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16.澱む魂

『ミニ・ウィーク・スピリット“エナ”が複数の進化規定を満たしました』

『進化先を選択してください』

　肉のない肉体へただいま。久方ぶりに魂の身体でごきげんよう、エナです。

　というわけで、突然の新情報だ。複数の進化規定を満たすってどういうこと？

　ちなみに、レベルはついさっき制限《キャップ》に達した。どうやって上げたかって？毎度お馴染みぐにぐにだよ。言わせないで。

「……（なにはともあれ確認か）」

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【ウィーク・スピリット】

【ミニ・スピリット】

【ミニ・ダーク・スピリット】

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　…………な〜〜〜〜〜んか一つだけやたらと異彩を放つ進化先があるなぁ〜〜〜〜〜。ダーク一択だろうこんなの。

　ミニとウィークは、多分また【干渉力低下】が関わってたりするか、あるいは普通にレベルキャップに達して解放されるだけの正統進化と考えられる。

　じゃあ、ダークの進化条件ってなんだ？見てみるか。

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レベルが20に達する（clear）

【魔素操作】がレベル15以上（clear）

【干渉力低下】がレベル75以下（clear）

【侵蝕魔法】を習得（clear）

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「……（いや、流石に隠し進化が過ぎないか）」

【侵蝕魔法】って。【侵蝕魔法】必須って。私がたまたまランダムで引いてなかったら、弱いやつか小さいやつかの二択で進化してたってこと？

　それから、闇《ダーク》があるなら光《ライト》もあったりするのかな。【侵蝕魔法】の対になるような魔法とかスキルがあって、それを習得していると【ミニ・ライト・スピリット】になれるみたいな。ありそう。

　まあ、いつまでもいろいろ考えていてもしょうがないか。というわけで……【ミニ・ダーク・スピリット】に進化を決定！

『受理しました。ミニ・ダーク・スピリットに進化します』

　さあ、またあのぐにゃっとする感覚に耐えて……耐え……？

　なんか、寒気がする。外じゃなくて、自分の体の中から冷気が漏れ出してるみたいな……体無いけれど。体の中心に冷たい水が一滴落ちて、それがどんどん全身を冷やしながら広がっているような妙な感覚。なんだか、すごく嫌というわけではないけれど、じんわりと不快だ。その冷気が全身に広がると、今度はぐるぐると体内がかき混ぜられていく。肉も骨も腸《はらわた》も無い不定形の肉体が、あらゆる境界線を失って混じり合っている。不快で、快感だった。

『ミニ・ダーク・スピリット“エナ”の安定化を確認』

『進化完了』

『称号《タイトル》獲得:【唯一無二】』

『ワールドアナウンス:ユニークキャラクター【ミニ・ダーク・スピリット】が発生しました。世界任務《ワールドクエスト》【無二の生命を追え】の目標が更新されます』

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プレイヤーネーム・エナ

性別・女

種族・【ユニーク】ミニ・ダーク・スピリット

レベル・1/40

スキル

【全属性耐性脆弱】レベル10

【物理耐性脆弱】レベル10

【魔法耐性脆弱】レベル10

【全環境耐性脆弱】レベル10

【虚弱】レベル50

【干渉力低下】レベル72

【感覚鈍麻】レベル43

【非実体】

【侵蝕魔法】レベル4

【闇魔法】レベル1(New)

【影魔法】レベル1(New)

【魔素操作】レベル20

【魔素感知】レベル13

【隠蔽】レベル1(New)

【魔素自動回復】レベル3

【体力自動回復】レベル1

【鑑定】レベル1(現在使用不可)

【採取】レベル1(現在使用不可)

【人語】レベル1(現在使用不可)

【魔物語】レベル1(現在使用不可)

装備

頭部【空きスロットなし】

胴体【空きスロットなし】

　　【空きスロットなし】

腕部【空きスロットなし】

　【空きスロットなし】

脚部【空きスロットなし】

　【空きスロットなし】

武器【空きスロットなし】

【空きスロットなし】

称号

【名予想家】【唯一無二】（New）

備考:ランダム・虚弱キャラクター成長ボーナス・デスペナルティなし・ユニークキャラクター

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　なんかぐにゃって来ると思ってたのに違った。ひやって来た。ひんやりしてぐるぐるしていた。どっちにしろ気持ち悪かったな……。

　さて、問題のステータスだが。

「……（ユニークって何……なんかヤバそう）」

　ユニーク。唯一の。それを文字通りに受け取るならば、【ミニ・ダーク・スピリット】という種族は私以外に一人もいないということになる。

「……（そんなことあるか？）」

　たった一人きり？いくら【クライシスオンライン】が今年発売の新作とは言え、すでに正式サービス開始から一ヶ月経っているし、アクセス数は毎日うなぎ上りだと言うから、トータルのプレイヤー数は相当のはずだ。これほどのゲーム、生半可な条件なら皆すぐにでも達成してしまうだろう。それじゃあ【ユニーク】じゃない。

　にも関わらず、ユニーク種族【ミニ・ダーク・スピリット】として私はここに降り立った。と、いうことは。

「……（【侵蝕魔法】、さてはマジのレアスキルだね！？）」

何処ぞのつる性植物「……！？（【スピリット】！？いやまさか……まさか……？？）」