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33.割とダメなやつ

 あー、ごきげんよう、エナです。開幕から弁解で申し訳ないんだけど、【無属性魔法】の検証を忘れていたわけじゃないんだよ。


 とりあえず、ご覧いただこうか。


――――――――――――

【無属性魔法】レベル1(現在使用不可)

今の貴女はまだ足りない。

――――――――――――


 というわけで、使用制限です。まあたしかに……無属性は一番ヤバいのがお約束ですよね……。しかしなんだこの、中身すら全く見えないヤバさよ。さすがの私でも厄ネタ抱えたってことくらい分かるぞ。あーあまたアルマに怒られる……スクショを送りつけておこう。


 さて、家探しを進めよう。偶然にも浄化やら事象融合やらを見つけたせいで、何もかもが途中のまま色々やっちゃったからね。


 でも色々やっていた寄り道にも意味はあった。少なくない数の餓鬼を実験ついでに倒してるからレベルも上がってるし、【干渉力低下】とか【感覚鈍麻】のレベルもかなり下がってる。


 おかげでちょっと視界がクリアになった!……このボロ屋敷の寂れ具合もよくわかるようになったけどね。なんかどう見てもこびりついて乾いた血の汚れとかあるけどね。


 そんなわけで、見落としていた部屋のいろいろが見えるようになった。例えば、棚に積み上げられている、厳重に封をされた竹簡だとか。紙の巻物もあるっちゃあるけど、ほとんど朽ちてしまっている。……あー、【念動】でなんとか動かそうとしても崩れちゃうな。


 巻物類はほっといて良いか。数も少ないし、装丁もそんなにちゃんとしてるわけじゃない。対して竹簡は相当厳重に保管されていた……のかな?置き方自体は粗雑だけれど、本体の綺麗さも相まって、ほとんど年月の影響を受けていないように見えるな。封泥(ふうでい)の文様すらはっきり見える。


 それじゃあ、中身を見ようか。まあこのくらいなら【念動】で開けられ……開け…………かっっっったいなこの封!!!!ついうっかり全く力を調整しないで締めちゃったペットボトルの蓋くらい固い!!強炭酸水の蓋くらい固い!!もういいや、留めてる紐の方を切っちゃおう。【ダークスラッシュ】!


 ふう、よし……中身は、と。


 読めねえ。いや、字はそっくりそのまま綺麗に残ってるんだけど、達筆過ぎて読めないと言うか、そもそも日本語じゃない。漢字なのは分かるけど……どう見ても漢文だなあ。


 ……ちょっと集中して読み進めるか。


――――――――――――


『連続ログイン時間の制限に達しました』


 あれ。


「……(そんな時間経ってた?まずいな)」


 まあ、結構読み進められたかな。でも大体何言ってるかは掴めたけれど、出来ればもうちょっと内容を詰めたかった。


「……(一旦休憩にして、いろいろ整理するか)」


 ログアウト、と。


――――――――――――


「ん……っ。ゲームでどれだけムチャなことをしても、現実の体には影響がない……わかってはいても、まだ違和感があるな」


 VRカプセルベッドから起き上がり、姿見で軽く身なりを整える。やば、ほっぺに謎の痕が……。もしダイニングに誰かがいたら、このまま出るわけにはいかなかったぞ。女の子の一人暮らしだからと、父を説き伏せてオートロック付きの1DKを契約してくれたお母さんには感謝してもしきれないな。


「……あー。よし。進めるか」


 ぐっと背伸びをして机に向かう。PCを立ち上げて、VRベッドにプリインストールされているメモ機能で取ったメモをクラウドから引っ張ってきた。スクリーンショットも合わせて。……うわあ、いくらなんでもぼやけ過ぎだろう。あらためてちゃんと見ると、恐ろしい効果をしているな【感覚鈍麻】。


「……この辺はただの日記だな。これは……実験結果?瓶に入ってた何かと関係ありそう。なになに……【扶桑樹】の再現……?完璧な生命体……仙術の秘奥……厄介そうなネタだな」


 恨みつらみが書き連ねてある。でも字の美しさとかレトリックに富んだ文体には、書き手の階級の高さを感じるな。なんでこんなものを書くことに……うん?


「メッセージ?……アルマからだ」


 向こうから来るなんて珍しいな。……そんなにいっぱい会話してきたわけじゃないけど。


『エナ、【扶桑樹】について何か知ってたりしないか?』

『タイムリーだね、君。今解読してる文献にそんなのがある』

『はい?事象融合の次は文献解読してんの?』

『うん。今いるとこに大量の竹簡がある』

『んえ〜〜〜どこいんのまじで』

『地域的には中華っぽいとこ……?』

『なるほど?何もわかんねえ』

『それで【扶桑樹】だっけ?なんかねえ、コレ書いた奴はソレを再現したかったみたいだ。具体的にどういうものってのは……天を突くほどの大樹で、生命力に満ちてるってこと以外の描写はないかな』

『あー。ありがとう。生命力なあ、生命力……』

『ところで、なんで急にそんなこと聞いてきたの?どうかした?』

『んー。エナ、苔ってさあ、樹に生えることもあるだろ?』

『うん。うん?お前まさか』

『俺が生えたところなあ、その【扶桑樹】だったわけだよ』

『……なんか……数日前のアルマの気持ちがわかったかな……。でもそこが【扶桑樹】って気付けたんだ?』


 聞きたくない。でも聞いとかないと。


『ああそれな。今俺さあ、乗っ取ろうとしてんのよ。その【扶桑樹】を』

『何してるの??????』

『根っこを差し込んで内側からどうこう……ってやってる。生命力で勝てば何とかなったりすんのかなあ』

『つる植物が天を突く大樹にどう生命力で勝つんだ』

『それはさ、ほら。逆に向こうを死にかけにすれば勝てそうじゃね?』

『えー……』

『ま、俺なりに色々やってみるわ。急にメッセ送ったのにわざわざ丁寧にありがとな』

『うん。私も解読作業を進めておくよ』


 なんか向こうも楽しそうだな。……もう少し頑張るか。

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