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104.龍生九子・イン・ザ・スカイ

あなたは(龍生)九子♪きらきら(龍生)九子♪

というわけで復活のエナ視点です。

『リスポーンします』


 ふ、と意識が浮上する。


「……あ、拠点の地下だ」


 まだリスポーン地点が防衛側拠点にあるということは、防衛側はまだ負けていないということ。


 つまり……多分、寄生樹作戦が成功した。


「〜〜っやったあ……!」


 自分こそ作戦のために死んだが、一仕事やり終えたような清々しい気分だ。


 と言うか、本当に清々しい。寄生樹と共生関係になったことで掛けられた大量のデバフ……全身が鉛よりも重くなり全身の血液がハチミツになったんじゃないかとすら思ってしまうあの地獄から解放されたからかもしれない。


 ふう、と一息ついて、適当な枝をなぞる。すると、私の背後から樹皮が割れるようなペキペキという音がした。


「お、復活おめでとう〜」

「いえーい。あ〜……なんて清々しいんだろう」

「地上に出るか?」

「うん。シャバの空気を吸っておく」

「……そんなキャラだったっけ……」


 まあ確かに、今の私は死に戻ってきた割にテンションが高い。と言うか、胞子のデバフがフルリセットされたおかげでむしろ身体が軽いので、なんなら死に戻り万歳という感じだ。


「……一応いっぺん死んだから、普段より弱体化してるんだよな……?」


――――――――――――


 地上に戻ると、外はすでに夕暮れが近づいていた。わお、結構ギリギリの復活だった?


 そして拠点の中心に、それはそれは大きく、なんとも禍々しい大木がそびえ立っていた。どのくらい禍々しいかって言うと、なんというか……名状し難く、根源的な不安がこみ上げてくるような……やめとこう。これ以上はアイデアロール成功からのSANチェックだ。


「おお……」

「壮観だろ?アレがエナの功績です」

「やったね!……いや、九割九分九厘は君の胞子の力でしょう」

「まあまあ。エナがたっぷり時間かけてくれたおかげでびくともしねえ木に育ったからな」


 ニコニコと笑うアルマ。彼が見ているその大木の足元では、阿鼻叫喚も生易しいと言える地獄が繰り広げられていた。


「……あの、寄生樹の足元のちっちゃい木は?」

「ん?ああ、寄生樹は定期的に低確率で胞子を爆発的に飛ばすんだが、それが運良く一回発生してな。そしたら近くのプレイヤーはそれを大量に吸い込むだろ。数人の頭がパーンと弾けて」

「もういいや」


 やめてくれ。


「ん〜……私もちょっと、ちょっかいかけるかなあ」

「え?復活したてだろ、大丈夫なのか?」

「平気平気。あとはまあ、もうちょっと貢献度ポイント稼いでおきたくもあるし。貯まってるのか知らないけれど」


 まだ太陽が沈むまでしばらくあるから、なかなか使うタイミングが無かった【陽魔法】の試運転でも行こうか。


「【陽光操作】」


 赤い夕焼けの光が収束する。……ちょっと待って、これだけでだいぶ強くない?影魔法の時の【影操作】とはえらい違いだ。ええ〜……。


 ああでもなるほど。これすごく扱いが難しいな。ちょっと遮るものがあるともう使えないし、光を曲げて隙間を通すなんてこともできないわけだから。


 ん〜……光を遮らずに地上の何処にでも攻撃を届けられる場所と言えば……。


「空か」

「うわあまたツッコミ辛え技を……ん?どうしたエナ」

「ちょっとごめん、飛んでみる」

「は?」


 状態スキル【龍生九子】の一つ、【偽龍翼】……龍に翼って無くない?あれなのかな、龍生九子には鳥に似た姿の子が居るからってことかな。


 ……それで良いのか?いいか。


「よっ【偽龍翼】」

「えっ……うわ!?」


 袖ごと腕が鳥の羽になった。やっぱり龍じゃないじゃん!!……「偽龍」だからそれはいいのか。そんで、横のアルマがうんざりしたような目を向けてくるのはもう無視!


「あ。そうだアルマ」

「……もう突っ込まねえからな。何だ?」

「腕が鳥の人っていたりする?」

「……まあ、そんくらいの獣人も珍しくはないが」

「じゃあごまかしが効くな。行ってくる」

「おーい!?」


 ぐっと腕に力を入れて羽を広げ、【風魔法】でも補助しつつ空へ飛んでいく。あっ……結構これコツがいる。あと腕がわりと辛い。


 笠の効果で、侵攻側はまだこちらに気がついていないらしい。多分、寄生樹にかかりきりで周りを見切れて居ないのもあるんだろうな。


 隙だらけなのはこちらとしても好都合だ。それじゃあとりあえず、まずは一撃。


「【陽光操作】」


 何も遮るものはない、沈みかけた太陽の真っ赤な光を収束し、地上に向けて一気に放つ。ぐるりと回してすりつぶすように。


 ……そして生き残りが私に気がつく。当たり前だな。口々にわあわあ騒ぎながら私に向かって矢を射ってきたり魔法を撃ってきたりしているが、まるで届いていない。そして私にかかりきりだと……。


 ボン、と結構な音がした。下を見ると、緑色の濃霧のようなものが広がっている。


 ……これが噂の胞子爆発かあ。ヤバ。


 上空にいるおかげで全く影響を受けていないため、具体的に何がどうヤバそうだとは言えないが。でも寄生樹と共生してた時のデバフのかかり方ヤバかったからなあ、あんな感じなのかな。物理的に死活問題だったな。


 下がもう……もうなんか、名状しがたき滅茶苦茶さになっているところに追い討ちをかけて申し訳無さは正直ちょっとあるが、もうすぐ日没で陽光が勿体無いのでもう一度【陽光操作】で焼き払っておく。


 ……あーあ、最終日の最終局面なのにグダグダだなあ。


 完全に日が沈んだところで空から降りれば、もうあとは終了を待つだけだ。もう数時間もない状況で、寄生樹からコアを取り出して侵攻陣営に持ち帰るなんて芸当は、さすがに……ね。


「……キャンプファイヤーでもやる?」

「マシュマロ焼こうぜ」

「あるの?」

「無い。雰囲気だけ」


 ……無いのか……。


『イベント終了』

『勝利陣営:防衛』

『待機エリアへ転移します』

『防衛達成おめでとうございます!』


「あ」

「あ」


 終わった。

オマケ・究極院の最期を見届けた防衛側のみんなの反応

エナ「(死んでいたため運良く見逃す)」

少佐「(地下にいたため運良く見逃す)」

アルマ「……だから使いたくなかったんだよなあ」

カルクス「……あれの主人だと思われるのは、ちょっと、なんと言いますか……誤解を招きそうで……」

十三「アルマの奴、ほんまにわしに何もしとらんじゃろうな」

ブルーム「うううええエナさんあんなのに取り付かれてたんですかあばばばきもちわるい……ゴーレムなのにきもちわるい……」

かぬっち「壮絶」

アラーニェ「あらあらぁ〜……かわいそうにねぇ〜……」

阮明「もしかして小生も寄生虫を使えばもっと」


阮明はこのあと「本当にやめろ」と総ツッコミを食らう

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― 新着の感想 ―
寄生〇〇 のブーム来るかな?w
口の端から寄生虫がワラワラと這い出てくる姿想像するだけで悪寒が…
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