退屈が嫌いな女神からの課題
目を覚ますと、知らない場所にいた。
目の前には、翼の生えた女性とその周りで楽器を奏でる複数の天使...。
最初は夢と疑ったけど、意識はハッキリしていたから、夢ではないのだろう。
「天界へようこそお越し下さいました。貴方は野帆瀬有栖さんですね。」
女性は、ここを天界と言った。
「あの〜私は死んだんですか?」
「飲み込みが早くて助かります。私は、亡くなった者の魂を成仏させ、正しき場所へ導く女神です。」
現実では有り得ないけど、夢でもない...私が死んだのは間違いないのだろう。
「なんか...予想通りの女神様って感じなんですね。」
「それは、貴方の持つイメージが、この姿に反映されているだけです。私の姿は見る者によって異なるので、実際はこんなしょぼい見た目はしていません。」
「それは失礼しました...」
女神にもプライドがあるらしい。
「それで、貴方の未練は何ですか?」
「いや、未練はないので、早速成仏させて頂きたいんですけど。」
「えっ?成仏したいのですか?」
女神は驚いた表情でこちらを見つめた。
「何かおかしな事でも言いましたか?成仏するのが普通ですよね?」
「...いえ、貴方は稀な方ですね。普通は駄々を捏ねて成仏したがらない魂や未練ありまくりの魂が殆どですよ。」
病院の清掃係として働いてた時に「やり残した事はない」と言って死んじゃったお爺さんがいて、当時はカッコいいな〜って思って聞いてたけど、そう言う人も天界では駄々を捏ねていたのだろうか?
嫌な事を聞いた気がする...
「とは言え...潔く成仏してしまうのも、それはそれで虚しく見えて同情してしまいますね...」
「それ本当に同情してくれてます...?」
女神は憐れむ表情を見せた後、爽やかな笑顔でこちらを見つめた。
「切り替え早くないですか...?(汗)」
女神は私をまじまじと見つめ、好奇心旺盛な子供のように目を輝かせた。
「輪廻転生に興味はありますか?」
この女神は、突然何を言い出すのだろうか...。
「えっ...勧誘ですか?」
「単なる質問です。」
「興味も何も...考えた事がなかったです。」
そう答えると、女神は不思議そうに首を傾げた。
「死後を考えた事がないなんて珍しいですね。」
「そんな暇がなかっただけです。」
「暇がないなんて、贅沢な理由なのですね。」
女神は、羨ましそうに私をじっと見つめた。
「実は私、凄く暇なんです。天界は広いのですが、私の仕事は死者の話を聞いて成仏させるだけなので...退屈が嫌いな私にとっては、ここは窮屈で地獄のような場所なのです。」
「そうですか?とても責任重大な素晴らしいお仕事だと思いますけど...」
責任重大な仕事を暇だと言える女神は、一体何者なのだろうか?
「そこで提案です。」
提案と言われただけで嫌な予感しかしないのは、この女神の薄気味悪い笑みが原因だろう。
「私が課す課題を解決して貰う代わりに、記憶を保持したまま生まれ変わるのは如何でしょうか?」
女神がとんでもない提案をして来た。
「実は、生まれ変わる時に前世の記憶がないのは、世界の均衡が崩れないように、掟として定められているからなのです。」
「そうなんですね。ルールって碌な事ないけど、それに関しては私も賛成です。」
前世の記憶なんて、残れば辛いだけだ。
「そう仰る割には、未練がましい表情をされるのですね。」
「未練?あんな碌でもない人生に未練なんてある訳...」
いや、一つだけあるかも知れない。これを未練と呼ぶに足り得るかは分からないけど、少し気掛かりではある。
「そんな貴方に課す課題は、前世の未練を見つけ、解消せよ。です!」
女神の課す課題が、こんな謎解きゲームのような課題の出し方で良いのだろうか?
「いやいや(汗)勝手に話を進めないで下さい。もう未練そのままで良いので休ませて下さい。」
「前世の記憶を持つ子供なんて、考えただけで面白そうですよね。チート過ぎません?(笑)」
女神は、私の頼みをフル無視すると、一人で言って一人でツボっていた。
「最後に忠告ですが、他の人に記憶の事は決して言わないで下さい。勿論、私の存在も。」
「言っても信じないと思いますよ。」
前世の記憶があるなんて言えば、逆に私がおかしな人に思われてしまう。
「それでは、課題を進めつつ、来世も楽しんで下さいね。」
「はぁ〜死んだ時くらい、ゆっくりさせて下さいよ...」
こうして私は、女神に流されるまま、休む事なく生まれ変わる事になってしまった。
小説は今回が初挑戦です...
初めましてのど素人なので、温かい目で見守って頂けると幸いです。
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