15.イベントリザルト
あ。優勝プレイヤーの予想忘れてた。まあ玉石混交というか、今のところ九分九厘は石寄りのプレイヤーばっかりだろうから、普通に当てられやしなかっただろうけど。
さて、イベント三日目のバトロワも終わったところですがごきげんよう。人類の身体が名残惜しいエナです。
しかしサバイバル系のバトロワイベントって、観戦側は結構ダレるもんなんだな。接敵してないところを映してもあんまり撮れ高にならないし、当然と言えば当然だけど。
お、運営からメールだ。
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【第一回イベント終了のお知らせ】
平素より【クライシスオンライン】をお楽しみくださり、誠にありがとうございます。
本メールの一斉配信をもちまして、第一回イベント『萌える若葉のバトル・フェスティバル!!!』のポイント集計を終了いたします。イベントにご参加くださり、誠にありがとうございました。
本イベントは、ゲーム内時間23:59をもって完全終了となります。完全終了後はイベントアバターのインベントリをご使用いただけなくなるため、【ファスティア】内の【大倉庫】にインベントリ内の物品を移動することを推奨します。
また、ポイント集計終了後も完全終了まで【ファスティア】内で後夜祭をお楽しみいただけます。お時間の限りお楽しみください。
【総合結果】
1日目・エキシビジョン
1位:ファスティア騎士団所属【西風】フィア
2位:【正体不明】メル
2日目〜3日目・バトルロワイヤル
1位:無所属【究極院】(人類)
2位:魔物の渦 所属【Random15】(魔物)
3位:匿名希望【匿名希望】(匿名希望)
以下、プレイヤー・エナ様の個人結果となります。
【ポイントリザルト】
プレイヤー・エナ
参加方式・オーディエンス
イベントポイント
観戦ポイント・1225
(内、エキシビジョン優勝予想的中ボーナス700pt, イベントエンジョイボーナス500pt, 応援ポイント25pt)
交換期限までにポイントをカタログ報酬と交換してください。期限切れのポイントは自動的に1pt=10マナゴールドに交換されます。
その他、ゲームやイベントにご意見・ご要望がございましたら、公式ホームページよりお問い合わせください。
【クライシスオンライン】イベント運営チーム
お受け取りください・【3000マナゴールド】
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「よし、報酬を交換して大倉庫に行こう」
私のイベントインベントリには経験値ポーションがある。無くしてたまるか。
「というか、大倉庫ってそもそもなんだ」
公式ヘルプを見る。ふむふむ、外付けのインベントリのようなもので……どこでも中身を取り出せるわけじゃないけれど、内容量は莫大。それから、登録された脳波で開く仕組みだから、イベントアバターとメインアバターで共通して利用できると。期限は無し、そして基本は一人ひとつ。
また、大倉庫は【ファスティア】だけじゃなく世界中のセーフティエリアになってる都市にあって、その中身も共通。【ファスティア】で入れた荷物を別の街でも取り出せるのか。ただし入れられるものは、自分に所有権がある非キャラクターの無生物に限ると。
お使いミッションや護送任務に使って悪さをすることはできないようになってるわけだね。
「つまり、これを経由してイベントアバターの荷物をメインアバターに移せということか」
それから、私みたいにメインインベントリが無いプレイヤーの救済措置でもある。取り敢えず放り込んどけば、いつか人化して取りに行けるはずだから。
「さて、それからカタログは……あー、【属性魔法】系のスキルスクロールは全部交換しておこう」
他には……ポーション、取るだけ無駄なので無し。限定装備、1つずつくらい取っておこうかな。
「と言うか、あまりは全部マナゴールドに交換でいいのか」
特にメチャクチャやばい目玉商品があるわけでもないし、取り敢えずはじっくり吟味するとしよう。それから後夜祭の屋台飯も_
「おい、あれなんだ?」
「え、あれってエキシビジョンのときに居た……」
「待て!何をしている!」
なんだ?騒がしいな。周りを見回すと、誰もがある一点を見上げている。一体何が起きているっていうんだ……え?
「マント……?」
エキシビジョンのあいつだ。素性が全く分からなかったマント。アレが宙に浮いている。宙に浮きながら、凄まじい量の魔素を集めていた。
「何する気だ、あいつ……?」
あれは止めたほうがいいのか、だとか。運営の仕込みなのか、とか。周りにはどよめきが広がるばかり。私にはアレの対処法も分からなければ、そもそもろくに動けもしないけれど、それでもアレを止めないとまずいことになりそうだと感じた。
「クソ、止めるぞ!」
「何やってんだあいつ!?」
一人が屋根に駆け上がって、マントに飛びかかりつかんで引きずり下ろそうとする。が、あっさりと振り払われて屋根に叩きつけられていた。これは、かなり……。
「本格的にまずいな……」
「下がりなさい!」
鋭い一声とともに、白い光が翻る。女騎士だ。たしかフィアとかいったか。彼女がマントに向かって飛び上がり、思いきり斬りつけた。血のような赤いダメージエフェクトが舞って、マントが体勢を崩す。その隙を狙ったかのように、先ほど屋根に叩きつけられていた一人が今度はしっかりとマントを掴んだ。
そのままそいつは一気に地面へ着地して、マントは石畳へ押さえつけられる。
「協力、感謝する。検分するゆえ、しばしそのままでいてくれ」
女騎士の手で、抑えられているマントからマントが剥がされる。明るい金髪が舞ったのが見えた。女騎士が顔をのぞき込む。
「なっ……!?メルクリウス殿下!?」
え。なんか別の意味でまずいやつだったのか?
「メルクリウス……?」
「それってたしか」
「殿下って、王子さまじゃないか!?」
王子さまって。【ファスティア】の?推定メルクリウス王子をのぞき込むと、彼はぐったりと目を閉じていて、四肢はやはりやせ細っている。その細い白腕に、赤黒く痣のように文字が刻みつけられていた。
“Magna Calamitas”と。
Friend Chat:Arma
『大いなる厄災なぁ……』
「なんか情報引っかからない?」
『プレイヤー側には何もないな。それっぽいのも見つかってはない』
「……また用心する要素が増えた」
『ま、しばらくはツル生活と魂生活だろ。あんま気にし過ぎてもな』
「それはそれでなんか」