】に挑んでみてもいいかもしれない。


 あ、解除が嬉しすぎて見逃したログを見返しておこう。何かスキル覚えてないかな。


『【風化鬼】の【疑似龍脈】が無力化されました』

『単独でのクリアにより、獲得経験が増大します』

『経験が一定に達しました。スキル獲得:【罠解除】』

称号タイトル獲得:【曲芸マスター】【絡繰からくりを知るもの】』

『幽影鬼“エナ”が進化規定を満たしました』

『影禍に進化しますか?』


 ……ふーん。タイミングがいいね。

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― 新着の感想 ―
感想での言及がありましたが、個人的には安易にステータスで数字を出して強い弱いをやるよりかは作中の描写で伝える方が好みですかね。 分かりやすくはあるのですがいかんせんゲーム的というか、ゲームではなく文章…
面白くて一気に読みました! 初めてだとは思えないくらい面白くてびっくりしました。 お願いなんですが、どんどん強くなってそうなのはめっちゃ伝わりますが、どう強くなってるんだろ?の状態です… ステータス…
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