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新作VRMMOでキャラクターランダム生成したら初期種族:影になった件  作者: 緑茶
二章【乾坤へ至るもの】

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121/122

121.にくにくしいもの

第三者視点続き。武州調査組。

 武州の地下深くで、細い洞窟を進むいくつかの影があった。


『防衛陣営の時のことを思い出す地下の深さですね。しかし以前よりもはるかに深いですよ』

「うわ〜、これが龍脈か……。魔素が濃すぎてちょっとクラッとくるね〜」

「ミャー的にはまだ全くそんな感じは無いみゃあ」

「ふむ。エナ殿やアルマ殿が言うには、臓腑がつぶれるような感覚なのだと。となると、やはり龍脈が非常に痩せ細っているということであろうな」

「……地上のアインさん達は大丈夫でしょうか……。ここは酷い土です。種が植わった傍から枯れていくようだ」


 アインとセキを除いた、情報ギルド【カドゥケウス】の幹部たち。カルクスも珍しく杖の姿で、少佐に抱えられながら武州の地下洞窟を探っていた。


 地上では阮明が、アインとセキを含む四安政府の調査部隊を引き連れて、捜査を名目にしたやりとりをしている。ただしその調査部隊の構成員は全てカドゥケウスのメンバーだ。


 阮明も口八丁手八丁で良くやったものだ。上層部には自分に部隊の編成を任せてほしいと頼み込み、これまでの信用貯金を切り崩して権限を得て。四安常駐の部隊には、選抜したカドゥケウスのメンバーを『官僚が推挙する』という形で、あくまで一時的に、ついでにカドゥケウスの持つ潤沢な資金を握らせて名前だけ名簿に載せさせた。


 そんな事までやって阮明は大丈夫なのか?と思うかもしれないが、科挙を突破し誠実に働いているエリートの言葉というのはそれだけ重いということである。


 阮明は呟いた。『腹に穴が空きそうです』と。カルクスは笑った。『もう沢山空いてるじゃないですか』と。哀れ阮明、お前が大百足であったばかりに。セキとアインは阮明を労ろうと決めた。


 そんなわけで、武州は現在、カドゥケウスに地下を思い切り探られている真っ最中なのである。


『マリーナ、ニュート、少佐。なにか異常はありませんか』

「ありますあります。異常しかないんじゃないかな〜」

「はい。すごく、嫌な感じがすると言うか」

「本官の探知にも、僅かに何かが引っかかっているようではあるな」

「んむ〜。ミャーもそろそろ探知スキルを育てるべきかみゃあ?」

『……ふむ……』


 一度立ち止まった一行。カルクスは杖の明滅を抑え静かに考え込み、他の面々はそれぞれが周囲を警戒していた。


「ミャー的にはむしろ、不気味なくらい静かなのが嫌な感じだみゃあ」

「……確かにね〜。幾ら武州の地下だって言っても、普通にスキルが使えるんだからセーフティエリアを出てるわけだし」

「全然、魔物も動物も……地下に住まうような、小さな虫やミミズも居ません。植物の気配すらない」

「やはり、何かがいる……ということで間違いないのだろうな。リーダー、大丈夫か」

『すみません。少しじっとしていてくださいね……【神秘の守り(ミスティックベール)】。よし』


 カルクスは全員にバフをかける。不気味なまでに静かな洞窟に、不釣り合いな光の波が発生した。それは全員を飲み込み、スキル名の通りベールになって彼らを守る。


「これは……即死攻撃対策か」

『皆さんの話を聞く限りでは、そういう攻撃をしてきてもおかしくは無いと思いまして』

「こんなスキルがあったんですね……僕たちは即死攻撃に脆弱なところがありますから、助かりました」

「確かに〜。即死判定のある攻撃以外だったら装備効果で1回までは耐えられるし、1回耐えたらリーダーが回復してくれるもんね〜」

「そんじゃ、そろそろミャーが先頭になるべきかみゃあ?マリーナが初見殺しでやられるのは困るみゃあ」

『そうですね。ここからは先鋒をよろしくお願いします』

「任されたみゃあ!」


 カドゥケウスの面々は慎重に、しかし迷いなく突き進んでいく。元々一本道の洞窟で、おそらくは隠してあるもののためだけに存在する道なのであろうが、それでも光のない地下深くだ。彼らはそれを恐れることなく進んでいく。正しく経験のなせる技だろう。


 深く深く。地中へ潜っていく。潜っていくほどに、背筋を這い刺してくるような不快な空気が重く増していく。澱みが溢れて滞留する。


 足が重くなるような感覚に抗いながら、危機感知能力を鈍らせるような嫌悪感を振り払いながら、進む。進んでいく。


 進んだずっとその先に、人一人分が通るような小さな穴があいていた。


「みゃ!?……どう見てもイベ部屋だみゃあ」

「嫌な感じがします」

「どうしたもんかな〜」

「進むしか無かろう。リーダー」

『ええ。皆さんお気をつけて。失いたくないものは持ち出さないように伝えてありましたが、大丈夫ですか』


 カルクスの言葉に全員が頷く。それを皮切りに、全員が穴の向こうへと突き進んでいった。


 穴の向こうは巨大なドームであった。防衛陣営の本陣よりもさらに広いはずだが、しかしなぜかひどく狭くなっていた。


「な……」

「きもち、わるい、です……」

「だいじょうぶ〜?……って言ってるあたしが大丈夫じゃないね」

「ミャーがギリ大丈夫だみゃあ。リーダー?」

『……何かされる前に自害して戻りましょう。これが起きた場合、逃げ切れる可能性は低い』


 その狭さの理由は、空間に横たわる巨大なそれと、それに絡みつく大量の金属で出来た何本もの管。


 瘴気を放ち、腐りかけながら生きている、何ともつかぬ獣の肉だった。

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― 新着の感想 ―
>>にくにくしいもの 610じゃん。
シュブ=ニグラスかな? ヨグ=ソトースが現れそうな気もする…
んーむ。(´-ω-`)ぬっぺふぽふ? 無限肉。…あっ、窓に窓に(ry
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