14.風潮
本日は短いです。すみません。
あ、そろそろプレイヤーのバトロワも煮詰まってきたみたいだ。今まで1ミリも気にしてなかったのがちょっと申し訳ないな。
ごきげんよう。変わらず【高波亭】からお送りしております、エナです。
「エナ的にはどのプレイヤーがアツい?」
「人間勢なら……この“究極院”とか?」
「ああ、人間勢のスコア1位だもんな。というか字面ゴツすぎるだろ」
「ちょっと面白くて選んだ。あと【白い十字架会】とは関係なさそうだし?」
「あ〜。ソロプレイヤーなのか」
今はアルマと一緒に、イベント本戦を観戦中。昨日はあんなに盛り上がったけれど、あれはあくまでエキシビジョンだったから。
基本ルールはバトルロワイヤル。敵を倒したり、邪魔したり……長時間生存しているだけでもポイントが入る。しかしフィールドはランダム生成された自然地形なので、プレイヤーは地形に合わせた戦略を組み立てないといけない。プレイヤーも戦略も、まさしく千差万別だ。
「それから……注目を集めてるのはこの“Random15”?なにこの名前」
「んあ〜……ええと。ランダムでキャラ作成からの、弱かったらリセットを繰り返してる奴か。種族は今んとこわかってる最強魔物種族の【オーガ】だな」
アルマはそう言うと、とあるスレッドを私に見せた。
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【無理ゲー】ランダムキャラ専用掲示板Part21
〜〜
485名無しのランダム
うおおおRandom15最強!Random15最強!
486名無しのランダム
ランダム勢の希望の星よな
あっただのゴブリンですね作り直してきまーす
487名無しのランダム
まじで【オーガ】引くのってどういうリアルラック必要なんだよ……あっゴーストだわ引き直し
488名無しのランダム
これで5回連続スライム クソが
489名無しのランダム
5連スライムは草
490名無しのランダム
もうお前の魂がスライムだよ
491名無しのランダム
Random15〜!ランダム勢に希望を見せてくれ!運さえあればなんとかなる!!
492名無しのランダム
ランダムで人類側引くことあんま無いのって仕様?
493名無しのランダム
人類は魔物に比べて種類少ないから実質仕様
つまり15ニキは魔物勢の希望でもある……!?
494名無しのランダム
まあファスティア周辺はエセ騎士ギルドがのさばってるからな ここいらで叩き潰して俺たちを証明して欲しい
495名無しのランダム
俺たちをwww証明wwwwRandom15の運が良いだけだろwwwwww
そのRandom15だってキャラ作り直しまくってるだけのくせにwwwwwww
496名無しのランダム
でも実際ランダムで雑魚種族引いて続けてるやついないだろ
どんなクソマゾだよ
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「ここに居るが!?!?」
「待てこら書き込みはやめろ!俺のアカウントだぞ!」
「……ぐう。効率至上主義な時間の奴隷どもめ」
「急に思想が強い」
くそっ……でも(下方向に)レアな種族の可能性がある身分で「影になりました〜まだ続けてます〜」なんて身バレ必至の書き込み出来るわけないか。そもそも信じてもらえない可能性すらあるな。人類でも魔物でもないとか。
ただ見知らぬ相手にマゾ呼ばわりは気分がいいものじゃない。キレそうになったぞ。もう気にしてないけど。
「落ち着いたか?」
「ああ。取り乱してごめん」
「じゃあ話を戻すぞ。とまあこんな感じで、Random15はランダムエディットプレイヤーの最前線って扱いを受けてる。おかげで『強い種族に当たるまで引き直し』っていうのがランダムエディットにおける今のメジャーになってる感じだ」
ああ、初回無料ガチャみたいなもんで、引き直しまくればどっかで強いシナジー持った構成とか、シンプルにスペック高い種族が使えるようになるってねらいかな。……それって良いのか?
「なんか、運営の想定と違う気がする……」
「ランダムキャラの作り直し自由なシステムって、結局まともに遊べない組み合わせだった時の救済策のつもりだっただろうしな。それを無限ガチャに転用するのはちょっと」
「……でも、それが常識だっていうようにプレイヤー間では通ってるのか」
じゃあ結局、最初に会ったあの女性にドン引きされたのは……ランダムで出した種族が装備品の一つも身に付けられない異形であったにもかかわらず、そんなハズレを使い続けてたからってこと?わかるかそんな複雑な事情。
「ま、俺らにはあんま関係ないだろ。どうせ作り直しの予定もないし」
「……これだけドン底のスタートなら、さぞ最終地点は高いだろうという意志も込めてやってるからね」
「確かに。それはそれとして、無限作り直しグリッチは近いうちに修正されるんじゃないのか」
「批判も噴出しそうだけど……致し方ないと言えばそうだろう」
なんとなくやるせないと言うか、どことなくざらつきを覚えるというか。
言いようのない不快感が胃から立ち上ってくるものだから、慌ててぬるいエールでそれを流し込んだのだった。