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117.お土産

「とは言え、エナ殿に準備らしい準備をしてもらうようなことはないのだが」

「なるほど?」

『歳王相手に大したお土産をご用意できるわけでもありませんしね』

「じゃあ私がやるのは本当に調査と確認……」


 じゃあむしろ、何か私の方に面白いお土産でもあるかな……山ほどあるわ。


 と言うか、あの地下に収められていた大量の李丹心のものと思わしき日記も全部こっちに渡しておこうかな。カドゥケウスのことだし図書館とかあるんじゃないの。


 それから薬の材料とかも渡しちゃおう。なんか面白い分析とかしてもらえるかも。それから_


「……あ。そうだ、代金は出すからお菓子を包んでもらえる?」

「え〜?歳王ってお菓子好きなの〜?」

「いや。山に置いてきた眷属へのお土産」

『え?エナさんちょっと詳しく?』


 ……また色々喋らされた。まあでも、偽の永遠の命を飲んだ時に起きたことを詳しく喋って、瑾瑜をちょっと変な経緯で眷属にしたことを喋っただけだからセーフセーフ。玉帛?……眷属にした経緯を上手いこと説明できる気がしないのでいないことにしよう。


『……なんたる……3000回以上の死とは……』

「リーダー。使いに出していた者が帰ってきたようだが」

『ああ、ありがとうございます。エナさん、この箱が【ファスティア】の菓子と茶葉です。茶器もお貸ししましょうか?』

「お願いしても?」

「承知した。しばし待っていてくれ」


 箱を受け取って、ややぬるくなったティーカップに口をつける。紅茶だから、冷めるとどうしても渋い。


 しかし、なんか口が疲れた気がする……。杖の姿であるはずのカルクスさんすらも、心なしかげっそりしている。ゴーレム姿の時も思ったけど、無機物の割に感情表現豊かだな。


「あれ?そう言えば前のイベントのときはゴーレムでしたよね」

『アレは実働する時の遠隔操作ボディです。本体でなくても参加可能か、それからイベントに参加しつつ通常エリアで動くのが可能かという検証も兼ねておりまして』

「なるほど」


 後者の検証についてはアルマも実証してましたね。言わないけど。アルマは涼しい顔でお茶を注いでいた。ポーカーフェイスが上手くなりやがって。


「エナ殿、準備が済んだ。それから、これは【マジックバッグ】。容量は通常のインベントリ3個分。何か持ち帰るものの中で、カドゥケウスに任せたいものがあったときに使ってくれ」


 そう言うと、さらに一つ箱と、肩掛けカバンが渡された。受け取ってインベントリに入れる。


「ありがとう。それじゃ、一足先に失礼させてもらうね」


 ステータスウィンドウから、【穢れた咎の領域】を選択し、転移した。


――――――――――――


「いやーただいまただいま」

『きゃーッ!?!?!?……アンタじゃない。久しぶりね』

「取り繕えてないよ、瑾瑜」


 ぽん、とボスエリアに転移する。何も変わらぬボロ屋敷がそこに……そこに……あれ……?


「すごい綺麗になってるね?」

『そこいらの【餓鬼】を【支配】しまして、掃除や建て直しを行わせました。罠や隠し部屋の設置も可能になりましたね。それ以上は手を付けず、でてきた物は位置を変えておりませんので』

「なるほどありがとう。地下は?」

『地下?ああ、二階の角部屋から入れるあそこでしょ?餓鬼どもには入れても上がってこれやしないでしょうから、ほっといてるわ』

「ありがとう!あそこにちょっと用事があるんだ、行ってくる。あ、瑾瑜。これお土産だよ。食べてて」

『我が君?私へのお土産は?それからブルーム殿は?』

「実体も無い玉帛に何あげればいいのさ。ブルームはリアル……異界の方で用事」


 ああそんな、と言う玉帛の声を尻目に地下へ降りていった。


 地下は相変わらず嫌にひんやりとしていて、シンプルに空気が悪い。地下にある薬棚の中身を片っ端からマジックバッグへ入れ……待てよ。


「薬棚ごと入れられたりするか……?」


 入れるぞ、という意思を込め、薬棚の角にぽすっとマジックバッグをかぶせる。ぬるんと入っていった。


「入った!!!!こっっわ!!!!」


 じゃああの、龍脈に繋がって魔素を吸い上げる装置(龍脈に繋がってない)も!?入った!炉は?鍋は?その他器具は?全部入った。


「……有り難いのか怖いのか……まあ全部カドゥケウスに分析をお願いするし、ちょうどいいかな……」


 でも向こうはなんのつもりでこんなの渡してきたんだろうか。大は小を兼ねる思想?それとも私が確実に面倒事を持ち込むと思われてた?


 ……前者であることを祈りつつ、ボスエリアへ戻ってきた。


『早かったわね』

「早く済んだからね。美味しい?」

『……柔らかくて不思議な感覚。死んだ味覚でもほんのり甘いのは分かるわ』

『うう……玉帛は匂いしか分かりませぬ』

「お茶淹れようか。匂いだけでも楽しめると思うよ」


 英字のラベルが入った缶。ファスティアのお茶ってことは、中国茶じゃなくてカドゥケウスで出されたみたいな紅茶ってことだよね。茶器を借りてきておいてよかった。


 一息ついたところで、質問を投げかける。


「……ねえ、この辺りの龍脈のことってわかる?」 

『ん〜……』

『私どもの感知能力では異常はあまりないように感じられますが……そう、龍脈!そのことで棹君(トウクン)なる方が此方に訪れられまして。『龍脈について伝えたいことがある故、貴女の洞天にて待つ』と言付かっております』

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