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21.屋敷の構造

 はー……はー……ひどい目に遭った。本当に、本当にひどかった。無限湧きするエネミー、切れかけの体内魔素、【魔素自動回復】で【魔素操作】のための最低リソースを確保しながら命からがら元いた部屋へ逃げ帰る私。もしかして彼処、モンスターハウスだったのか?


 はあ……よく考えたら、部屋の反対側がもう一つの部屋なのもあり得る話だよな……。そして、ここから離れて新しい経験を積むのなら廊下に出たほうがベター。なんで【風化鬼】と真逆に進んだんだ。頭が足りなかったな……魂だから……。


「……(でも、【影魔法】と【闇魔法】もかなり育ってきた)」


 さて、上がった息を整えた辺りで。肺無いけど。さっきとは別の方向へ移動しよう。上手いこと廊下に出られたら、敵を串刺しにしたり、拘束して持続ダメージを与えたり、影をボコッとぶつけたりしつつ、探索メインで無理せず進む。これで行こう。


「……(今度はちゃんと廊下かな?)」


 良かった良かった。薄ぼんやりとしたグリッド線で形どられた視界には、奥まで伸びるやや幅の狭い空間が広がっている。流石にどう見ても廊下だな、よし。


 しかし……今の段階でレベル14か。え、もう?さすがにもうちょい時間掛かる予定だったよ?ここから伸び悩むことを考えても相当早い。レベリングを意識しないで完全に探索メインに切り替えても、まあ達成できそうではあるよね。


「……(とりあえず、脳内マップを一旦完成させようかな)」


 とにかく、この廃屋敷のざっくりとした位置関係を把握したい。あとセーフティルームとかチェックポイントがあるならそれも。この調子だと無い可能性が高そうだけれどね……。あるなら初期スポーンの場所が普通にエネミーの出入りする部屋にならなさそうだし。


 ……というか私の初期スポーン、ダンジョンなのか!やばいな。くじ運から私への殺意が高い。乱数の女神が私を指さして思いきり高笑いしている。許さないからな……。


「……(絶対に【人化】できるようになってやる)」


 さ、進もう。今んとこ特に変な構造は無いし……あ、餓鬼。【ダークランス】。直線的な長い廊下が真っ直ぐ伸びていて……あれ?曲がらない。長い廊下を進み続けると見事に行き止まりだ。じゃあ反対側も……そうみたいだな。


「……(あれ?)」


 うん、この屋敷、そんなに広くない……?いや広いんだけれど。面積的にはたぶんかなり広くて、私の移動速度がすごい上がってるだけなんだけど。ダンジョンとしてはやや狭い。というか、構造がシンプル過ぎて殺意を感じない。


 具体的な構造としては……【風化鬼】がいた一番大きな部屋を中心に、左右対称に廊下が伸びていて、そこに沿うようにいくつか小部屋がある。全体的なシルエットは、やっぱりたぶん左右対称だ。


 この屋敷だけで進化まで賄うのは、無理じゃないけど少しつまらないかな。うーん……。


「……(1回、外に出てみようか)」


 あの【風化鬼】がいた部屋が中心なら、そのどちらかに外に出るための中央門があるかもしれない。探してみるか?まあ無い手で手探りすることになるだろうけど。


 ……いや待て。あのストーリームービーではなんと言っていた?男の墓場は、『屋敷で一番大きな部屋、その裏の扉から出られる庭』だ。そして【風化鬼】が居たのも屋敷で一番大きな部屋。扉は部屋の表と裏、両方についているけれど、片方は庭に直通。このことから、裏の扉の先に廊下は無いか、もしくは縁側みたいな造りになっていると推察できる。


 ……つまり、いま廊下に立っていると言うことは、こっちに『一番大きな部屋』の表の扉があって、その反対側に屋敷を出る扉が……あった!


「……(見上げるほどデカい)」


 よく見たら、ものすごく豪奢な装飾がされていたらしいことがおぼつかない視界でもわかるくらいの造りをしている。相当でかい屋敷だったんだな、小さな村になんでそんなもんが……いや、男が死んだあとに祭りで栄えたらしいし、霊廟として増改築を繰り返したとか?ありそう。


 ともかく、デカすぎてただの壁と誤認していた扉を発見した。恐らくここから外に出られる。しかし本当に大きいな、これ常人が一人で開けるやつじゃないだろう。複数人が、こう……ドアノブにあたる部分についている輪っかにひもを通して引っ張るやつみたいな。ああいう開け方する扉なんじゃないか。


 まあ私は【非実体】ですり抜けていけるんだけどね!お邪魔します。いや、『お邪魔しました』か?まあ良いや、また来るよ【風化鬼】。それじゃ【魔素操作】!よ〜しすり抜けろ!


 ずるん。……あ、門がもう一つあったんですね。こっちもずるん。あっこっちの門はちょっと分厚い……つっかえる!よっこいしょ!おっとと……。


 勢いをつけすぎて、やや投げ出されるように屋敷を出る。目の前には、草が茫々に生えて樹木は伸び放題の荒れた四角い中庭が広がっていた。そして、私の背後にある屋敷を除いた前と左右の三方にも、同じくらいのサイズ感をした屋敷が聳えている。中庭を囲むように四辺が屋敷になっているようだ。


 あー、なるほど、これは。道理であの屋敷が少し小さかったわけだね。つまりは……中国の伝統的な家屋、四合院しごういんってやつ。


「……(そして餓鬼もいっぱい!)」


 よし!中庭の餓鬼どもを全滅させてから、ゆっくり探索してやらあ!

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