26.Are You a PKer?
副題:アルマとおはなし・前編
――――――ここから日頃の御礼――――――
累計10万PV突破していました。
処女作ながら週間ランキング1位や月間ランキング2位などの結果を得られたのも、ひとえにブックマークやリアクション、感想をくださる読者の皆様、何よりまず読んでくださっている皆様のおかげです。
いつもありがとうございます。そしてこれからも、どうぞ本作をよろしくお願いいたします。
(急募:この長ったらしいタイトルのちょうどいい略称)
『フレンド:アルマにボイスチャットをリクエスト中……』
『アルマがリクエストに応答しました』
〈エナ?イベントぶりだな。何か困りごとでも_〉
『たすけて』
〈_あったみたいだな。どうした大丈夫か?〉
『ど、どうしよう……そんなつもりじゃなくて……!』
〈うん、あの、初手から泣いてるとは流石の俺も予想がついてなくてさ。ちょっと落ち着こう、な?〉
『泣いてはない……半泣きになってるだけ』
〈……殆ど泣いてるんじゃねえかな、それ〉
『う。ごめん……かなり取り乱してて……』
〈落ち着いてきたな。ま、話せるとこから話してくれれば良いし〉
うう、アルマの優しさが沁みる。無い目から涙が溢れ出しそうだ。ごめんなさい。いつもはあんまりMMOとかやんないもんだからマナーがなってなくて、いや結構な初心者のくせにランダムかよと言われたら何も言い返せないんだけれど。
『実は斯々然々で……』
〈ウンウンなるほどな。そのカクカクとシカジカについて教えてほしいんだってば〉
『えへ。ふざけてごめん』
〈……まあ、怒ってないから。泣かれてるより五億倍マシだし〉
『それは、本当に申し訳ない。すごい取り乱してて』
〈それも別に怒ってないからな?最初から、フレンドになったのもなんか相談に乗るって話だったし。ただまあ、心臓に悪いってだけで〉
うええ……年齢が3つ違うだけでこうも余裕があるのか……。甘ったれでごめんなさい、遠慮なく頼らせていただきます。
『その……まず、【ユニーク】なるものになってしまったところから全てが始まるんだけど』
〈あ。やっぱアレ、エナだったのか〉
『アレ?』
〈え?ユニークキャラクター【ミニ・ダーク・スピリット】が誕生?発生?しました〜みたいな〉
『あっそれです。やっぱりワールドアナウンスはワールドアナウンスだったのか!』
〈……もしかして、エナは発売日からやってるわけじゃないのか?〉
『え?うん。えーと……一ヶ月記念のイベントの告知が来る数日前くらいから?』
〈なるほどな。あのワールドアナウンス、実は初めてじゃないんだ。開始2週間くらいだったか?ワールドクエストってのが新しく始まったって告知がアナウンスされてた〉
『それって……えっと、【無二の生命を追え】?』
〈そうそれ〉
そういえば、進化したときついでにクエストの目標がどうたらみたいな話もアナウンスされてたし。なるほどね、ワールドクエストとかいう……まあデカそうなクエストに引っ掛かってるキャラクターになったから、アナウンスされたって考えて良さそうだな。
〈そう。そんで、そのクエストの開始フラグを踏んだプレイヤー、名前は……“究極院”って人がいくつか掲示板に情報を提供してくれてる〉
『あ。いつぞやの優勝者。ソロの』
〈あ、そいつか。今思い出した。その究極院が提供した情報によると、【ユニーク】ってのは文字通りの“唯一無二”って意味とは違うらしい〉
『えっ?私【唯一無二】って称号を獲得したのに』
〈うううえええ……エナぁ……。忘れんなよ、今の自分が歩く情報の爆弾だってこと……〉
『えっ怖い』
えっ怖い。そんな不穏な状況なの、私。……なんか、向こうのアルマが頭を抱えてる様子がありありと目に浮かぶな。アルマにも頭無いけど。
〈……エナさあん、もしかして事態の深刻さをあんまり理解してませんかあ〜?〉
『え、はい……なんか自分の種族が大っぴらに扱われててびっくり〜、みたいな』
〈……モロに【ミニ・ダーク・スピリット】でーすって分かるカッコで他プレイヤーに接触したりしてみろ、永遠に追っかけ回されてもおかしくないからな。マトモにプレイ出来なくなる状況すらあり得るぞ〉
『え』
そんなにやばいの、ユニークって……あ、というか、プレイヤー。私がプレイヤーキラーになったって話で相談しに来たんだった。
『そうだ、アルマ。私進化するんだけど』
〈……別の爆弾を寄越すのやめろ!!!〉
『ええ……?でもそのために相談したって言っても過言じゃないんだけど』
〈うええええ俺も爆弾処理班にブチ込まれてる〉
『うん、私とアルマで心中だからね。死んでも私のことは喋らないでね』
〈無理心中じゃねえか。で、相談って?〉
切り替えが早くて助かる。
『なんかさあ……その……。プレイヤーキラーになっちゃったらしく……』
〈……え、そんなこと?〉
『……え、そんなことって何?』
何?私、プレイヤーキャラクターをキルしてしまったんですけど。そんなことって。え?アルマ的にはよくあることなの?つる性植物も人を殺すの?毒とか手に入れた?
〈エナ?変な想像してそうな所悪いけど、このゲーム事故キルはままあることだからな〉
『ままあること』
〈そう、ままあること。魔物プレイヤーとただのモンスターの区別ってそんなつかないみたいだし。何なら人類プレイヤーと人類NPCとの区別だってあんまつかないらしいし。ミスって攻撃に巻き込んだとかじゃないのか?〉
『でも……ペナルティとか、報復とか……』
〈あまりに悪質だったりとかじゃない限り、システム的なペナルティは無いってよ。ご褒美も無いけどな〉
『あれ、ご褒美とかもなし?……でもそっか、ご褒美があっても気がつくし』
〈人類と魔物とに限らず、敢えて野良のプレイヤーを倒しても、同じレベルのNPCを倒したのと同じ経験しか入らないらしい。報復は……まあ、【ミニ・ダーク・スピリット】を見たとかそういうふうに騒がれては無さそうだし、気にしなくて良いんじゃないか〉
『……アルマも、間違えてプレイヤーをキルしたことあったりするの?』
〈わからん。目とか無いし。……【麻痺毒】と【神経毒】を手に入れてからは胞子と一緒に定期的に撒いたりとか……あと【棘】も手に入れたから、その辺の生命体に絡みついて絞め殺したりとかもしてる。プレイヤー巻き込んでてもおかしくはないな〉
『うわあ、順当に殺意高く成長してる』
アルマが文字通りの絞め殺し植物に進化している……絶対に近寄っちゃまずいエリアだ。やばい。
〈とまあ、こんな感じで。普通はプレイヤーをキルしたかどうかなんて分からないんだよ〉
『うん、聞く限りはそうだね』
〈だから……あーでもなんか爆弾潜んでそうだから聞きたくなさもある〜……〉
『……うん、何聞かれるかこっちも大体わかったよ。で、何が聞きたい?』
〈あのさ〜……どうやってプレイヤーをキルしたかってわかった?〉
『君のような勘の良い蔓は好きだよ』
〈……嫌いではなく?〉
『喋りたいことが多すぎて、気を抜いたら脱線するから……!』
〈あー。軌道修正って難しいよな。分かる分かる〉