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13.騎士崩れ

 【白い十字架会】……ホワイトクロス……リアル朝からやな話だな。あ、リアルもそろそろ昼か。時間加速中だから時間感覚がバグるんだよな。参戦組はログインしっぱだから良いけど、途切れ途切れにログインする観戦勢だから、特にね。


 おっと、イベント中の時間加速に翻弄されながら失礼。ごきげんよう、毎度おなじみ人類体のエナです。


「もぐもぐ……はふ……つまり、そのプレイヤーギルドが治安維持……まあ、この辺を取り仕切ってるわけか……はふはふ……おいひい」

「うん、エナ。取り敢えず返事は無理しないで大丈夫だからな」


 ごめん。あつあつシーフードグラタンは静かに食べよう。


「一応、この【ファスティア】には殆どのダメージが無効化される結界が張られてる。セーフティエリアってやつだな。それから、その例のギルドも目的は“治安維持”だから、街中で最悪の強硬手段に出るようなことはまだ無いみたいだ」

「もぐもぐ……ごくん。なるほど、うん。……うん?“最悪の”強硬手段……セーフティエリアでのキルはまだやってないってことは、それ以外はやったってこと?」


 だとしたら相当最悪じゃない?


「それなんだよなぁ〜……不意打ちで【鑑定】して魔物種族プレイヤーの名前を記録してるとか、“住人”が経営してる店に押し入って利用客のプライバシーを聞き出そうとするとか、調べると色々出てくる」

「想定以上に最悪だったな。ぎりぎりネット犯罪じゃないのか、それ」

「一応言っとくと、俺も全部は把握してないし、大半はネットに転がってるスレから拾ってるから裏が取れてる情報ってわけでもないんだが」


 そう言うと、アルマは私にウィンドウを開示してくれる。あ〜……なんか……思ったよりヘイト稼いでるんだなあ、こいつら。特に魔物種族プレイヤー用の掲示板でよく名前がでてくる。ふんふん、初心者魔物プレイヤーは要注意、ねえ。


「……そもそもなんで?魔物って言ってもプレイヤーなのに、そんなに害意剥き出しで接するってちょっとリテラシー無さすぎじゃないのか」

「んー。魔物がプレイアブルじゃないVRゲームの出身とかなのか?だとしても、郷に入っては郷に従え、それが出来なきゃどっか行け、が鉄則だけどな」

「そのうち魔物種族の掲示板を荒らすメンバーとか現れそうでやだな……」

「うわあ嫌すぎる。ところでグラタン冷めないのか?」


 あ。食べます。あ〜、外側はかなりぬるく……ヴッ。中はまだあつあつでしたね……。慌てずゆっくり、味わって食べよう。私こんなに猫舌だったか?まさか【全属性耐性脆弱】がスキルの制限を貫通してるとか言わないよな、マジで。


 もぐもぐ、とイカにやや苦戦しつつシーフードグラタンと格闘していると、にわかにホールのエリアが騒がしくなってきた。何だ?


「んむ?どうし……」

「シッ。ありゃ【白い十字架会】だ。さっきの今でかよ」

「ごくん……口を塞がなくても、プライベート設定はオンだけど」

「へ?ごめん。でも正面から顔を出すのはやめとこうぜ、目をつけられたら困る」


 というわけで。普通に奥で食事をしているという体でちらりとホール側を覗く。あ〜、なんか宗教騎士団みたいな格好した集団がいる。絡まれてるのは……イチカとおかみさんか。


 耳を澄ます。


「このような店を経営するのであれば、魔物には警戒していただきたい。魔物どもは不遜にも人の姿を騙り貴女方を喰らおうとするのですから」


 あ、ムカつく。自分が正義だと思い込んでるタイプだな。かなりムカつく。ずいぶん失敬な物言いをしてくれやがる、あの騎士モドキども。


 まあ私、魔物ですらないけど。


「警戒。警戒ねえ。じゃあどうすりゃいいってんだ、バカ正直に『お客さんは魔物ですか』って聞きゃあ良いのか?」

「そんなもの、【鑑定】すれば良いでしょう」

「そんなことしたら、魔物どころか人間のお客さんもみんな寄り付かなくなっちゃいますよ!なんにも後ろ暗いところが無くたって、疑われて探られるのは誰だって嫌じゃないですか!」

「では、魔物に食い物にされても構わないというのでしょうか!?」

「そ、それは……」

「ふん。そんな目に遭う前に騎士様が助けてくれるさ。ちゃあんと、【ファスティア】の騎士様がね!」


 わーお、痛快。ファスティア騎士団は正規の警察組織だけど、向こうはただの自警団だもんな。これで本当にただ真面目に治安維持に努めてたら、叙勲だってされるんだろうが。


「では、我々は【高波亭】を保護対象から外させていただきます」

「うぇっ……そ、そんなのこっちから願い下げです!」

「保護ぉ?アンタらがアタシたちの何を守ってくれるってんだい。飯もエールも注文せずに入り口で物々しく大騒ぎして、アタシたちの生活だって守ってくれないってのにさ!」


 うーん。押せ押せだな、おかみさん。イチカもまあまあ芯のある子みたいだし、余計な心配だったかも。


「言うことがないなら帰んな、騎士崩れさん方!」

「な、騎士崩れ……!?魔物によって首を絞められるのは貴女方なんだぞ!」

「言ってりゃいいさ!うちは【高波亭】!金を出すなら飯を出す、金を出すなら酒を出す!そんだけの店だよ!」

「お金を出してくれるなら、魔物の方もお客さんです!お、お金を出さない貴方がたは、お客さんじゃありません!」

「……ちっ!精々覚悟しておくことだ」

「ふん。それが騎士様の捨てゼリフかい?」


 とうとう騎士崩れ達は何も言い返せずに帰っていった。いやースッキリ。


「……保護から外すって。脅迫とか、騎士のやることかよ」

「そもそもあいつら、話すだけ話しに来て結局びた一文も出してないけど」

「ア〜……立ち向かったおかみさんと弟子ちゃんを讃えて、エールでも頼むか。エナは?」

「まだじゅうきゅ……今年20になったから良いのか」

「……しれっと年齢出したな!?」

「俺は今年で23」

「新卒社会人なのに朝からゲーム……?妙だな」

「……不労所得」

「何ッ」

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